表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
323/345

 第180話 繋がり

 設計したものが、設計通りに動くとは限らない。


 想定外に動くことがある。


 ――想定外が起きたとき、何かが繋がっている。

 青天月、末。


 夕方、コリンが来た。


 少し、急いでいる顔をしていた。


「報告があります」


「聞かせてください」


「広域回復補助が、予想外の形で動きました」


 コリンが続けた。


「西側の外堀掘削が進んだとき、蓄積帯の地脈が一時的に乱れました。掘削の振動が、地脈に伝わったと思います」


「問題が起きましたか」


「起きませんでした」


 コリンが静かに言った。


「広域回復補助が、自動的に地脈を安定させました。術式を追加したわけではありません。設置してあるものが、自分で動いた」


「設計していなかった動きですか」


「はい。ただし、結果として良い方向に動きました」


──────────────────────────────────────


 リアを呼んだ。


 コリンの報告を伝えた。


「蓄積帯の状態を確認してもらえますか」


「確認します」


 リアが蓄積帯に向かった。


 少し経って、戻ってきた。


「安定しています」


「掘削の影響は残っていますか」


「残っていません。むしろ、以前より流れが整っています」


「整っている、というのは」


「白色層と、広域回復補助の結界が、重なるように動いています。二つが同じ方向に働いている」


 リアが続けた。


「設計上、二つは別の仕組みです。ただし、動きが合っています」


 ヒコはサヤのところに行った。


──────────────────────────────────────


「コリンさんの広域回復補助と、白色層が連動しているように見えます」


 サヤが少し間を置いた。


「そうです」


「意図していましたか」


「していませんでした」


 サヤが静かに言った。


「ただし、驚いていません」


「なぜですか」


「この領地の仕組みが、繋がり始めているからです」


 サヤが続けた。


「白色層。広域回復補助。グリットの固化。下水網。全部が、別々に動いているように見えて、同じ方向を向いています」


「同じ方向、というのは」


「この領地を、安定させる方向です」


 ヒコは少し間を置いた。


「それは、良いことですか」


「良いことです」


 サヤが短く言った。


「ただし、安定した場所は、壊したがる人間も呼びます」


──────────────────────────────────────


 夜、ゴルフが来た。


「青天月の月間まとめです」


「聞かせてください」


 ゴルフが手帳を開いた。


「外部取引収入、金貨四十八枚です」


「先月より、さらに増えましたね」


「ギルド建設の話が広まっています。来月開設を見越して、先に取引を増やそうとする商人が増えています」


「ヴォルト商会の供給は順調ですか」


「順調です。先方が安定供給を評価しています。来月の再確認で、増量の相談が来るかもしれません」


「王都ルートは」


「来月、ランデルで商人と会います。正式な打ち合わせになります」


 ゴルフが手帳を閉じた。


「フォルテス領は、外から見ると、今が一番動いている時期に見えます」


「良いことですか」


「良いことです。ただし、目立っています」


──────────────────────────────────────


 翌朝、外堀の工事現場の近くを通った。


 子どもたちが三人、工事を見ていた。


 ルナもいた。


「大きい穴だね」


 子どもの一人が言った。


「水入るの?」


「将来的には入れる予定です」


「お堀になるの?」


「そうなる予定です」


 子どもたちが顔を見合わせた。


「すごい」


 ルナが工事の方を見ていた。


「この穴を、誰が掘っているの」


「ゾルドさんたちです」


「ゾルドさん、毎日掘ってる」


「そうですね」


「えらいね」


 ルナが短く言った。


 ヒコは少し笑った。


──────────────────────────────────────


 昼、訓練場の近くを通った。


 子どもたちが数人、木剣を持って遊んでいた。


 騎士団ごっこだった。


「アーヴィン様、参ります!」


「お前がアーヴィン様か」


「今日は俺がアーヴィン様だ。昨日はお前だっただろ」


「じゃあ俺がリク分隊長だ」


「私は冒険者ギルドの受付嬢!」


 一人の女の子が訓練場の外で宣言した。


 他の子どもたちが、少し困った顔をした。


「それは騎士団じゃない」


「冒険者ギルドは来月できるんだもん。先にやっておく」


 ヒコは少し立ち止まった。


 子どもたちが、この領地で育っていた。


 騎士団を知っていた。


 冒険者ギルドを知っていた。


 ここが普通だった。


 石壁があって、訓練場があって、工房があって、ギルドができる。


 それが当たり前の場所で、子どもたちが育っていた。


「オレ、将来騎士団に入る!」


 木剣を持った男の子が言った。


 ヒコはその声を聞いた。


 少し間を置いた。


 この子どもたちが大人になるとき、この領地がどうなっているか。


 それを、守らなければならなかった。


──────────────────────────────────────


 夜、記録をつけた。


 青天月末。コリン報告:広域回復補助が外堀掘削中に自動で地脈を安定させた。設計外の動き・結果は良好。


 リア確認:白色層と広域回復補助の結界が同方向に連動。蓄積帯は安定。


 サヤ所見:「この領地の仕組みが、繋がり始めています。全部が同じ方向を向いている」。安定が強くなると、揺らそうとする力も強くなる。


 ゴルフ月次精算:青天月外部取引収入金貨四十八枚。王都ルート来月正式打ち合わせ。


 子どもたちの声:「オレ、将来騎士団に入る」。この場所で育つ子どもを、初めて強く意識した。


 ペンを置いた。


 繋がりが増えていた。


 仕組みが、仕組みを支えていた。


 それが、領地が生き物になっていくということだった。


 守るべきものが、また増えた。



 第180話 繋がり 了

【次回予告】

 陽炎月。ヒコの誕生日が来た。


──────────────────────────────────────


【領地収支・青天月末時点(確定)】


・所持金:金貨354枚(+50)

 収 入:冒険者固定給 金貨 30枚

     勲爵士給与  金貨 12枚

     外部取引   金貨 48枚

     合計     約  90枚

 支 出:月次固定   金貨 40枚

     合計     約  40枚


 支出見込み:ギルド建設完成費 金貨数枚

       畜産試験導入   金貨3枚前後

       刻印証制定    小額


【発展進捗・第180話時点】


・防衛:100%(継続)

・食料:98%(継続)

・水 :92%(白色層・広域回復補助・下水網の連動確認)

・住居:78%(継続)

・インフラ:100%(領地の仕組みが連動・繋がり始めた)


 今日の進捗:コリンが広域回復補助の予想外の連動を報告。白色層・広域回復補助・グリット・下水網が同方向に連動(サヤ確認)。青天月ゴルフ精算(金貨四十八枚・来月王都ルート正式打ち合わせ)。子どもたちが騎士団ごっこ・「将来騎士団に入る」発言でヒコが守るべきものを強く意識。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ