第九話 連動
まずは…
観察しよう。
洞察力、
実践あるのみ。
全長は…
15〜20mってとこか?
あの女王アリに出会う前ならビビって腰引けてたな。
あの巨体から繰り出される攻撃のリーチは?
どんな攻撃をしてくる?
とりあえず飛ぶだろ?
滑空して質量任せの押し潰しもくるか?
今仕掛けてきてる爪の引っ掻きも厄介だな…
当たったら即死だ。
しっかり避けろ…集中しろ…
尻尾にも警戒しよう。
背後を取ったときは尚更だ。
…そうだ、ここにはオレ一人じゃない。
二人の動きも視野に入れてみよう。
カイ…
物理でゴリ押しか?
魔法使わねぇな、あいつ。
…いや、よーく魔力を見ると炎を使ってんのか?
よく見えねぇな…
アイシャ…
カイの動きも同時に観察しているな。
…オレにもさっさと行動しろって目線を送ってきている。
物理では歯が立たないと悟ったか、魔術による攻撃が中心的だな。
アイシャの剣でならどうかと思ったが…硬いんだな、弾くらしい。
それなら、柔らかい部分への攻撃を…
なるほど。
こいつは、関節、翼、目ん玉とか鼻、全部氷がある。
鱗の代わりみたいな感じだな。
一際大きい氷が胸元にあるな。
核みてぇな球体らしき何か。
ってか、氷のが鱗より強度高くないか?
どういうことだよ。
まるで別生物が外付けで氷生やしたみたいな…
燃やせるか?
いや、アイシャが既にやってる。
殴っても弾かれる、燃やせない。
オレの手札で出来ることがあるのか?
…しゃあない、やるだけやってやる。
こういうのは最中にアイデアが浮かぶもんだ。
怖い。
死ぬかもしれない。
ここが墓場かもしれない。
でも、楽しい。
成長が実感できるのが、何よりも幸せだ。
…行くか。
新しく覚えたぜ…
魔術!
仕組みを大して理解していなくても、
丸暗記で使えて、ぱぱっと式を作れることこそ最大のメリット!
構成、展開、注入、出力。
これしかいらない。
あとは…
「カイ!」
「…チッ、うるさい。」
察してくれたらしいな!
流石だ。
カイは尻尾をがっしり掴んで、持ち前の馬鹿力で地面に固定する。
「アンタもさっさとやれ。」
「いつから私に命令出来るようになったわけ?」
カイはアイシャも巻き込んだ。
彼女は攻撃を刺突に変え、足首に刺した。
剣に炎を纏わせ、内側から燃やした。
竜が完全に固定された!
この大きな隙を、見逃さない。
このために我流の式を用意しといたんだからな!
氷竜は、ブレスの構えをする。
だがな、それは読めてんだよ。
体を固定されたあとなら…
それしか使えねぇよな!?
おまえのそれか、オレの爆撃か…
勝負しようぜ。
『グオオオオオオオ!!!』
"爆破"!!
「ぐぐっ…おおお!!」
途絶えさせるな…!
絶えず、一定に、魔力を注ぎ続けろ!!
前に前に、指向性を持たせろ!
力を分散させるな…
もっとだ!!
打ち勝て!かき消せ!
そうすれば…
口ん中燃やせるからなぁ!!
『ギャアアァアァァ!!』
内側は何にも守られてねぇだろ?
こんな状態じゃ、またブレスしたら自爆みたいなもんだよなあ?
「ブレスは封じた!あともう少しだ!」
「いいねジオ!畳み掛けるよ!」
「…仕方ない。」
…やべぇ、成功だ!
嬉しいな!
前方向に力を集中させるように改造した式!
代償として消費魔力が倍増したけど仕方ない。
まだ魔力自体は七割残ってるからな。
魔法で爆発がイメージできたら両方とも取れるんだろうけど…
でも確かに、魔術やり易すぎるな。
何かを特化させるには何かを犠牲しないといけないらしいけど、それでもこんなに改変し放題だなんて。
元の式覚えとけばそこからいくらでも自分に合った形に式を変えられる。
魔法の方が自由な理由もわかった。
変更には上限があるんだな。
その点魔法はイメージ次第。
ああ、めっちゃ面白え!!
「おいジオ、何耽ってんだ。ラストスパートだぞ。」
「悪い、もう大丈夫だ。」
氷竜は、口を焼かれたことで単純な物理攻撃しかできない。
相変わらず表面硬えけど、オレだって用意してる。
魔力剣を作り出す。
ここですこーし変えてみる。
炎の魔力で剣を作り出すんだ。
燃焼の原理はもう教わったからバッチリだ。
炎剣の完成だ。
よーし、風を纏わせよう。
熱風になれ。
オレが今までやってきたことは全部やろう。
アイシャを見て、刺突が有効だと分かった。
…あいつすげぇな。
ずっとオレらに攻撃が来ないように誘導してる。
やりやすい。大感謝だ。
続きだ。
女王の目ん玉撃ち抜いた時みてぇに、
一直線に風を飛ばすイメージで、そこに剣撃を追加!
炎剣と風は相乗効果で、絶大な威力になる!
一気に心臓狙っちまえ!
「カイ!アイシャ!」
「大丈夫!視界は潰しに行くわ!」
「翼はズタズタにする。」
順調だ。
アイシャは足を刺した刺突を使ってる。
…なるほど、カイは拳に炎を纏わせたらしい。
それでギリギリ破壊できるようになったんだな。
そしてオレが狙うのは、
こいつの心臓部分の氷の塊!!
見るからに頑丈そうで弱点って
言ってるようなもんだろ!
動きは封じてくれた!
炎剣と風のコンボは完成した!
全てが連動してるんだ!
良いぞ、今すげぇ楽しい!
決めろ!
狙え!
ブッ刺せ!
貫け!
天高く穿って散れ!
だがその時───
『グオオオオォォオ!!!!』
なっ!弾かれ…!?
「「ジオ!!」」
…は?体動かねぇ…
待てよ…何が起こって───
◇◇◇
……一瞬だった。
ジオが心臓を貫いたと思った瞬間、
この竜は…氷を生成して、辺りを埋め尽くした。
ジオはどうなったの?
もう一人は?
私は剣が埋まって取れなくなった。
かなり不味いかも…
「ジオ!大丈夫?…それとあなたも。」
「…僕は大丈夫だ。幸い氷は前方だけだからな。僕らは竜の横いたから無事だったんだろ。」
「そうね…ジオは?」
「……これだ。」
彼は不可解な場所に指をさしていた。
そして何?
「これ」呼びって。
…え?ジオ?
氷漬けにされているジオの姿がそこには有った。
「マズいな。早く溶かさないと死ぬぞ。」
「ちょっと待って!何これ!一体どうす───」
『グオオオ!!』
「うわっ!!」
とっさに、氷漬けのジオを抱えて、後方に飛ぶ。
急に来ないでよ!
「おいオマエ!撤退するぞ!」
彼は盾になるかのように竜の攻撃を引きつける。
意外と気が利くのね…
「待って!今考えるから…」
一旦逃げる…?
どうやって溶かすの…?
でも相手も手負い…
倒し切れる…?
とりあえず…壊せるか試してみようかな。
「セアッ!」
〜〜いったぁ……!
これは元から剣があったとしても無理そう…
それとも炎で…
"火球"!
…やっぱりダメかぁ…
彼はこうしている間にもボロボロになっていってる。
…仕方ない、今逃げても変わらない。
出来るかな。
彼と二人きりで戦ったことなんてないけど…
やらなきゃ 。
「ごめん、お待たせ。早めに倒すから協力して。」
彼は協力してくれるだろうって、期待してたけど…
「…ダメだ。撤退を選べ。」.
そう言われるなんて、思ってなかった。
「はあ?」
「この状況が見えないのか?どう考えても不利だろ。いったん冷静になって解決策を考えるんだ。」
……確かに、こうしている間にも、竜は再生していってる。
『グオオオオオオ!』
「ほら来てるぞ!早くしろ!」
何なの…
…仕方ないけど、今は急がないと、ダメよね。
逃げないと。
「絶対、討伐する。」
私は、そう口に出ていたのには気づいていなかった。
――――――――――――
「……。」
「……。」
なにこれ…
すっごく居心地悪いんだけど…
前には彼がいて、私の左には凍ったジオ。
と、とりあえず、何か…
「…ジオはどうするの?あなたが殴ってもヒビすらつかなかったんでしょ?」
「…そうだな。」
「えっとさ…作戦ってどうするの?」
「知らん。」
「はぁ?あなたが作戦たてようって言って撤退を提案したんでしょ?」
「そうだな。」
……何なのこの人。
超ムカつくんだけど。
「何その態度!私が進めようとしてるじゃん!何が不満なわけ!?」
「…ああ。」
「あんた…!もう知らないからね!」
「…勝手にしろ。」
そうですか!勝手にさせていただきます!
ていうか、なんで私もむきになってる訳?
大体この二人はさっき会ったばかりの……
………。
私は、彼がジオに向けている視線に気づいた。
その表情からも、悲しさが嫌というほど溢れていることが分かる。
…そっか。
ジオを1番に心配しているのは…私じゃないんだ。
なるほどね。
彼について…ちょっと分かったかも。
そう思うと、途端に冷静になれた。
「……じゃあ、今から独り言言うから。」
これは、あくまで独り言だから。
――――――――――――
「いい?作戦の通りだからね?」
「ああ。分かってる。」
「さっさと倒して、ジオを取り返すわよ!」
『グオオオォォォオオ!!!』
さあ、リベンジの始まりよ!!
ちょっと嬉しいことがあった。




