第十五話 さあ、次へ。
やたらと広い場所に来た。
地平線の彼方まで、広がる薄緑の大地。
こんな広い平野は、見たことがない。
そしてそこに、ポツンと一本だけ木が生えている。
「ここは元々森林だったんだよ。広い場所が欲しくて全部別の場所に植え替えたんだよね。あの木は休憩スペース用だよ。」
「こんな広い場所……そんなにえげつない攻撃するつもりなんすか……?」
「なんだよ〜その反応は〜ちょっとした物だよ。私が意味も無く耐えろなんて言う訳ないでしょ〜?」
「ぐっ…」
確かにそうだ。
今までのことも全部、ちゃんとためになってんだから。
「そんな身構えないでって。これはジオくんだけに課した特別な授業だと思ってさ。何やらキタンで面白いことを経験してきたらしいじゃん?」
それってつまりは……
「クレイドにボコされたから……ってことか??」
「誰?クレイドって。」
「あ、いや……ちょっと知り合った人ってだけです。」
「ふーん。ま、いいや。じゃ、早速始めちゃおう。一発耐えたら合格ね。私が攻撃に使うのはただの火種だよ。」
右手の人差し指を掲げて、そう言ってきた。
火種…?
「これだよ。この火。」
……小さいな。
蝋燭みたいだ。
「これを耐えろって、簡単なんじゃ…?」
「あはは!言うねぇ。それはどうかな?ほら、身構えた方がいいよ?」
「……。」
身構えるって、どうやって?
そんな小さい火に対して?
「じゃ、始め。魔力を注いでいくよ!」
指先に魔力が集まるのが見えた。
密度を上げるのか……?
いやでも、そんなちっさい火で……
………。
そんな……小さい………火……?
隣の木を追い抜かして…
後ろの景色を塞いで……
青い空を、真っ赤に染め上げて………
ちょっと待て…
デカ……過ぎる………
隕石……?
いや、もはや……炎の恒星………
は?もう、どこ見渡しても…火以外にない……
熱い……!!!
比喩とかじゃなくて、これ落とされたら……
この星がぶっ壊れる……!
「ちゃーんと構えてね。いくよ?」
やっべ…
構えろ…!
こうなりゃ……
やるっきゃない!!
自分を囲え……
障壁で!!
「それじゃあ見せてあげよう!私の、無限に等しい魔力の一端を!」
ひょいっと、いとも簡単に動かしてきた。
この恒星をだぜ??
元はちっこい火種だぜ??
冗談よせって!!!!
来た!!
もう目の前!
燃え盛る恒星が、
鼓膜がはじけ飛ぶ音を出しながら燃え上がっている!!
巨大な熱気にあてられる!
「ぐあああああぁぁぁ!!!」
やっぱりミラ姉はイカれてる!!!
結局障壁も意味をなしてねぇんだよ!!
クレイドとおんなじ人種だクソ!!!
死にかけるたびにそんなホイホイ成長するなんて思ってんのか!?!?!
あああああぁぁぁぁ痛ぇ!!!!
全身大やけどだよ畜生!!!!
数秒もせずに焼死しちまう!!
何とか、何とか落ち着いて解決策を………!!!
無理に決まってんだろ!!
こんな爆炎の中で正気でいられるかってんだ!!!
まずい、体が崩れる……!!
いよいよ死ぬ!!
何とか生きろ!!
水でもなんでも!!!
そうだ水だ!!!
水のイメージを!
がああああいてえええ!!!!
耐えろ、耐えろ、耐えろ!耐えろ!!耐えろ!!!
液体のイメージを……!!
はっきりと!!
こうだ!!!
ジュッ!!
くそったれ、蒸発が早すぎんだよ……!
やべ…意識が……!
最後に…!
もう全部使い果たせ…!!
魔力全部!!
水で結界張れ!!
生き残れ!!!!!!!
「うおおおおおぉぉぉぉぉお!!!!」
…死ぬ………
やっちまっ……た…………
「は~~いここまで!火はささっと消してしまいましょう!……って、あれ?やりすぎちゃった…?」
「うぁ……っぐ…………ぁ……」
「よく耐えたね!?ごめん!今すぐ回復かけるから!」
クレイドもミラ姉も……
オレを何だと思ってるんだ………
――――――――――――
目が覚めた。
何故か、目の前にミラ姉の顔。
後光がすごい。
何だ、今のオレの姿勢。
やけに地面が柔らかいな。
……って、おい、膝枕じゃねぇか。
「ジオくん…やっと起きた。」
心配そうながらも口角を上げている。
「ミラ姉……流石にやり過ぎだとは思わなかったんですか…?」
そう言いながら、オレは上体を起こして抜け出す。
「ご、ごめんね?ただちょっと気になっちゃってさ〜…」
まあ、それは置いといて。
で、だ。
なぁ~~んでまた、オレはあんな超次元の技を耐えることができたのだろうか。
クレイドの最後の一撃もそうだし、
今回の馬鹿火力もそう。
オレじゃ到底無理なはずなんだけどな。
意志の力……ね…
「ま、まあ、死んではない訳だし?晴れて合格!と言う事で、免許皆伝です!!……」
「じゃあ、おあいこですね。花壇荒らしてすみませんでした。」
「まぁ、花壇は仕方ないと言えば……いやそうでもないけど……何ならこっちも殺しかけちゃったし、ごめんね…」
ミラ姉…
戦闘の時とギャップがエグいな……
「そうだ、免許皆伝になったらプレゼントしたい物があったんだ。家に戻ろっか。」
「……はい、そうですね!」
ま、楽しかったしいっか!
あんな火…?を耐えられたんだ!!
オレはまた強くなったぞ!
――――――――――――
翌日。
いよいよ、オーケンですることが無くなったオレたちは、新たな星に旅立つ。
「じゃあこれ!バッジをつけてあげよう!」
そう言ってミラ姉は、いかにも田舎者は質素な服装をしているオレらの左胸辺りに縫い付けた。
…てか、服装も新調してみるか?
首元を編み上げたベージュのチュニックみてぇな服に、
シンプルなズボンと茶色い布ベルト、
折り返しのあるブーツ。
…待てよ。
今まで意識してなかったけど……
カイとペアルック……?
おえ。
まあ一旦置いておこう…
でも確かに周りの人を見てみてもこれより装飾が無いやつは見た事ない。
貧乏を自称していたアイシャだって、
革ベルトやコルセットをつけて、
ボロくはあるけどマントを羽織っていて、
赤と白のインナーにポーチまで付けてやがった。
いかにもな冒険者衣装だ。
……まて、オレがおかしいのか?
こんな何の備えもない服装でキタンもグレートダークも乗り越えたってか?
………はは…
ポーチだけでも真似すっかな……
「うーーん…やっぱりこのバッジは合わないか〜」
見ればわかる。
黄色のアイリスの花。
その上には蝶が一匹止まっている。
「じゃあ服も新調しちゃおうか。お金はあげるからさー。」
とは言ってもオレに合う服とか想像できない。
服装を考えていたら、二つ目の贈り物が来た。
「そしてこれ。私の自作杖。私の弟子の証として携帯してくれれば大丈夫だよ!」
オレに渡されたのは、
控えめに輝く、茶色が強めの金色の杖だ。
名前はアルタイルだってさ。
カイに渡されたのは、
際立って輝く、白が強めの銀色の杖だ。
あっちの名前はベガだってよ。
長さはオレの指先から肘くらい。
形は至って普通だが、少し捻れた形状だ。
持ち手側に青白い宝石みたいなのが嵌め込まれてるくらいが特徴だ。
この宝石はカイのと共通らしい。
「まあこの杖は殆ど飾りみたいな物だから、記念として、が大半かな。それでも、大事にしてね。」
「当たり前ですよ!」
「…ありがとうございます。」
布ベルトの結び目を使って、固定してみた。
……うん、やっぱり服買おう。
似合わねぇ…
「二人とも、オーケンでの修行、よく頑張ったね!では、少し改まって。」
そう言われると、オレとカイは姿勢を正して、
ミラ姉の正面に立つ。
「ジオ・エルデライト。カイ・エルデライト。二人は、無事卒業を果たすことになりました。このオーケンでの修行の日々が、いつか二人の夢を叶える為の支柱になることを願っています。」
ちゃんとした言葉での締めくくり。
こういうのは初めてだな。
「じゃあ、堅苦しいのは終わり!またいつか会えると良いね。一旦、ここでお別れだね。」
頭を撫でられた。
慣れてねぇから反応に困る……
カイなんか体を捻って避けようとしてるじゃん。
「次は…そうだなぁ。…海洋交易都市、シーライズに行ってみると良いかもね。この星から近いとこにあるから。」
海ッ!!!
面白そう!!
「それじゃ、ここでおしまい!!」
ミラ姉との二ヶ月は……
楽しかったよ。
修行は大半が地獄に生きるような心地だっだけど、
大体の世間の常識も教えてくれた。
だから…
「ミラ姉!本当に…ありがとうございましたっ!!!」
「あははっ!良い返事だね!カイくんは〜?」
カイ…
お礼を言えないのは終わりだぞ…?
そんな視線を送っておく。
効果は抜群だ。
「…ぁ…ありがとう…ございました…」
照れてるな。
間違いない。
「…まあ、いっか!それじゃあ、諸君、また会う日まで!」
オーケン、オレの初めて訪れ、滞在した町。
すげぇよな、まだ一つ目なのに、こんなに思い出で溢れてるぜ。
次はシーライズか!!
よっしゃ、行くか!!!
オレは、青空に向かって走り出す。
あの頂を見るために!!!
「ちょっと待ちなさい!!」
オーケン町役場の裏側にある、巨大なワープゲート。
そこで、見覚えのある声に呼び止められた。
「二人とも…何勝手に話進めてるの!?」
アイシャだ。
勝手にと言われても、何のことだか。
「何だよ声かけてきて。別れでも言いに来てくれたのか?それともなんだ、ついて行きたいみたいな?」
明らかに照れている。
耳赤い。
「そ…そうだけど、悪い?この町での依頼も、最近は減ってきて収入がないし…あなた達となら、もっと稼げると思って……(あとちょっと楽しかったし…)」
確かにな。
グレートダークでアリを殲滅して、
キタンの異常気象も解決した。
異常が無くなって依頼が減るのは当然だな。
「…秘宝はどうなったんだ。」
少し根に持っていたらしいカイが聞く。
「それは…これ。」
「なんだ?」
一回り小さくなった秘宝がそこにあった。
今では握り拳くらいだ。
明らかにもっとデカかったはず。
「私もよく分からないんだけど、朝目が覚めて換金に行こうと思ったら小さくなってたの。すっごく不思議だったから、なんかお金にするのは勿体無いと思って、持ってきたの。」
「まぁ、なんだ、カイ。秘宝、無くなってなくて良かったな。」
「そういうことじゃない。」
分かってるよ。
態度に不満があったんだろ?
いつも態度悪いカイが言えることなんてないけどな。
「……えっと、その。改めて…私を……仲間にしてくれる…?」
仲間。
良い響きじゃねぇか!
「おう、これからもよろしくな!!」
「…ふん。勝手にしろ。」
「…ありがと。」
さぁて、まさかアイシャが加わるなんて思ってもいなかったが、早速、次の町、行ってみるか!!
この新調した服も輝いてるぜ!
シーライズ…!!
どんなとこかなぁ〜!!
設定……
海洋交易都市シーライズ……っと。
よし、これでいける!
「惑星間の移動の際は、身分証明書の提示をお願いいたします。」
おっと、そうだった。
ここに来る時も出口で提示をお願いされたっけ。
確か……
…………。
な く し た。
「………。見逃してくれ!受付さん!!!」
「「はぁ!?ちょっ、待───」」
いっそげーーー!!!!
第一部 頂を目指して
第一章 約束は終わることなく
完




