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 第142話 第二段階

 一段目は「届ける」ためにある。


 二段目は「確かめる」ためにある。


 ――届いたものが、本当に機能しているかどうか。それを問うのが、二段目の仕事だ。

 凍氷月、十五日。


 朝、コリンが執務室に来た。


「霊銅が五十匁(約二百グラム)に達しました」


「確認しました」


「第二段階の設置に入れます。よろしいですか」


「お願いします」


 コリンが深く頭を下げた。


「工期は三日を見ています。基本設置のときより短い。ただし、調整が難しい」


「どう難しいですか」


「霊銅は地脈反応性が高い。術式石と組み合わせると、干渉が起きやすい。慎重に進めます」


「リアさんに監視をお願いしますか」


「既に話してあります」


 コリンが準備に向かった。


──────────────────────────────────────


 一日目・二日目は順調だった。


 コリンが調整用の結界石を施設の要所に配置した。


 霊銅を混ぜた石だった。


 リアが蓄積帯の状態を確認しながら動いた。


「干渉はありますか」


「今のところありません。ただし、石を置くたびに地脈の流れが少し変わります」


「変化の方向は」


「整っています。乱れていません」


 二日目の夜、コリンが俺に報告した。


「明日で完成します。ただし、最後の一石が難しい」


「どういう点がですか」


「施設の中心に近い場所に置く石です。地脈との干渉が最も強くなります」


「慎重にやってください」


「はい」


──────────────────────────────────────


 三日目。


 最後の一石を置く作業だった。


 俺も現場にいた。


 コリンが石を持った。


 ゆっくりと、決めた位置に近づけた。


 その瞬間だった。


 地脈が動いた。


 音はなかった。


 ただし、空気が変わった。


 リアが目を閉じた。


「蓄積帯が……」


 コリンが即座に抑制術式を展開した。


 手が速かった。


 光が走った。


 一瞬だった。


 静まった。


 俺は《可視化》を入れた。


 絞って。縦穴の方向。


 白色の層が見えた。


 一瞬だけ、強く光った。


 それから、静まった。


 解いた。


「コリンさん、大丈夫ですか」


「問題ありません」


 コリンが息を整えた。


「想定内でした。ただし、想定の上限でした」


 リアが目を開けた。


「蓄積帯が、こちらを確認したような感触でした」


「驚いたということですか」


「驚いた、というより、認識した、という感触です」


──────────────────────────────────────


 夕方、サヤに会いに行った。


「今日、地脈が動きました」


「知っています」


「蓄積帯が反応しましたか」


「しました。驚いたようです。ただし、拒絶ではありません」


「拒絶ではない、というのは」


「受け入れた、ということです。ただし、確認が必要だったようです」


 俺は少し考えた。


「白色の層が光りました。あれは何ですか」


 サヤが少し間を置いた。


「まだ、教えられません」


「悪いものではないですか」


「悪いものではありません」


 サヤが静かに言った。


「時期が来たら、分かります。今は、そういう段階ではないということです」


「分かりました。急ぎません」


 サヤが少し頷いた。


「第二段階は、成功しています。施設の地脈との連動が、一段階深くなりました」


──────────────────────────────────────


 夜、コリンが完成の確認をした。


「設置、完了しました」


「問題はありませんか」


「ありません。今日の一瞬は、想定できていました。ただし、対処が速かったです」


 リアが言った。


「抑制術式は、師匠に教わったものです」


 コリンが静かに言った。


「シグレ師匠は、地脈の干渉を何度も経験していたようです。だから、教えてくれました」


「今日、役に立ちましたね」


「はい」


 コリンが少し間を置いた。


「師匠が教えてくれたことが、今日ここで使えました。それが、少し、嬉しかったです」


──────────────────────────────────────


 俺は《可視化》で領地全体を確認した。


 絞って。短時間。


 色が変わっていた。


 基本設置のときより、さらに均一だった。


 薄い金色が、領地全体に広がっていた。


 濃さが増していた。


 霊銅の調整が、全体の精度を上げていた。


 解いた。


──────────────────────────────────────


 夜、記録をつけた。


 凍氷月十五日〜十七日。広域回復補助・第二段階設置完了。


 工期:三日。使用霊銅:五十匁(約二百グラム)。


 最終設置時に地脈反応が一瞬暴走しかけた。コリンが抑制術式で即座に対処。


 白色層:一瞬強く光り、静まった。サヤ「まだ教えられない。ただし、悪いものではない」。


 サヤ確認:施設の地脈との連動が一段階深くなった。


 《可視化》確認:領地全体の金色が濃くなった。均一性がさらに向上。


 ペンを置いた。


 一段目が届けるためにあったなら、二段目は確かめるためにあった。


 届いたものが、機能しているかどうか。


 それを今日、確かめた。


 機能していた。


 白色層のことは、まだ分からなかった。


 ただし、サヤが「悪いものではない」と言った。


 今は、それで十分だった。


 ――分からないことと、危険なことは、違う。


 窓の外に月があった。


 凍氷月の月だった。


 フォルテス領の夜は、静かだった。



 第142話 第二段階 了

【次回・第143話 予告】


 ゴルフが「大きな話があります」と言いに来た。


──────────────────────────────────────


【領地収支】


・所持金 :金貨260枚前後(変動なし)

・霊銅使用:五十匁(約二百グラム)・広域回復補助第二段階に充当


【発展進捗・第142話時点】


・防衛  :100%(変化なし)

・食料  :98%(変化なし)

・水   :90%(変化なし)

・住居  :75%(変化なし)

・インフラ:98%(広域回復補助・第二段階完成・地脈連動一段階深まる)


 今日の進捗:広域回復補助・第二段階設置完了(工期三日・霊銅五十匁使用)。最終設置時に地脈反応が一瞬暴走しかけたがコリンが即座に対処。白色層が一瞬強く光った(サヤ「悪いものではない・時期が来たら分かる」)。《可視化》で領地全体の金色が濃くなり均一性向上を確認。コリン「師匠が教えてくれたことが今日使えた」。定期討伐:土曜星につき実施・ボア系3頭・全員無傷。

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