表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
312/349

 第169話 ドガンが動いた

 二人が同時に動くとき、何かが変わる前兆だ。


 一人が動けば、場所が変わる。


 ――二人が動くと、時代が変わる。

 若樹月、末。


 朝、またランデル経由の書状が来た。


 今度はドガンからだった。


 二通目だった。


 ヒコは封を開けた。


 セリウスの手紙と同じくらい、短かった。


 「中央商業ギルドからの異動辞令をいただいた。フォルテス領に向かう」


 それだけだった。


──────────────────────────────────────


 ゴルフに見せた。


 ゴルフが読んだ。


 少し間を置いた。


「……両方、来ますか」


「そのようです」


 ゴルフが手帳を閉じた。


「セリウスさんとドガンさんが両方来る」


「はい」


「フォルテス領が変わります」


 ゴルフが静かに言った。


「良い意味で、です。ただし、変わり方が大きい」


「どのくらい大きいですか」


「今まで個人と個人で動いていたものが、組織と組織で動くようになります。ギルドができる。商業ギルドもできる。それは、領地が一段上に行くということです」


 ヒコは少し考えた。


「準備が必要ですね」


「急ぎます」


 ゴルフが続けた。


「今回だけは」


 ゴルフが言った。


 「急ぎません」が口癖の男が、急ぐと言った。


 それだけで、どのくらいのことかが分かった。


──────────────────────────────────────


 午前、アーヴィンとバルドを集めた。


「ドガンさんも来ます。セリウスさんと時期が重なるかもしれません」


 アーヴィンが短く言った。


「同時か」


「おそらく前後します。ただし、どちらが先かは分かりません」


「居住場所は二人分必要だ」


「バルドさん、対応できますか」


 バルドが少し考えた。


「空き家をもう一軒整備する。宿屋が完成すれば、そちらに移ってもらうこともできる」


「お願いします」


「ドガンという人間は、どういう人間だ」


「中央商業ギルドの幹部です。豪快な人間です。動き始めたら止まらない」


「セリウスとは違うタイプか」


「全然違います。ただし、どちらも信用できます」


 バルドが頷いた。


「なら、崩れにくくなる」


 短い言葉だった。


 ただし、その通りだった。


──────────────────────────────────────


 昼、マユミが来た。


 珍しく、改まった顔をしていた。


「話がある」


「聞かせてください」


「近衛の話だ」


 ヒコは少し首を傾けた。


「近衛、ですか」


「セリウスとドガンが来る。外から人が増える。冒険者ギルドができる。商業ギルドができる」


 マユミが続けた。


「そうなると、お前が動く範囲が増える。会う人間が増える。そのたびに、護衛が必要になる」


「アーヴィンさんや騎士団が――」


「騎士団は領地全体を守る。お前一人を専属で守る部隊じゃない」


 マユミが言った。


「お前が倒れたら、この領地が止まる」


 ヒコは少し間を置いた。


「そこまでじゃないと思いますが」


「そこまでだ」


 断言だった。


「今はまだ小さい。ただし、今のうちに作っておかないと、必要になってから間に合わない」


「近衛兵、というのは何名ですか」


「最初は少数でいい。三名から五名。私が直接選ぶ。領主専属の護衛と、施設の防衛を担う」


「マユミさんが指揮するんですか」


「私が主導する。アーヴィンとは役割が違う」


 アーヴィンが横から言った。


「賛成だ」


 マユミが少し驚いた顔をした。


「珍しいですね」


「当然のことを言っている」


 アーヴィンが短く言った。


「俺は全体を見る。マユミはヒコを見る。それで足りないところが埋まる」


 ヒコは二人を見た。


「分かりました。マユミさんに任せます」


「決まりだ」


 マユミが短く言った。


──────────────────────────────────────


 夕方、ヒコはドガンへの返書を書いた。


 短く書いた。


 「いつでもお待ちしています」


 使者に渡した。


 夜になった。


 セリウスとドガン。


 二人が来る。


 冒険者ギルドと商業ギルドが生まれる。


 フォルテス領が、また形を変えようとしていた。


──────────────────────────────────────


 夜、記録をつけた。


 若樹月末。ドガンから二通目の書状。「中央商業ギルドからの異動辞令をいただいた。フォルテス領に向かう」。


 受け入れ準備:バルドが空き家をもう一軒整備。セリウス・ドガン両名分の居住確保。


 ゴルフ所見:「フォルテス領が変わります。今回だけは急ぎます」。


 近衛兵設立:マユミが提案。三〜五名・領主専属護衛と施設防衛担当。アーヴィンも賛成。検討開始。


 ペンを置いた。


 二人が同時に来る。


 ゴルフが「急ぎます」と言った。


 それが、どのくらいのことかを、ヒコは少し実感した。


 フォルテスは、もう村の速度では動いていなかった。



 第169話 ドガンが動いた 了

【次回予告】

 グリットが個体化した。


──────────────────────────────────────


【領地収支・若樹月末時点】


・所持金:金貨247枚(変動なし)

 支出見込み:西側排水堀 金貨10枚前後(来月着工)

       工房拡張  金貨10枚前後(着工中)

       宿屋建設  材料費別途(村人主体・進行中)


【発展進捗・第169話時点】


・防衛:100%(近衛兵設立検討開始)

・食料:98%(継続)

・水 :90%(継続)

・住居:75%(空き家整備追加・宿屋建設進行中)

・インフラ:98%(継続)


 今日の進捗:ドガンから二通目の書状(中央商業ギルド異動辞令・来訪確定)。バルドが居住用空き家をもう一軒整備。ゴルフ「フォルテス領が変わります。今回だけは急ぎます」。マユミが近衛兵設立を提案(三〜五名・領主専属・施設防衛)。アーヴィン賛成。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ