表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エルシナスヴァリア〜最強の頂へ〜  作者: 一木
第一章 約束は終わることなく
9/21

第八話 魔術と竜

三人で探索を始めてそれなりに経った頃。

一つ山を越えて、キタンが見える位置まで来れた。

ただ…


「なあ、どんどん吹雪が強くなってるよな?」


「そうね…ここには何回も来たことあるけど、ここまでのは初めてかな…」


カイはまた黙りやがってる。

仕方なく着いて行ってやるみたいな足取りだ。


「そういえば、魔物とも遭遇しなくなったよな?」


「そりゃそうだよ。こんなに寒い中で活動する魔物はこの辺りには居ないよ。」


「…なんつーのかな…この吹雪ってなーんか変な感じするんだよな…」


「変な感じ?」


「魔力ともちげぇんだけど…分かんね…」


オレにとって、魔力は紫のような蒼のような色のイメージをしている。

だけど、今感じている()()は、また違った変な感じだ。

なんとなく懐かしい気配がするっていうか…

なんか変な気分だ。


「…一つ気づいたんだけどさ、この吹雪って向きが回ってるのよ。」


「回ってる…?」


「うん。前から後ろとか、左から右、とかじゃなくて、私たちを中心にぐるぐる回って吹いてるの。これって、明らかにおかしくない?」


「なんだそりゃ。…道理で霧がかかったみたいな錯覚が起こるわけだよ…」


「ふん。今更気づいたのか?」


「もうしばらく黙ってろ!」


「……やっぱり、この吹雪は意図的な何か…」


「ん?アイシャ、なんか言った?」


「え?ああ…この吹雪は何者かが私たちを狙って出してるものじゃないかなと思って。」


誰がそんなことを!?

…まさか、秘宝を守る某英雄の防御機能的な!?


うおお!燃えてきた!もう寒くねぇ!


「だったらさ、さっさと張本人のとこに行ってみようぜ!」


「どうやって行くんだよ。」


「エ。そ、それは〜…あーなんか懐かしい気配がするあっちに行ってみよー」


「勘かよ…てかなんだ懐かしいって…」


いやでも、懐かしい気配がするのは事実なんだ。

やっぱキタン本山から漂ってる感じだ。

まあ行ってみりゃ分かる。うん。


――――――――――――


「カイ!そっちに二匹行ってるぞ!」


「うるさい!言われなくても分かってる!」


突然現れた猿みてぇな魔物。

対処に追われている。


「不気味だなおい。」


何とか終わったと思えば、次は鷹みてぇな奴まで。


空飛ぶ奴は当てづらいんだよ。

風魔法は制御がムズイんだから…


指先、凝縮、指定、発射。

面倒くさいな、初めの頃よりは短縮できたけど…

もっと短くできないか…?


何か方法は…


「ちょっとあなた!何ぼうっとしてるの!?」


『キィィィィ!!』


ぐっ!?

脇腹突っ込まれた…!

受け身を…


よし、落ち着け。

もう一度、風を…




…だあ仕方ねぇ!

ゴリ押しだ!


無数に魔力の剣を作り上げる。

そしてこいつらを…


ぶん投げる!


作っては投げ、作っては投げ───


飛びやすい様に槍みたいに鋭く細くして…

持ち方も変えて、肩ごと動かして、全身の力を持ち手に込めろ!


貫け!!


   ズパンッ!!


クリーンヒット、だな。


ふぅ…

これ造形変えれば弓とかも行けるか?


あ、そうだ。

魔力壁を丸くボールにして、中を空洞にして、いっぱいに炎を詰め込んで、投下して、壁を取り壊して起爆させれば爆弾に…!


「おいジオ、何思い詰めてんだ。また来てるぞ。」


「はあ?今度は何だよ?」


…氷?

意思を持って…?


動いてる!?

どういう原理だよ!


いや、まずは倒さねえと、か。


…ん?

普通に燃やせば倒せるんじゃ───


「私が行く。」


そうして飛び出すアイシャ。

既に手には魔法を準備済みらしい。


「はああ!!」


   ドガァァァン!!!


それは轟音を立てた。

炎魔法なんだろうが、燃えるというより、爆発したような感じだ。


うーん、氷が粉々だ。

どう動くか知りたかったんだけど…


まあ、いい。


「まだ来てるぞ!備えろ!」


カイが声をあげた。


「分かってる!」


このまま行くぞ!


――――――――――――


あれから結構経って、ちょうど見つけた休憩できそうなほこらに身を隠した。


オレはそこで、浮かんできた疑問をぶつける。


「なあ、アイシャ。さっきみたいなさ、どうやったら爆発が起こせるんだ?」


「え?あれは炎魔術の一種で…」


引っかかる言い方だった。


「ん?ちょっと待て。魔術ってなんだ?魔法と違うのか?」


「え?待って、あなたが待って。じょ、常識だよね?まさか、魔法と魔術の違いを知らないなんて言ってないよね?」


「いや、そう言ってるんだが…」


「じゃああなたが使ってた魔術は!?もしかして、あれは魔法なの!?」


「そ、そんな驚くことか?てか魔法と魔術の違いが分かんねぇからそうだとも言えないんだが…」


「…嘘でしょ……じゃ、じゃあ、教えるから!」


アイシャは、魔法とは、魔術とは何かを教えてくれた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



魔法。


使用者のイメージにより、変幻自在となる。

個人の力量に左右されるが、どれほどの魔力を使い、何を為すかも、圧倒的な自由度を誇る。


魔術。


どのような者であっても、一定で不変の効果がある。


これほどの量の魔力を込めて

このような操作をすれば

このような結果が得られますよ。


というような、

予め決められた"式"に則り行使されるものである。


魔法を使う者は、極めて珍しい。

とにかく、ものすごく稀なのだ。


それには、魔術の扱いやすさがまず挙げられる。


イメージに左右されることなく、

考えなしに魔力を注ぎ込み操作するだけで発動できてしまう。


しかもわざわざ魔法を使わなくても、

微小なものから強大なものまで、

"式"を作ってしまえば何回でも即座に再現可能だ。


それに、魔法を使うには条件が存在する。

"万能なる魔力"を保有していなければならないのだ。


魔力には、大きく開花方法が二種類ある。


一つ目は、他人の助けを得て開花する方法だ。

言い換えれば、"普遍的魔力"を獲得するための方法だ。


覚醒指導員という職業の者が、

魔力を持たない者の器を観測し、

最適な属性と適性を判断し、魔力を流し込む。


この過程で、人々は魔力を感知できる様になる。

この開花方法を使用する場合、基本的に一人一属性である。

流し込まれる魔力自体が一属性しか持たないからだ。


例えば、炎の属性を持つ者が魔力を流し込む場合、

当然流し込まれる魔力も炎の属性を持つ。

その為、流し込まれた者は炎の属性に目醒める。

そうなるとその者の魔力の器は炎の属性のみに染まり、

新しい属性の魔力を取り込んでも、

炎の属性に変換されるか拒絶反応を示す。


古代からこれが繰り返され、一属性が基本となった。


二つ目は、自力で開花する方法だ。

言い換えれば、"万能なる魔力"を獲得するための方法だ。


こちらは様々な場合で起こる。

死の淵に立った時や、悟りを開いた時などだ。

精神と深く結びつく開花方法だ。


しかし、こちらの方法は滅多に発生しない。


まず単純に、才能と努力が必要である。

死を目前にしてなお冷静でいて集中することが可能な精神力、

幼少期からの鍛錬による()()()()が必要となる。


自力で魔力が感知できる様になれば、

"万能なる魔力"の習得が完了したことになる。

至る所に漂う周辺空間の魔力を自身に集め、

思いのままに行使することができる。


万能なる魔力の由来は、まさしく万能だからだ。

開花方法の性質上、属性の制限がない。

創造力、発想力、知識量により出来る範囲が限られる短所もあるが、

全属性をイメージの限り操れるのだ。


それでも魔術が普及するのは、


魔術の手軽さ

魔術の使用条件の緩さ

普遍的魔力の母数の多さ

万能なる魔力の開花の難しさ

万能なる魔力の開花者の力量不足…


など、様々な理由がある。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「…長くなったけど、基本なこんなところ。で、それで!どうなの?やっぱり、それは魔法なの!?」


「待て待て、こんがらがってるから。」


…思い当たる節が多すぎるな、ミラ姉よ。

無茶な崖ダイブに始まり、

何故か座学やらされ、

実践形式が多すぎたのも、

全部"魔法"を習得するためってことか。


やっぱ、前々代大帝は違うな。

…転移ってどうやってイメージしてたんだ?


そう言えば、アイシャが魔術を使う時ってうっすら紋様っていうか陣っていうか…出てたな。

あれが"式"か。


「そうだな。確かに、オレが使ってんのは魔法かもな。」


「本当ね!?は、初めて会った!ね、ねぇ、その、もし良ければ魔法をもっと見せてくれない?」


「いきなり態度が変わりすぎだろ!てか、説明聞く限りその…万能なる魔力?がそこまで興奮されるものには思えねぇんだけど?」


「そんなことないよ!世の中の魔術師たちは確かに魔術を使うけど、魔法に憧れがあるんだよ!特に高位の魔術師ほど魔法みたいな"制限のなさ"を求めてるからね!魔法には無限の可能性があるの!」


「そう…か?じゃあさ、爆発の仕方教えてくれよ。」


「任せて!それは───」



「…また僕は空気なのか。」


「ちょっ、カイ、おまえも魔法使うだろ!?」


「やっぱりそうなの!?嘘みたい!魔法が使える人にいきなり二人も会えるなんて!じゃ、じゃあさ──」



「…空気の方がマシだ。」


――――――――――――


ちょっと、しんどい。

オレの魔法に興味を持ってくれるのは嬉しかった。

だけど、熱中しすぎだろ!

魔術師怖い。


「その…ごめんなさい。つい夢中になっちゃって…正直魔法を使う人に会うより先に寿命が来ると思ってたから…」


「ああ、気にしてないよ…大丈夫。」


うん、彼女の純粋な好奇心は踏みにじってはいけない。

顔には出すな。


「あ…本当に、ごめんね?」


見抜かれた…?


「おい…そろそろ行くぞ。」


「分かったからさ、一人でズカズカ行くのやめてくれ、カイ。」



そしてまた、向かう。

何故か懐かしい気配のする方へ。




一緒に行動して分かったんだが、アイシャは強かった。

負けるつもりはないけど、負けるかもしれん。

魔術は炎に関連するものしか使わないようだったけど、その練度がすげぇ高い。


剣に纏わせ、

敵に追尾させ、

一度に小さく大量に発生させ、

常に灯りとして浮遊させ、

吹雪を弾かせる。

時には広範囲を焼却して、道を強引に作る。


更に追加して剣だ。

ほとんどレイピアの様なショートソードを軽々振り回す。

斬撃も刺突も打撃も、

他にも払いや返しだったり、

まあ剣には疎いからよく分からんけど、オレの目には綺麗に映る。


それぞれ結構やるな…って感じだけど、組み合わさった時の多様さが凄いと思うんだ。

参考にさせてもらおう。


「ねぇ…本当に勘に頼る進み方で良いの?私もうそろそろ限界なんだけど。」


「うーん。ホントにあとちょっとな気がすんだよな〜。」


「"気がする"も"あとちょっと"も信用できないんだが。」


「まあまあ、二人とも。気楽にな。」


「オマエのせいだ。」

「あなたのせいだから。」


中々どうして、息が揃ってんな…


「てかさ、"あなた"ってなんだよ。ジオって呼んでくれ。」


「あ、話逸らした。……でも、そう…かな。じゃあ…ジオ。」


彼女は、頬よりも耳が先に赤くなるタイプらしい。

おいおい、からかいたくなるな。


「そんな照れんなよ。」


「別に照れてない!」


「…何なんだオマエら。見せつけてんのか。」


「あなたは黙ってて。」


「ハッ!おまえは名前で呼ばないってよ!」


「…。」


あいつ目つき怖っ!!

オレ後で殺されるかも。


「うおっ!!」


なぜか膝がガクッとなった。


…と思えば滑り落ちてる!?


なんだこれ!


「ジオ!大丈夫?」


「二人とも!オレは大丈夫だ!!それよりなんだこれは!!」


一面が白いから何が何だか分かからん。


「多分クレーターだと思う!雪で分からなかったけど、ここら辺にはすごく大きい大穴があるの!」


なるほど、オレはそれに落ちたのか。

罠じゃないんだな。

安心したようなつまらないような。


……ちょっと待て。

この穴…下に何かないか…?


この()()()()感覚も変だよな…


「おいジオ!何してんだ?」


「…悪い、今上がる!」


ま、気にせんでも良いか。


「あービビったー」


「気をつけろよ。」


「ごめんってカイ。次はしねぇよ。」


ちょっとしたハプニングであった。



――――――――――――



…おっと。

いよいよ近くなってきたらしい。


「急に強くなってやがる…!」


思わず声を漏らす。


1m先の地面も、よく見えない程に吹いている。

ここが目的地だって一瞬で分かるくらいだ。


オレらの目線は、その中心にある…いや、()()、不気味な奴に集中していた。


「ねぇ、ジオ。あの大きい影は…」


…何だ?


一歩、一歩、進んでいく。


何本も逆立った角が見え、

光を乱反射させる鱗が見え、

身の毛もよだつ翼が見え、

虚空を切り裂く尾が見え、

そして…

全貌が形をとり終わる。


…成程、最悪な相手だな。

比較的小柄ではあるんだろうが…


「…チッ、ドラゴンかよ…」


カイが呟く。

しかも…


「普通、じゃないね…氷が体全体に纏わりついてるし、理性がない様に見えるかな。でも…違和感があるな…」


何だよ。

何でこいつから…


この()()()()を感じるんだ!


とにかく普通じゃない。

仕方ない。これは、オレだけじゃ勝てないな…


"自分と拮抗した実力で、かつ危険の少ない相手に戦いを挑め。"


そうまとめたのはカイだったか?

これ、ちょっと違うな。

大帝になるなら、もはや危険ってのは付きものだな。


ミラ姉自身も言っていたから…

今は許してください。



よし…未だに連携のれの字も知らない三人だが…

やるだけやってみるか。


「おまえら…合わせるって出来るか?」


「僕がオマエに?オマエが僕にだろ。」


「私は一人の方が気が楽なんだけど…」


そうかよ。

やっぱ連携は無しだ。


…いや連携しないと無理だって。



『グオオオオオオォォ!!!』



どいつもこいつも…

デケェ奴はうるせぇな!


小氷竜、討伐開始だ!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ