第169話 ドガンが動いた
二人が同時に動くとき、何かが変わる前兆だ。
一人が動けば、場所が変わる。
――二人が動くと、時代が変わる。
若樹月、末。
朝、またランデル経由の書状が来た。
今度はドガンからだった。
二通目だった。
ヒコは封を開けた。
セリウスの手紙と同じくらい、短かった。
「中央商業ギルドからの異動辞令をいただいた。フォルテス領に向かう」
それだけだった。
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ゴルフに見せた。
ゴルフが読んだ。
少し間を置いた。
「……両方、来ますか」
「そのようです」
ゴルフが手帳を閉じた。
「セリウスさんとドガンさんが両方来る」
「はい」
「フォルテス領が変わります」
ゴルフが静かに言った。
「良い意味で、です。ただし、変わり方が大きい」
「どのくらい大きいですか」
「今まで個人と個人で動いていたものが、組織と組織で動くようになります。ギルドができる。商業ギルドもできる。それは、領地が一段上に行くということです」
ヒコは少し考えた。
「準備が必要ですね」
「急ぎます」
ゴルフが続けた。
「今回だけは」
ゴルフが言った。
「急ぎません」が口癖の男が、急ぐと言った。
それだけで、どのくらいのことかが分かった。
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午前、アーヴィンとバルドを集めた。
「ドガンさんも来ます。セリウスさんと時期が重なるかもしれません」
アーヴィンが短く言った。
「同時か」
「おそらく前後します。ただし、どちらが先かは分かりません」
「居住場所は二人分必要だ」
「バルドさん、対応できますか」
バルドが少し考えた。
「空き家をもう一軒整備する。宿屋が完成すれば、そちらに移ってもらうこともできる」
「お願いします」
「ドガンという人間は、どういう人間だ」
「中央商業ギルドの幹部です。豪快な人間です。動き始めたら止まらない」
「セリウスとは違うタイプか」
「全然違います。ただし、どちらも信用できます」
バルドが頷いた。
「なら、崩れにくくなる」
短い言葉だった。
ただし、その通りだった。
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昼、マユミが来た。
珍しく、改まった顔をしていた。
「話がある」
「聞かせてください」
「近衛の話だ」
ヒコは少し首を傾けた。
「近衛、ですか」
「セリウスとドガンが来る。外から人が増える。冒険者ギルドができる。商業ギルドができる」
マユミが続けた。
「そうなると、お前が動く範囲が増える。会う人間が増える。そのたびに、護衛が必要になる」
「アーヴィンさんや騎士団が――」
「騎士団は領地全体を守る。お前一人を専属で守る部隊じゃない」
マユミが言った。
「お前が倒れたら、この領地が止まる」
ヒコは少し間を置いた。
「そこまでじゃないと思いますが」
「そこまでだ」
断言だった。
「今はまだ小さい。ただし、今のうちに作っておかないと、必要になってから間に合わない」
「近衛兵、というのは何名ですか」
「最初は少数でいい。三名から五名。私が直接選ぶ。領主専属の護衛と、施設の防衛を担う」
「マユミさんが指揮するんですか」
「私が主導する。アーヴィンとは役割が違う」
アーヴィンが横から言った。
「賛成だ」
マユミが少し驚いた顔をした。
「珍しいですね」
「当然のことを言っている」
アーヴィンが短く言った。
「俺は全体を見る。マユミはヒコを見る。それで足りないところが埋まる」
ヒコは二人を見た。
「分かりました。マユミさんに任せます」
「決まりだ」
マユミが短く言った。
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夕方、ヒコはドガンへの返書を書いた。
短く書いた。
「いつでもお待ちしています」
使者に渡した。
夜になった。
セリウスとドガン。
二人が来る。
冒険者ギルドと商業ギルドが生まれる。
フォルテス領が、また形を変えようとしていた。
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夜、記録をつけた。
若樹月末。ドガンから二通目の書状。「中央商業ギルドからの異動辞令をいただいた。フォルテス領に向かう」。
受け入れ準備:バルドが空き家をもう一軒整備。セリウス・ドガン両名分の居住確保。
ゴルフ所見:「フォルテス領が変わります。今回だけは急ぎます」。
近衛兵設立:マユミが提案。三〜五名・領主専属護衛と施設防衛担当。アーヴィンも賛成。検討開始。
ペンを置いた。
二人が同時に来る。
ゴルフが「急ぎます」と言った。
それが、どのくらいのことかを、ヒコは少し実感した。
フォルテスは、もう村の速度では動いていなかった。
第169話 ドガンが動いた 了
【次回予告】
グリットが個体化した。
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【領地収支・若樹月末時点】
・所持金:金貨247枚(変動なし)
支出見込み:西側排水堀 金貨10枚前後(来月着工)
工房拡張 金貨10枚前後(着工中)
宿屋建設 材料費別途(村人主体・進行中)
【発展進捗・第169話時点】
・防衛:100%(近衛兵設立検討開始)
・食料:98%(継続)
・水 :90%(継続)
・住居:75%(空き家整備追加・宿屋建設進行中)
・インフラ:98%(継続)
今日の進捗:ドガンから二通目の書状(中央商業ギルド異動辞令・来訪確定)。バルドが居住用空き家をもう一軒整備。ゴルフ「フォルテス領が変わります。今回だけは急ぎます」。マユミが近衛兵設立を提案(三〜五名・領主専属・施設防衛)。アーヴィン賛成。




