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 第182話 冒険者ギルド、開く

 扉が開くと、中に入れる人間が増える。


 人間が増えると、仕組みが必要になる。


 ――仕組みが先にあれば、扉を開いても崩れない。

 陽炎月、下旬。


 朝、冒険者ギルドの建物が完成した。


 ガッツが最後の確認を終えた。


「問題ない」


 短い報告だった。


 それで十分だった。


 セリウスが建物の前に立った。


 入口を見た。


 正面には掲示板があった。


 依頼票を貼る場所だった。


「開けます」


 セリウスが扉を開いた。


 最初の一枚の依頼票を掲示板に貼った。


 内容は、東の森の魔物調査だった。


 依頼は一枚しかない。


 それでも十分だった。


 フォルテス領の冒険者ギルドが、動き始めた。


──────────────────────────────────────


 午前中、外部の冒険者が三名やって来た。


 ランデルから来たという。


「ギルドができたと聞いた」


「はい。今日から開設しています」


 セリウスが対応した。


 三名が登録を済ませた。


 銀貨一枚ずつ。


 年次更新制の説明を受けた。


 掲示板の依頼票を見た。


「これ、やっていいですか」


「どうぞ。報告は戻ってからここに来てください」


 三名が東の森へ向かった。


 セリウスがヒコを見た。


「第一号の依頼が出ました」


「早いですね」


「来る人間は、来ます」


 セリウスが静かに言った。


「場所があれば、集まる。それがギルドです」


──────────────────────────────────────


 昼、セリウスとドガンとヒコで話し合いをした。


「規則を決めたい」


 ドガンが口を開いた。


「商業ギルドも来月開く。人が一気に増える。善意だけでは、回らなくなる」


「具体的に何が必要ですか」


 セリウスが整理した。


「夜間外出制限。武器の持ち込み規定。宿泊登録。火気の管理。それと、外来者識別札」


「識別札、ですか」


「外来者と領民を区別します。何かあったとき、誰が何者かを確認できるようにする」


「強制ですか」


「任意です。ただし、識別札がない者は、一部の施設に入れない。ギルドの利用も、識別札が必要にします」


 ドガンが続けた。


「金払いが良い場所には、秩序がある。秩序がある場所に、良い人間が集まる」


 ヒコは少し考えた。


「人が増えると、善意だけじゃ回りません」


「そうです」


 セリウスが短く言った。


「ギルドは自由です。ただし、秩序の上に成り立ちます。秩序が崩れれば、ギルドも崩れます」


「バルドさんに伝えて、領地全体で周知してください」


「承知しました」


──────────────────────────────────────


 午後、コリンが来た。


「医務室の件で相談があります」


「聞かせてください」


「外来者が増えています。病気や怪我への対応を、今まで通り個別に行うのは難しくなってきました」


「専用の場所が必要ですか」


「簡易でいいです。処置ができる場所と、隔離できる部屋があれば、対応できます」


「隔離、ですか」


「感染症のリスクです。外から来る人間が増えると、こちらが知らない病が入ってくる可能性があります。早期に隔離できれば、広がりを抑えられます」


 ヒコは少し考えた。


「場所はどこが良いですか」


「ギルドの近くが良いです。外来者が最初に来る場所の近くに置く」


「ガッツさんに相談できますか」


「お願いできますか」


「します」


 ガッツに話を持っていった。


「医務室の設置をお願いしたいです。簡易でいいです。処置室と隔離部屋を一つずつ」


「ギルドの隣に空きがある。そこを使えばいい」


「費用は」


「小規模だから、銀貨五十枚あれば足りる」


「来月中に動けますか」


「動ける」


──────────────────────────────────────


 夕方、外部から来た三名の冒険者が戻ってきた。


「東の森、調査してきました」


「どうでしたか」


「ブレードボア二頭、モスハウンド一頭を確認しました。遭遇はありません。位置と行動傾向をまとめてきました」


 セリウスが報告書を受け取った。


「ありがとうございます。報酬をお渡しします」


「またここに来ていいですか」


「いつでも。ただし、登録の更新は来年の同時期です」


「分かりました」


 三名が帰った。


 ヒコがセリウスを見た。


「初日にして、依頼の完了報告が来ましたね」


「そういうものです」


 セリウスが静かに言った。


「ギルドは、動き始めると止まらない。問題は、動かすことではなく、整えながら動かすことです」


──────────────────────────────────────


 夜、記録をつけた。


 陽炎月下旬。冒険者ギルド開設。セリウスが初代ギルドマスターとして着任。初日に外部冒険者三名が登録・依頼を完了。


 規則制定:夜間外出制限・武器持ち込み規定・宿泊登録・火気管理・外来者識別札。バルドを通じて周知予定。


 医務室設置:コリンが提案。ギルド隣に処置室・隔離部屋を設置。銀貨五十枚・来月着工。


 セリウスの言葉:「ギルドは自由です。ただし、秩序の上に成り立ちます」。「整えながら動かすことが大事」。


 ペンを置いた。


 扉が開いた。


 ギルドが、動いた。


 最初の依頼が出た。


 最初の依頼が戻ってきた。


 小さな一日だった。


 ただし、始まった日は、いつも小さい。



 第182話 冒険者ギルド、開く 了

【次回予告】

 商業ギルドの扉が開いた。


──────────────────────────────────────


【領地収支・陽炎月下旬時点】


・所持金:金貨314枚(変動なし)

 支出見込み:医務室設置 銀貨50枚(来月着工)

       畜産試験導入 金貨3枚前後

       商業ギルド建設完成費 金貨数枚


【発展進捗・第182話時点】


・防衛:100%(外来者識別札・夜間外出制限・武器携行規定制定)

・食料:98%(継続)

・水 :92%(継続)

・住居:78%(継続)

・インフラ:100%(冒険者ギルド開設・医務室設置計画)


 今日の進捗:冒険者ギルド開設(セリウス着任)。初日に外部冒険者三名が登録・依頼完了。規則五点制定(夜間外出・武器・宿泊・火気・識別札)。医務室設置をコリンが提案・ガッツが来月着工確定(銀貨五十枚)。

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