第151話 凍氷月の収支
数字は、正直だ。
感情を持たない分、真実しか言わない。
――数字が変わったとき、何かが変わったことが分かる。
芽吹月、五日。
ゴルフが月間の成果報告を持ってきた。
「凍氷月の取引まとめです」
「聞かせてください」
ゴルフが書類を広げた。
「まず、ヴァン商会との取引が成立しました。農産物の余剰分・魔導銀少量。銀貨八十二枚の収入です」
俺は少し考えた。
銀貨八十二枚。
金貨八枚と銀貨二枚。
「小さいですか」
「小さいです。ただし、最初の月としては十分です」
ゴルフが続けた。
「純利益は銀貨四十一枚程度です。輸送コスト・包装費を差し引いた分です」
「ゴルフさんへの報酬は」
「純利益の一割ですので、銀貨四枚程度です」
「最初の報酬ですね」
「はい」
ゴルフが少し間を置いた。
「ここに来て正解でした」
短く言った。
それだけだった。
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次に、ガデルを呼んだ。
「魔導銀の累計を確認したいのですが」
「二百六十匁だ」
ガデルが即座に答えた。
「成果報酬の基準は二百五十匁(約一キログラム)でしたね」
「達した」
「成果報酬を計上します。金貨二枚です」
ガデルが少し間を置いた。
「急かしていない、と言っていた」
「言っていましたね」
「ただし、受け取る」
ガデルが短く言った。
「礼はいらない」
「分かっています」
ガデルが工房に戻った。
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夕方、収支をまとめた。
凍氷月の月間収支。
収入:
冒険者固定給 金貨三十枚
勲爵士給与 金貨十二枚
外部取引収入 銀貨八十二枚(金貨八枚+銀貨二枚相当)
合計収入:金貨五十枚+銀貨二枚
支出:
月次固定支出 金貨三十三枚相当
北側石壁完成費 金貨二十九枚(凍氷月内に完了)
ガデル成果報酬 金貨二枚
ゴルフ純利益分 銀貨四枚
合計支出:金貨六十四枚+銀貨四枚相当
月間収支:マイナス十五枚前後(石壁完成費が大きい)
所持金:金貨二百四十五枚前後。
ペンを止めた。
マイナスだった。
ただし、石壁が完成していた。
石壁という資産が、数字に出なかった分だった。
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夜、一人で数字を見直した。
外部収入が初めて計上された。
銀貨八十二枚。
小さかった。
ただし、ゼロではなかった。
ゼロと一は、大きく違う。
最初の月に実績ができた。
次の月は、実績がある状態で始められる。
ガデルの成果報酬も初めて計上された。
魔導銀が二百六十匁に達した。
数字が積み上がっていた。
ゴルフへの初回報酬も計上された。
「ここに来て正解でした」と言った。
その言葉が、この月の成果だった。
数字より先に、人の言葉が残った。
フォルテス領は、外に繋がり始めていた。
繋がりは、最初は細い。
細くても、繋がっていた。
――細い繋がりを太くするのが、次の仕事だ。
窓の外に月があった。
芽吹月の月だった。
フォルテス領の夜は、静かだった。
第151話 凍氷月の収支 了
【次回・第152話 予告】
芽吹月の半ば、最初の商隊がフォルテス領を目指してきた。
ゴルフが「来ます」と言った。
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【領地収支・凍氷月月間確定】
・所持金 :金貨245枚前後(-15)
収 入 :冒険者固定給金貨30枚
勲爵士給与金貨 12枚
外部取引銀貨 82枚
合計 約50枚
支 出 :月次固定金貨 33枚
北側石壁金貨 29枚
ガデル成果報酬金貨2枚
ゴルフ報酬銀貨 4枚
合計 約65枚
【発展進捗・第151話時点】
・防衛 :100%(変化なし)
・食料 :98%(変化なし)
・水 :90%(変化なし)
・住居 :75%(変化なし)
・インフラ:98%(変化なし)
今日の進捗:凍氷月月間収支まとめ。外部取引初収入計上(銀貨82枚)。ガデル成果報酬初回計上(金貨2枚・魔導銀260匁達成)。ゴルフ初回報酬支払い(銀貨4枚)・「ここに来て正解でした」。月間は石壁完成費込みでマイナスだが石壁という資産を取得。定期討伐:土曜星につき実施・ボア系2頭・全員無傷。




