表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
316/347

 第173話 ドガンが来た

 大きな場所で動いてきた人間が来ると、空気が変わる。


 良い意味で、変わる。


 ――場所は、来た人間の大きさに引っ張られる。

 陽炎月、下旬。


 昼前、ゴルフが来た。


「ドガンさんが着きました」


 セリウスが来てから、十日も経っていなかった。


──────────────────────────────────────


 入口に出た。


 ドガンがいた。


 四十代の男だった。


 体格が良かった。


 今にも大声を出しそうな顔だった。


 荷物が多かった。


 随行者が三名いた。


 ドガンがヒコを見た。


 一瞬で値踏みした。


 そういう目だった。


「フォルテス領主か」


「お久しぶりです。ヒコ・フォルティスです。よく来てくれました」


「ああ」


 ドガンが石壁を見た。


「でかいな」


 短く言った。


「まだ西側が残っています」


「それでも、でかい」


 ドガンが領地を見渡した。


「聞いていたより、出来てるな」


 セリウスと同じことを言った。


 ただし、声の大きさが違った。


──────────────────────────────────────


 ゴルフが出てきた。


 ドガンがゴルフを見た。


 ゴルフがドガンを見た。


 二人は少し間を置いた。


「ゴルフか」


「ドガンさん。お久しぶりです」


「知り合いですか」


 ヒコが聞いた。


「面識がある」


 ドガンが短く言った。


「中央で、何度か顔を合わせた。腕のいい商人だと聞いていた」


「過分なお言葉です」


 ゴルフが静かに言った。


「ドガンさんが来るとは、思っていませんでした」


「俺も、ここに来るとは思っていなかった」


 ドガンが少し笑った。


「ただし、来て正解だったかもしれない」


 二人がお互いを見た。


 ただし、敵意ではなかった。


 同じ仕事をする人間が、相手を測っている目だった。


──────────────────────────────────────


 昼食に、セリウスも呼んだ。


 三人が揃った。


 セリウスとドガンが顔を合わせた。


「セリウスか」


「ドガンさん」


「冒険者ギルドをやるんだって?」


「そのつもりです」


「商業ギルドは俺がやる。連携が必要になるな」


「なります」


 二人が短く確認した。


 アーヴィンが横から見ていた。


「揃いましたね」


「ああ」


 アーヴィンが短く言った。


「戦える領地になる」


 セリウスが少し間を置いた。


「戦える、というのは」


「守れる、ということだ」


 アーヴィンが続けた。


「軍事だけでは守れない。商業と冒険者ギルドが揃って、初めて守れる領地になる」


 ドガンが頷いた。


「その通りだ」


──────────────────────────────────────


 午後、ヒコはドガンと話した。


「商業ギルドを、ここに作りたいと思っています」


「ああ」


 ドガンが即答した。


「建物は、冒険者ギルドと並行して建てています。来月完成予定です」


「場所は」


「入口近くです。冒険者ギルドの隣を予定しています」


「悪くない。商人は冒険者と仕事が繋がる。隣が良い」


 ドガンが続けた。


「制度が必要だ。市場使用料、ギルド仲介料、倉庫保管料。この三つを最初に決める」


「取りますか」


「取る。ただし、高くしない。払える範囲で払ってもらう。秩序のための費用だ」


「ゴルフさんと役割が被りませんか」


「被らない」


 ドガンが短く言った。


「ゴルフは外に動く。俺は内を整える。役割が違う」


 ゴルフが横から頷いた。


「その通りです。自分は王都ルートを動きます。領地内の商業はドガンさんに任せます」


「決まりだ」


 ドガンが言った。


「明日から動く」


──────────────────────────────────────


 夜、アーヴィンに言った。


「セリウスさんとドガンさんが揃いました」


「ああ」


「これで、何が変わりますか」


 アーヴィンが少し考えた。


「今まで、この領地は軍事と農業と工房で動いていた。そこに商業と秩序が加わる」


「それが、戦える領地になるということですか」


「領地は、人が来なければ育たない。人が来るためには、安全と商機が要る。ギルドが両方を作る」


 アーヴィンが続けた。


「外敵が来たとき、守るものが増えた領地は、簡単には崩れない」


「守るものが多い方が、強いんですか」


「そうだ」


 アーヴィンが短く言った。


「失いたくないものがある人間は、最後まで戦う」


──────────────────────────────────────


エピローグ


 ゴルフは夜、帳簿を開いた。


 数字を確認した。


 王都ルートの準備が進んでいた。


 ヴォルト商会との再交渉も、来月に迫っていた。


 ドガンが来た。


 ゴルフは少し考えた。


 中央商業ギルドにいた頃のドガンを知っていた。


 動き始めたら止まらない人間だった。


 豪快だが、計算が速かった。


 感情で動くように見えて、実際は冷静だった。


 そういう人間がフォルテス領に来た。


 自分の役割が、変わる。


 今まではゴルフ一人が外と内を繋いでいた。


 これからは、外はゴルフ、内はドガンで分担する。


 外に専念できる。


 ゴルフは帳簿を閉じた。


 損はしない。


 ドガンも、そう考える人間だった。


 フォルテス領は、また一段、動き方が変わろうとしていた。



 第173話 ドガンが来た 了

【次回予告】

 ギルドを作る。


──────────────────────────────────────


【領地収支・陽炎月下旬時点】


・所持金:金貨273枚(変動なし)

 支出見込み:西側排水堀 金貨10枚前後(着工中)

       工房拡張  金貨10枚前後(着工中)

       冒険者ギルド・商業ギルド建設 着工中(来月完成予定)


【発展進捗・第173話時点】


・防衛:100%(継続)

・食料:98%(継続)

・水 :90%(継続)

・住居:75%(継続)

・インフラ:99%(商業ギルド設立準備開始・市場使用料等三点確認)


 今日の進捗:ドガン到着(随行者三名)。ゴルフとの旧知の対面。セリウス・ドガン・ゴルフ三者の役割分担確定(外=ゴルフ・内=ドガン・冒険者秩序=セリウス)。アーヴィン「戦える領地になる」。商業ギルド制度三点(市場使用料・仲介料・保管料)確認。エピローグ:ゴルフ視点(役割の変化・外に専念できる)。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ