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エルシナスヴァリア〜最強の頂へ〜  作者: 一木
第二章 遥かなる海を渡って
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第十八話 行くぞ男ども


潮風に吹かれて、若干肌が荒れる。

今までは水魔法を使って保湿を最大限に頑張ってたけど、流石に庇いきれない。


めっちゃヒリヒリする。

いや、オレとカイは良いだろうが、

女性陣にとっては絶望だろうな。


「私もう、海が嫌いになってきたかも……」


アイシャは特にそうだ。

あんまり言ったらノンデリだとか言われそうだけど、

少し乾燥肌になっている…気がする。


カイラはと言うと…


「その内慣れるって。今だけは我慢しよ〜。」


そう。

幼い頃から海賊してた彼女にとって、この海の風は慣れっこだったらしい。


乾燥の一つも起こさない強靭な肌を持ち合わせたんだとか。


「カイラは良いよね、そんな肌が強くて…」


「あたしだって最初は一年中肌荒れしてたことだってあるんだからさ!」


アイシャとも仲良くなったみたいだ。

まあ同性同士、やっぱり壁は小さいんだろ。


ちなみにカイは……


「……うっ…あ……」


完璧に船酔いだ。

意外な弱点だね〜。


「カイさん…だいじょぶかな…船酔い……」


カイラは遠目から心配してるみたいだな。


何でカイラと一緒に居るのかって言ったら、

そりゃ答えは簡単だ。


この女、カイに惚れている。

だから離れようとしないんだ。


かれこれ都市に着いて三日間が経った。


もう一緒にいる必要はないから別れようとしたんだが、

もはやストーカーと化していたから、

いっそ近くに置いといた方が安全だって結論になった。


カイはまだ何も知らない。

だからカイラと一緒に居ることが露骨に気に入ってい。


カイラもヘタレ気味だ。

オレとアイシャにはすぐフランクになったくせに、

カイにはチラチラ見るだけでちっとも話さない。


カイはそれについても余計に悪く感じてるらしいから悪循環だ。

はたしてその恋が成就することはあるんだろうか。


初会合でいきなり襲ってきたあの態度はどこに行ったんだか。



「おぅしお前ら!!今日はここで獲るぞ!!」


「「「へい親方!!」」」



今話していたのは、

その三日間のうちで出会った、

オレらの新たな稼ぎ場所の上司?の人だ。


漁業の下っ端としてオレらを雇ってくれたんだ。

ガチムチゴリラの筋肉マッチョで、デカい。

そんで、顎のちょび髭がユニークな人だ。

服装と雰囲気だけ見れば海賊の船長してそうなんだけどな。


海賊であるカイラまで雇ってくれるなんて、

すげぇデカい器だよなぁ。憧れる。


普段は体格に合わない赤のニット帽をつけている。

亡くなった祖母の形見だと言う。


周囲の従業員は生え際の後退を隠すためなんでしょう?とかイジってる。

親方は愛のある冗談だと知った上で、

ノリに乗っかってくれる素敵な人だ。


従業員もそれを分かっているから、

職場全体が和んでいる。


いやぁ、なんて恵まれた働き場所なんだか!!



さて、オレらは今、そこそこにデカい漁船の上にいる。


ちょうど漁の最中なんだ。


今日は超大物を釣りに行くらしいぜ。

オレらも含めた船員五十人体制だ。


「親方!!急にシケって来ましたぜ!!ヤツが近づいてます!!」


船員の一人が叫ぶ。


「お前ら良いな!帆を目一杯張れ!!」


「「「了解ッ!!!!」」」



おっ!!

尾ひれが顔出したぞ?


荒々しい形してんなぁ!

まるでキタン山脈の山影に沿ってるみたいだ!


てか魚影デッカ!!!

この船よりデカくね?


仕留めたとしてどう港まで運ぶんだ?


「今だ!発射ァ!!」


親方の合図で、

漁船の両側面に取り付けられている、

これまたデカいハープーンガンが二本飛ばされる。


「おぅし、引っ張られるなよ!!ここからはパワー対決だ!!」


二本ともブッ刺さったぞ!


大物くんは暴れ回ってんな!

だけど親方と皆んなの敵じゃないみたいだぜ?


巻き上げ機(ウィンチ)ども!右巻いてけ!!!」


十数人が一斉に縄を引っ張る。

左側のハープーンガン担当との連携すごいな。


……ん?

オレら、いる意味あるか?


しゃあねぇ、だったら聞いてみるか!


「親方ーー!!オレは何をすればいぃーー??」


「おう新入り!!お前ら戦えるんだってな!!()()()は頼むぜ!!」


トドメ?

…あ、マジか!


大役じゃねぇか!!

良いねぇ、滾ってくるぜ!


「りょーかいしやした!!」


三人とも、打ち合わせをする。


特にアイシャはトドメとして重要だ。



「分かった、任せて!」

「あたしに任せな!」



カイは───


「……うっ…オロロロロ………クソ……」


あいつはほっとこ。



「うおおぉぉ!?今日は一際力つえぇな!!」


いつもよりは苦戦してるらしいけどさ!

皆んな顔ガチだし、なんか楽しそうで全然負ける気しないな!


「親方!左のハープーン抜けた!」


「見張りの野郎ども!しっかり動き見とけ!銛打ち(ハープナー)、急いでもう一発用意しろ!見張りに合図は任したぞ!帆走班(セーラーズ)!九秒後に南に旋回、追い風受けろ!全開だ!!」


五十人が慌ただしく走り回ってる。

なんせ相手にしてるのは大物!だからな!


格闘はまだ続きそうだ!


くぅぅう!

オレも早くやってみたい!


待ちきれん、船首で待とう!



そうして、体感で一分が経ったに、合図は来た。


「よぉしやったれ新入りども!ヤツの頭に一発かませ!!」


オレらの出番だな!


「行くよっ!!」


オレとカイラが、まず尾ひれに飛びつく。

そうしたら、今度はまた新しいイメージだ。


薄く、丸く、細長く伸ばした魔力障壁で、ロープ状にする。


そうしたら、尾ひれに巻きつける。

片方は、カイラだ。


「やっぱり海は気持ちいいねぇ!!」


オレは尾ひれの部分で縄を持ち、カイラが振り落とされないようにしっかりと握る。


カイラが頭に近付くんだ。

この魚体の上ではカイラの方が動けると思ったんだ。


これキッツイなぁ!!

まず全身に凄まじい勢いの波が当たる!

縄状に魔力を維持しないといけない!!

そんでそれを持ち続けて耐えないといけない!!!


こんなに楽しいことはないだろ!!


「まずは〜、目、潰れちゃいな!!」


両腰の短剣を目にぶっ刺した。


うおぉ、まあまあ恐ろしい。



って、そりゃ暴れ出すよな!!


「うわぁぁあ!!ジオォ〜!!離さないで〜!」


「こっちもギリギリだよ!!」


振り落とされる!

力強いなこいつ!!


「とりあえず戻ブハッ!!…しょっぺぇ!じゃなくて!戻るぞ船に!」


波えげつねぇ!

こんな状況で行けるか?


いや、やる!

耐えろオレの右腕!


両手掴みから、左手を空ける。


「誰か!!掴んでくれ!」


右手でカイラの縄を掴み、

左手で新しく縄を作って、

甲板に向かって投げる。


「引っ張るぞ!!」


船員の誰かが引っ張ってくれたみたいだ。





「うはぁ!死ぬかと思った〜!」


「いやぁ、楽しかったなぁ!よし、オレらの役目は果たしたぞ!」


目を潰した理由は単純。


今釣ろうとしているこいつは、目が良い種族らしい。

そりゃもう、標的探しも目に全振りしてるくらいだ。


そんなやつが視界を失えば、

残るのは混乱と衝撃のみ!!


冷静さを失えば、それを逃す親方たちじゃない!


「良くやった新入り!今日は早めに終わりそうだ!さぁお前ら!!今の縄を引っ張れえぇぇ!!!!」


右手の縄は、依然としてあいつの尾ひれについている。

しかも遠隔操作で既に身体中に巻きつけてやった。


ゴリラが五十人揃えば、いくらあいつといえど、身動きは取れなくなるだろうよ!!


「ぐおぉぉぉぉ!!耐えろぉぉぉ!!!」


さぁ〜て、皆んな。

水中で身動きが取れなくなった魚が一匹。

この後あいつはどうすると思う?



簡単だ。


上に飛ぶ。


潜れない。

左右にもいけない。


だったら、動けるのは引っ張られる方向に、

しかないだろ?


自由を求める魚は、自ら死地に向かって飛び出すことになる。


冷静さを失ってるからな。

それが危険だと、気づきもしない。


次はアイシャだ。


事前に魔法陣を構築してもらっていたんだ。

かなりデカい規模の炎。


結構構築に時間かかるからな。

序盤から準備してもらってたんだぜ?


「今だ、アイシャ!!!」


水面から大きく飛び上がり、

体の全てが空気に触れたあいつを、

もう逃しはしない!!!



「喰らいなさいッ!!!」



"火槍(プルグスピア)"




うひょ〜、丸焦げだよ。


水面に全部出たことで分かったけど、多分女王よりデケェぞこいつ。


それなのに一撃で丸焦げって。

やっぱ炎じゃアイシャに敵わんな。


…あれってどういう式を組み立てたんだろうな。


代償は何だ?

多分構築時間はその一つだよな。

あとは射程…も考えられるか?

避けられたら生まれる隙をカバーしきれないのもその一つか?


オレもやってみてぇな……


「良くやった!!新入り三人!!今日は大物だなあオイ!!船に入らねぇな!ハープーンで引っ張って行くか!よぉしお前ら!!帰ったら飲むぞ!!」


「「「ウオオオォオオ!!!!」」」


親方にとってはなんてことない、漁の一日。


でもオレにとっては、すげぇ楽しかった!!

まあ流石に、これ毎回の漁でやるのはおぞましいけどな。



こうして、銀色に輝く巨大な晩飯を引きずって、オレらは凱旋を果たすのであった。



















「クソッ……オロロロロ…………」











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