表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
296/363

 第153話 容量の壁

 作れる量の壁に、必ずぶつかる。


 それが「次の問題」だ。


 ――壁にぶつかったとき、壁を壊すか、別の道を探すか。それが判断だ。

 芽吹月、九日。


 朝、ゴルフが執務室に来た。


「取引が成立しました」


「詳細を聞かせてください」


 ゴルフが書類を広げた。


「魔導銀十匁(約四十グラム)。農産物は麦十五キロ・根菜二十キロ。輸送コストと私の報酬を差し引くと合計で金貨十二枚の収入です」


「良い取引でしたか」


「良い取引でした。刻印があったことで、値段を下げずに済みました」


「次の取引の見通しは」


 ゴルフが少し間を置いた。


「そこに問題があります」


──────────────────────────────────────


「需要が、供給を上回り始めています」


 ゴルフが続けた。


「商隊が今回来たことで、フォルテス領産の認知が広がります。次の商隊が来る前に、追加注文が来る可能性があります」


「追加注文に対応できますか」


「魔導銀は難しい。農産物は余剰分の範囲で対応できます」


 俺はガデルを呼んだ。


「今の月産量を確認させてください」


「二十匁が上限だ」


 ガデルが即座に言った。


「今の炉の状態で、これ以上は上げられない」


「炉を増やせますか」


「増やせる。ただし、時間がかかる。今すぐではない」


「どれくらいかかりますか」


「炉の設計から始めれば、二ヶ月から三ヶ月だ」


──────────────────────────────────────


「三つの選択肢があります」


 俺が言った。


「採掘量を増やすか。精製効率を上げるか。品目を絞るか」


 ゴルフが頷いた。


「採掘量を増やすのは、蓄積帯の状態次第ですね」


「リアさんとゾルドさんに確認します」


 リアを呼んだ。ゾルドも呼んだ。


「蓄積帯の採掘余力を確認したいのですが」


 リアが少し考えた。


「今の採掘ペースより少し上げることは可能だと思います。ただし、確認が必要です」


「確認してもらえますか」


「今日の午後に感知します」


 ゾルドが短く言った。


「石の向きが変わっている。取れやすい方向がある。今のペースより三割は上げられる」


「三割ですか」


「ただし、無理はしない。石が嫌がったら止める」


──────────────────────────────────────


 午後、リアが縦穴の傍で感知した。


 俺もいた。


「どうですか」


「採掘量を少し上げても、蓄積帯は問題ないと思います」


「どれくらいまで上げられますか」


「今の二割から三割増しなら、問題ありません。それ以上は慎重にした方がいいです」


「分かりました」


 俺は《可視化》を入れた。


 絞って。縦穴の方向。


 外縁の青みが続いていた。


 安定していた。


 ゾルドの「三割は上げられる」という言葉と一致していた。


 解いた。


「採掘量を段階的に上げます。三割増しを目標に、様子を見ながら」


 リアが記録した。


──────────────────────────────────────


「精製効率の改善は」


 ゴルフが聞いた。


「ガデルさんに相談します。ただし、今すぐ劇的に改善するのは難しい」


「品目を絞る選択肢は」


「最後の手段です。絞ると、取引先に対して供給が不安定だという印象を与えます」


 ゴルフが頷いた。


「そうです。ブランドを作り始めた段階で品目を絞ると、信頼が下がります」


「今は採掘量の段階的増加で対応します。それで間に合わない場合は、次の手を考えます」


「了解です。ヴォルト商会への回答も、この状況を踏まえて再考します」


──────────────────────────────────────


 夜、記録をつけた。


 芽吹月九日。取引成立(金貨十二枚)。


 問題:需要が供給を上回り始めた。魔導銀の月産上限は二十匁。


 対応方針:採掘量を段階的に三割増加(ゾルド・リア確認済み)。


 炉の増設:二〜三ヶ月かかる。長期の対策として検討継続。


 品目絞り込み:ブランド信頼への影響から最終手段。


 ペンを置いた。


 壁にぶつかった。


 ただし、壁の種類が分かっていた。


 原因が分からない壁ではなかった。


 種類が分かれば、対処できる。


 採掘量は上げられた。


 炉は時間をかければ増やせた。


 精製効率は少しずつ上がっていた。


 全部が、今すぐではなかった。


 ただし、全部が、動いていた。


 ――動いている問題は、解ける。止まっている問題より、解きやすい。


 窓の外に月があった。


 芽吹月の月だった。


 フォルテス領の夜は、静かだった。



 第153話 容量の壁 了

【次回・第154話 予告】


 セリウスから、久しぶりに手紙が届いた。

 今回は、少し違った。


──────────────────────────────────────


【領地収支】


・所持金 :金貨257枚前後

 (商隊取引収入:金貨12枚)


【発展進捗・第153話時点】


・防衛  :100%(変化なし)

・食料  :98%(変化なし)

・水   :90%(変化なし)

・住居  :72%(新規流入対応中)

・インフラ:98%(採掘量増加方針確定)


 今日の進捗:取引成立(金貨十二枚)。需要が供給を上回り始めた。魔導銀月産上限二十匁(ガデル確認)。対応方針:採掘量を段階的に三割増加(ゾルド・リア確認済み)。炉の増設は二〜三ヶ月かかる長期課題。《可視化》で蓄積帯の安定確認。定期討伐:なし(雷曜星)。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ