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 第252話 優先順位

 全部を一度にやることはできない。


 だから、順番を決める。


 ――順番を決めることは、何を後回しにするかを、自分の責任で、選ぶことだ。

 評議会が、招集された。


 議題は、領地の優先課題を、整理することだった。


「今、抱えている課題を、並べます」


 ヒコが、評議会全体に、向けて言った。


「南方廃址の調査。あの石への本格対応。貴族との関係。それと、住居の拡張」


 評議会の面々が、それぞれ、頷いた。


──────────────────────────────────────


「まず、南方廃址について」


 ヒコが、口を開いた。


「地図の欠損。サヤさんの異変。気になることは、多いです」


「行くべきだと、思います」


 リアが、すぐに、言った。


「ただし、今、王都への対応で、人手が、足りません」


「分かっています」


 ヒコが、答えた。


「ですが、調査隊を組むなら、アーヴィンさんか、ミルヴァさんが、必要になります」


「その二人は、今、外せない」


 ドガンが、口を挟んだ。


「ヴァルクの動き。ハイムの沈黙。どちらも、目を離せない」


──────────────────────────────────────


「次に、あの石のことです」


 ヒコが、続けた。


 ガデルが、わずかに、表情を、硬くした。


「鉱石を守る要塞と、領地を守る要塞は、違う。前に、そう言いましたね」


 ヒコが、ガデルを見た。


「今の星形要塞は、領地を守るためのものです。あの石を守る、専用の備えは、まだ、ありません」


「すぐに、必要か」


 ガデルが、聞いた。


「いえ」


 ヒコが、答えた。


「位置を知っているのは、限られた人間だけです。今は、急ぎません」


「急がないなら、後回しでいい」


 ガデルが、言った。


「ただし、忘れるな」


「忘れません」


──────────────────────────────────────


「貴族との関係は」


 ガッツが、聞いた。


「これは、今、一番、動きが多い課題です」


 ヒコが、答えた。


「ヴァルク男爵への対応。ハイム子爵の観察。好意的な貴族との関係深化。どれも、止められません」


「人手が、足りないと言ったが」


 ガッツが、続けた。


「貴族対応にも、人手が、要るんじゃないか」


「ええ」


 ヒコが、頷いた。


「ドガンさん、ゴルフさん、セリウスさんで、回しています。これ以上、人を割くのは、難しいです」


──────────────────────────────────────


「住居のことは」


 アーヴィンが、ふと、口を開いた。


「兵舎の話、覚えているか」


「ええ」


 ヒコが、頷いた。


「人員が増えれば、兵舎や職員寮も、いずれ、足りなくなります」


「優先度は」


「今すぐではありません」


 ヒコが、答えた。


「ただし、後回しにし続ければ、いつか、急ぎで対応する羽目になります」


「だから」


 ヒコが、続けた。


「ガッツさんには、見積もりだけ、進めてもらいます。着工は、もう少し、状況が落ち着いてからです」


「分かった」


 ガッツが、頷いた。


──────────────────────────────────────


「整理します」


 ヒコが、評議会全体に、言った。


「一番、優先するのは、貴族との関係。今、最も、動きが速い課題です」


「次は」


「住居の見積もり。すぐに着工はしませんが、準備だけ、進めます」


「南方廃址と、あの石は」


 ガッツが、聞いた。


「両方、今は、後回しにします」


 ヒコが、答えた。


「ただし、忘れません。記録として、しっかり、残します」


──────────────────────────────────────


 サヤが、評議会の終わり頃、ふと、口を開いた。


「ヒコさん」


「何ですか」


「自分の異変のことですが」


 サヤが、続けた。


「原因は、まだ、分かりません。ただ、放置していいものではないと思います」


「分かっています」


 ヒコが、答えた。


「サヤさんが、無理に、調べる必要はありません。ただし、何か、変化があったら、すぐに、教えてください」


「分かりました」


 サヤが、頷いた。


──────────────────────────────────────


「今は」


 ヒコが、評議会全体を、見渡した。


「領地の足元を、固めることが、一番です」


 誰も、反対しなかった。


 優先順位は、決まった。


 ただし、後回しにした課題が、消えたわけではなかった。


──────────────────────────────────────


 夜、ヒコは一人、施設の前に立った。


 《可視化》で、領地全体を、確認した。


 星形要塞、外堀、稜堡。


 全部の色が、落ち着いていた。


 ただし、その落ち着きの中に、いくつもの、後回しにした課題の色が、静かに、沈んでいた。


 南方廃址の、淡い影。


 あの石の、深く沈んだ色。


 住居の、まだ形になっていない、薄い色。


 すべてが、消えたわけではなく、ただ、順番を、待っていた。


──────────────────────────────────────


 その夜、ヒコは記録をつけた。


 評議会、優先課題の整理。優先:貴族対応。準備のみ:住居拡張。後回し:南方廃址・あの石への対応。


 サヤの異変、引き続き記録。本人の判断を尊重。


 ペンを置いた。


 全部を、同時にやることはできなかった。


 領主とは、すべてを選べる者ではない。


 限られた中で、何を先に守るかを、決める者だった。



 第252話 優先順位 了

【次回予告】雷鳴月が来た。


──────────────────────────────────────


【領地収支・第252話時点】


・所持金:金貨1483枚(変動なし)


【発展進捗・第252話時点】


・防衛:122%(変動なし)

・食料:101%(変動なし)

・水 :100%(変動なし)

・住居:85%(変動なし・見積もり準備のみ開始)

・インフラ:102%(変動なし)

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