第十六話 何処だここ
「おぼぶっ!!!!!」
顔面から突っ込む。
どこにって?
地面だ。
しかも砂。
うえええ……
砂はいった……
……って、うおおおおおお!!!!!
これが海、かあ!!
広い!
綺麗!
独特なにおい!!
当たり前だけど、初めて見たな!!
「…は?何ここ?一人も周りにいないじゃない!」
アイシャも、興奮していた。
まあその理由は別だな、絶対。
「どうしたよ?そんなに驚くことがあったか?」
「驚きでいっぱいだよ!普通はこんな人気もなにもないところにワープしないよ!惑星間のワープなら尚更!ジオだって、今までのワープでこんな辺境に出たことあった?」
……いや、ない!
「確かに!なんで今回だけこうなったんだ?」
こんなだだっ広い海岸に転移したんだ。
マジで周りは何もない。
かたや水平線、
かたや地平線だ。
オレはこれで計四回の惑星間のワープを行ったわけだが、
いずれもちゃんとした施設というか、
オーケンだったら町中の専用の建物に、
闘技場だったら何か所もある出入り口のいずれかに。
それでくれば、今回もシーライズの都市の中のどっかにワープするはず。
で、今回はなぜか、こんな文明のぶの字もない大海原が全開に広がるビーチだ。
なぜこんなことに?
……いや、原因は多分……
「無理やり通ってきたからだな。」
カイが言った。
そうだ。
身分証明書の提示もなく無理やりワープしようとしたもんだから、
多分あの場にいた役員のだれかがゲートを切ろうとしたとかかな。
そのタイミングで飛び込んだからバグったんだろう。
これ結構危なかったんじゃないか?
下手したら上半身シーライズ、
下半身オーケ───
やめとくか。
真っ二つの痛みはクレイドに身をもって教わっちまった。
ほんとしくったな。
どこでなくしたんだ、身分証。
でもこうなったら都市を探してみるしかない。
星のどこにワープしちまったかは知らねぇが、岸をずっと歩けばいつか着くだろ。
「しゃあない、とりあえず、都市を目指すか。」
「やれやれ…本当にあなたって…」
そこまで出てアイシャは、言葉をのんだらしい。
気になる。
まあいい。
それよりも、だ。
…すっげぇ綺麗だな、海。
エメラルドグリーンが輝いてるよ。
こんな海を見ちまったら、入りたくなるのがオレだ!
ブーツ脱いで、
ひざ下をまくって、
ついに一歩目を踏みだし冷た!!!!!
いや、滅茶苦茶冷たい!!!!
これは罠か!?
手ですくったら、もう見えない。
透明度たけ~!
故郷のあの泉の水とどっちが綺麗かなぁ?
「はしゃいじゃって…最初に都市を目指そうって言ったのはジオでしょ?ねぇ、カイ。」
「全くだ。アイツの相手は疲れる。」
「聞こえてんぞおまえら。分かったよ、上がればいいんだろ。」
ちぇ、もっと楽しみたかったのに。
「………すまん、お待たせしました。じゃ、行くか。海岸沿いに行けばいけるよな?」
いやぁ~シーライズかぁ。どんな都市かなあ?
海産物も色々食べたいな!
絶景も見て回りたい!
あとは新しい師匠探しだな。
ミラ姉くらい陽気な人だったらいいな!
着いたら何処に泊まろうかな。
オーケンは至って普通の宿場だったから、ちょーっと奮発するのもアリか?
てか今いくら持ってんだ?
……。
………。
……………。
…ん?
あ、こっちに入ってるか。
……アレ?
ああ、なんだ、びっくりした。
こっちかあ!!
…………ほぇ???
え、あ、え??
ぜ、ぜろ…ぜろぉ~?
んなわけないだろ?
オーケンでどんだけ稼いだと……思って……
マジ…?
え、マジで??
ちょ、ちょっと待て。
二人はどうだ?
「なあ、二人とも。今……いくら持ってる?」
疑問が浮かぶ顔してる。
そして、二人とも直ぐに真実を悟った。
「ああ…オレら……無一文だ……」
「う…嘘でしょ……た、確かに私、秘宝売ってないし、借金ちょっと返済したけど…贅沢はしてなかったと思うんだけど……」
オレもだ。
服を新調したせいか?
とは言っても、
革のベルトにひざ下までのブーツ、
白い半袖Tシャツに、灰色の少しスリムな長ズボン買っただけだぜ?
あとは腰につけるバッグとか、
錆びたロングソードを納める肩掛けの鞘とか、そんくらいなんだが……
そもそも服代はミラ姉に貰ったし、オレはそこまで浪費する性格じゃないはず。
……待てよ。
てことは………
「「カイ?」」
アイシャも同じタイミングで結論に達したらしい。
さあて。
弁解は聞こうか。
「………あの程度で無くなる金額が悪い…」
「「おまえかああぁぁぁ!!!!」」
やっぱりな!!
道理で金にがめついと思ったよ!!
キタンの報酬だってそうだ!!
こいつが八割持ってったと思ったら、翌日には消されてたんだぜ!?!?
「おまえなぁ!!なんでアイシャの金まで勝手に使い込んでんだ!?」
「''悪い、金貸してくれ、絶対返す。''らしくもなく頼みごとしてきたと思って貸してあげたら、まさか全部浪費するなんて!!」
「……稼げばいいんだろ、とっとと行くぞ。」
「「まずは謝れえぇぇぇ!!!」」
本当にやべえやつだなあいつ!!
「あ!逃げた!追うよ、ジオ!」
「ぜってぇ土下座さしたるあの野郎!!!」
百倍にして金返してもらおうじゃねぇか!
――――――――――――
あれから三日経過したところの夜。
「やべえな…滅茶苦茶歩いてるのに、全然着く気配ねぇぞ。」
都市のとの字もない。
建物が微塵もない。一面海だ。
もはやサバイバルに慣れてきたレベルだ。
「今日はもう休憩にしない?私採ってくるよ。」
「おう、ありがとな。」
アイシャは食事を採る担当、
オレは夜の見回りとか監視をする担当、
カイはその場その場の簡易的な建築担当だ。
たまに襲ってくる魔物は全員で少しずつ対処する。
海から飛び出してくる魚の魔物もいれば、
景観が変わり森の姿をするようになった内陸から、獣が襲ってくることもある。
基本的に襲ってくる奴らしか殺さないようにしている。
そいつらだけで十分食事がとれるっていうのもあるけど。
「シーライズ…早く行きてぇな……」
オーケンは''町''だけど、
シーライズは''都市''だ。
規模はケタ違いなんだろう。
だから楽しみだ。
てかさ、この錆びた剣。
今んとこ何の役にも立ってない!!
切れ味最悪だし、無駄に重いし!
はっきり言って、お荷物だ。
クレイドには申し訳ないが、なんでこんな剣を託してきたのか意味不明だ。
そのうちって、いつだよ!本当に。
「採ってきたよ。ちょうど良いキノコが生えてたんだ。」
アイシャが戻ってくる。
美味しそうな、茶色のキノコだ。
「こっちは魚が飛びついてきたから捕まえたぜ。」
カイのほうに目をやると、せっせこテント立ててる。
ぷぷ、可愛いなあいつ。
まあ表情はずっと不機嫌だけど。
慣れない建築?を不格好にやるのは、あいつにとっては恥だろうな。
ま、ここの植物は葉がデカいから数枚結ぶだけでテントっぽくなる。
だからまあ、マシな方だろ。
「いただきます!」
アイシャが元気に言う。
この時間は幸せだもんな。
水分は、このために覚えた水魔法で余裕で補充できる。
空気中の水分を集めて、周りの空気ごと圧縮することで水滴ができたから、
それを増幅させると晴れて水魔法の完成だ。
海の水はしょっぱくてたまんなかったからな。
飲み水はうれしい。
「……おい、できたぞ。」
初日より完成度が上がったテントが立っていた。
「お疲れ様、カイ。食事は用意してるからさ。」
二人は、岩を地面に置いただけのテーブルで飯を食う。
火は魔法があるから焚火とかいらないのが便利だ。
二人が食べたり休憩したりしている時間を使って、
オレは睡眠をとる。
二人が食事を取り終わって、いよいよ寝るとなったら、
起こされる。
オレは見張りだ。
心配されたよ。
見張りは普通交代でやるものだって。
でもオレは一人でやってみたかった。
こういうの楽しそうだもん。
もしかしたら船が通るかもしれないし、
それとも魔獣が襲ってくるかもしれない。
それがいいんだろ?
ただまあ、睡眠はできるだけとるようにしてるよ。
食事はいつも見張りの時間に取ってるから問題なし。
飲みたいときに水魔法も使えるからな。
眠いっちゃ眠いが、だからどうしたん?って感じ。
さぁて、今日も見張り、頑張りますか!!
――――――――――――
「あれって……」
アイシャが何かを指さした。
オレもカイも、視線を向ける。
……船?
船だ。
滅茶苦茶小さい、人が二、三人しか乗れないような、小さな木造の船。
船にはいくつかの木箱が乗っている。
そこには、人が、一人だけ乗っている。
…女の人だ。
右舷の舷縁に腕をかけている。ちょっと素行が悪そうだな。
なんか死んだ目をしている気がする。
あ、目が合った。
…って、おいおいおい!!
目に輝かしい生気が宿ったと思ったら、
めっちゃこっちに向かって漕いできてんだけど!?!?
速い!
その人は、上陸とともにスタイリッシュに飛びかかってきた!
「ヘイヘイヘイ!!!そこの三人組!会ったばかりだけど、ちょっと寝てもらうよ!!」
短剣?ナイフ?
めっちゃ殺す気じゃん!
構えろ!
「遅いんじゃない!?」
は?動き速───
あれ、やべ、意識が………
最後に視界に映ったのは、
その人の、白く輝く髪だった。




