表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

140/203

第百四十話「国王との謁見」

 翌朝だった。


 朝食が出た。


 宿の食事だった。


 見慣れない料理だった。


 でも、うまかった。


 食べ終わってから、王宮からの迎えが来た。


 馬車だった。


 紋章がついていた。


 全員で乗った。


 ミルヴァだけ残った。


「情報を集めてくる」


「お願いします」


「何かあれば動く」


「わかりました」


 馬車が動いた。



 王宮の門をくぐった。


 大きかった。


 衛兵が並んでいた。


 石畳の廊下が続いた。


 天井が高かった。


 窓から庭が見えた。


 手入れされた庭だった。


 案内役が前を歩いた。


 全員が続いた。


 マユミが小声で言った。


「でかいな」


「はい」


「迷子になりそうだ」


「羅針盤があります」


「それは必要ない」


「そうですね」


 コリンが小声で言った。


「緊張します」


「俺もします」


「ヒコさんも緊張するんですね」


「何度聞かれても、同じ答えです」


 コリンが少し笑った。


 廊下が続いた。


 突き当たりに、大きな扉があった。


 案内役が止まった。


「こちらでございます。準備ができましたら、お声がけください」


「少し待ってください」


 全員が揃った。


 俺は全員を見た。


「確認します。礼儀はリアさんから聞いた通りです。俺が話します。何か気になることがあれば、後で教えてください」


「はい」


「問題はありません」


「わかった」


「はい」


 全員が頷いた。


「行きます」


 案内役に声をかけた。


 扉が開いた。



 広い部屋だった。


 天井がさらに高かった。


 柱が並んでいた。


 床に、紋章が描かれていた。


 両側に、貴族らしい人間が並んでいた。


 静かだった。


 奥に、玉座があった。


 男が座っていた。


 年齢は五十代に見えた。


 白髪が混じっていた。


 静かな目をしていた。


 俺は可視化で確認した。


 色が見えた。


 落ち着いた色だった。


 濃かった。


 品定めしている色だった。


 でも、敵意はなかった。


 全員で前に進んだ。


 決められた位置で止まった。


 頭を下げた。


 国王が口を開いた。


「来たか」


 静かな声だった。


 低かった。


「はい。お召しにより参りました」


「顔を上げろ」


 顔を上げた。


 国王が全員を見た。


 一人ずつ確認するように見た。


「五人か」


「はい。もう一人は外で待機しています」


「そうか」


「全員、Bランクだったな」


「はい」


「Bランクのパーティが、魔族の作戦を止めた」


 俺は少し間を置いた。


「全員での成果です」


「一人の功績ではない、と言うか」


「そういう意味です」


 国王が少し間を置いた。


「正直な男だ」


 国王が少し前を向いた。


「其方、何をもって勝った」


 俺は少し間を置いた。


「段取りと現場です」


 国王が少し間を置いた。


「段取りと、現場」


「はい。何をするか決めて、現場で確認して、修正しながら動きました。それだけです」


「力ではない、と言うか」


「力も使いました。ただ、使いどころを間違えませんでした」


 国王が静かに笑った。


 小さい笑いだった。


 でも、確かに笑った。


「面白い」


 国王が全員を見た。


「其方たちに、報いたいと思っている」


「ありがとうございます」


「ただし、報いには条件がある」


「条件は」


「受け取ってもらえるか、確認したい」


 俺は少し間を置いた。


「内容を聞いてから、判断させてください」


 国王が少し間を置いた。


「正直だな」


「現場では、内容を確認せずに動くと、後で問題が出ます」


「そうか」


 国王が少し前を向いた。


「称号を与えたい」


 室内が静かになった。


「王国勲爵士だ。それに伴い、姓を与える。領地の授与権も生じる」


 俺は少し間を置いた。


「領地、ですか」


「与えたい領地がある」


「どういう場所ですか」


 国王が少し間を置いた。


「南方の辺境地だ。村が一つある。人口は少ない。魔物が頻出する。防衛機構はない」


「難しい場所ですか」


「難しい場所だ」


 俺は少し間を置いた。


「それを、俺たちに渡す理由は」


「其方たちなら、何とかしてくれると思っている」


「根拠は」


「今回の件だ」


 静かな答えだった。


 俺は少し間を置いた。


 難しい場所。


 魔物が頻出する。


 防衛機構がない。


 村が一つ。


 全部が問題だった。


 でも、問題は現場に行けばわかる。


「一つだけ聞かせてください」


「何だ」


「その領地に、隠れた価値はありますか」


 国王が少し間を置いた。


「なぜそれを聞く」


「難しい場所を渡す理由が、困り事の押し付けだけなら、別の判断があります。ただ、価値があるなら、受け取る理由になります」


 国王が静かに笑った。


「よく見ている」


「現場仕込みなので」


「その通りだ。価値はある。ただし、今は言えん」


「現地で確認しろ、ということですか」


「そういうことだ」


 俺は少し間を置いた。


「全員で相談してから、返答していいですか」


「構わん」


 俺は全員を見た。


 マユミが少し頷いた。


 アーヴィンさんが静かに頷いた。


 リアが言った。


「合理的な判断が必要です」


「はい」


 コリンが言った。


「全員で動けるなら、問題はないと思います」


「ありがとうございます」


 俺は国王を見た。


「受け取ります」


「そうか」


「ただし、条件があります」


 国王が少し間を置いた。


「言ってみろ」


「パーティ全員が帯同できること。役割は我々が決めれること。現地の状況を確認し急がすことなく自由に動けること」


「それだけか」


「それだけです」


 国王が少し間を置いた。


「認めよう」


「ありがとうございます」


 国王が全員を見た。


「其方たちは、変わった冒険者だ」


「現場仕込みなので」


 国王が少し笑った。


「そうか」


 国王が立った。


「式典は明日だ。今日は休め」


「はい」


「一つだけ言っておく」


「はい」


「期待している」


 俺は少し間を置いた。


「段取りを組んで、動きます」


 国王が頷いた。


 扉が開いた。


 全員で部屋を出た。



 廊下を歩いた。


 全員が静かだった。


 王宮の外に出た。


 空が見えた。


 晴れていた。


 マユミが言った。


「領主になるのか」


「なるかもしれません」


「一緒に来てくれますか」


 マユミが少し間を置いた。


「当然だ」


 コリンが言った。


「領地、大変そうですね」


「大変です」


「でも、やれそうですか」


「段取りを組めば、やれます」


「そうですね」


 リアが言った。


「魔術顧問として動きます」


「ありがとうございます」


 アーヴィンさんが言った。


「俺も行く」


「ありがとうございます」


 全員が揃っていた。


 誰も、断らなかった。


 俺は少し間を置いた。


「ありがとうございます。全員で行きます」


 馬車が待っていた。


 宿に戻った。


 ミルヴァが部屋で待っていた。


「どうだった」


「領主になるかもしれません」


 ミルヴァが少し間を置いた。


「領主か」


「辺境の、難しい場所です」


「諜報員として動けるな」


「お願いします」


「当然だ」


 ミルヴァが少し間を置いた。


「悪くない」


「そうですか」


「情報屋より、組織の中で動く方が、使える手が多い」


「合理的ですね」


「そうだ」


 全員が揃った。


 七人目はいなかった。


 先ずは六人。


 でも、それで十分だった。


 急がない。


 止まらない。


 明日、式典がある。


 その後、新しい現場へ。


第百四十話「国王との謁見」了

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ