第十四話 莫大な
「…んん……!!はっ、落ちてた!?何が起こったの!?」
お、目が覚めたらしい。
「おはよう。大分寝てたな。」
「ごめん…って、あのえげつない気配は何!?あなたもどうしたらそうなるの!?血だらけだよ!!」
まあ、そりゃこんな反応になるわな。
「さっき終わったとこだよ。血だって気にすんな。もう全部止まってる。この通り、五体満足だ。」
「いや怖いよ!本当に何があったの?ホラーなんだけど!?」
これどうやって説明しようかな…
クレイドの事は言うべきか?
「……うるさい…」
左からは、よく聞き慣れた声がした。
「お、カイも起きたか?」
「オマエ…また死にかけたのか?随分とやられるのが好きらしいな。」
「開幕気絶したやつは黙ってろ。」
ほんっとこいつは、いつもの調子で……
ま、安心したよ。
「あ、そうだ。これ、秘宝だよ。綺麗な宝玉だよな。ほらよ、アイシャ。」
人の頭とまではいかない大きさだからな。
めっちゃ重いんだ。
「あ、ありがとう。…じゃなくて、説明して!何があったの?」
「はは…とりあえず山降りようぜ。歩きながら話すからさ。」
やーーっと終わったよキタン!!
マジ疲れた…
70…いや80%はクレイドのせいだなこの疲労。
――――――――――――
町のはずれのミラ姉の拠点。
命がけ崖ダイブあっただろ?
あの崖の上にひっそりと建ってるんだ、小さい家が。
大きめの小屋みたいな感じの建物。
だけど侮ってはいけない。
恐ろしく綺麗に整ってるし、
そのくせえげつないほどの本だとかが置いてある。
「おっつかれ〜二人とも!キタンはどうだったかな?そちらのお嬢さんは誰かな?あ、ジオくん、着替えはあっちだよ。」
…なんかいつも通り過ぎて逆に変に感じるな。
「反応薄くないですか〜?弟子が死にかけたんだぜ?てか何回か死んだ気がする。」
だってそうだろ?こっち傷はなくても血だらけだぜ?
カイがまた口を挟む。
「全く…敬語にするのかしないのかはっきりしろよ…」
おまえが敬語を指摘したのが始まりなんだよな!
「おまえに言われたの気にしてんだよ!敬語が似合わんとかどうとか!」
「おーそうでしたごめんなさい。」
「ムカつくなおまえ!…そうだ、勝負するぞ!あの地獄を抜けた今のオレなら、おまえに勝てる!」
ミラ姉がボソッと何かを言った。
(確かに…凄まじく魔力量が上昇している…まさか…いや、そんな事は無いかな…?今は組織も動いてないし…)
内容は聞き取れんかったけど。
…てか、ずっとアイシャは黙ってるな。
なんかあったのか?
「…な……な、なな、な、ななななぁ…!?!?」
おいおいどうしたんだよ!
めっちゃ驚きが溢れてんな!
理由はすぐに答えが配られた。
「な、な、あ、ああな、貴女はもしかして、ミラ・グランドーレでしょうか!!!!」
おおっ、過去一の声が出てんじゃねぇか。
…って、ミラ姉って本名グランドーレなの?
「え?そうだけど、どうしたの?」
「だ、大ファンです!!前々大会、観てました!!あそこからずっと、ファンです!サインください!!」
「私のファンか〜!そっかそっか!じゃあどこにサイン欲しいの?」
「じ、じゃあ、この紙に───」
どっから用意したんだよその紙!!
てか、ミラ姉ってやっぱ人気なんだなぁ。
そりゃ大帝だもんな。
「ミラ…グランドーレ……っと。はい、どうぞ。」
「うわぁ!!家宝にします!!!!」
すげぇ喜ぶじゃん。
秘宝より喜んでねぇか?
「おいおいアイシャ、秘宝ほっぽってんじゃねぇか!そんなんだったらこっちが貰ってもいいんじゃねぇか?」
そもそも何のためにあんだけ死んだと思ってんだか。
「む……一理ある…かも。…じゃあ、一カケラだけなら…」
「えっと、アイシャちゃん?」
「ひゃ、ひゃい!!何ですか!?」
「ジオくんの言う通りだと思うよ。私たちは町長の依頼を受けて秘宝を捜索しに行った訳だけど。勝手に持って行かれても、ちゃんと訳を───」
「どうぞ。」
……マジか…
「………あはは…」
いや、ミラ姉の苦笑い初めて見たわ。
そんな重い事情でも無いのかな。
「いやいや…理由を言ってくれればあげて良いんだけど…」
「いえ、この秘宝でないといけないという理由はありません!!ただお金になりそうだったから貰おうとしただけです!!」
めっちゃ意志の灯った表情だなおい。
「…じゃあ、お金が必要ってことで良いのかな…?事情があるんでしょ?話してくれると嬉しいんだけど…」
「はい!実家が莫大な借金負ってて、命狙われてます!父も母も亡くなって今は祖父だけがいます!!でも、今のペースだと完済に二百万年かかるし絶対返済できないから、一気に稼げないかと───」
「アイシャちゃんストップ。」
「はい?どうかされました?」
……そんな口調で言えることじゃねぇよな?
はい?じゃねぇだろ!
さらっと言ってなかったか?
独り身で完済に二百万年?
いや大丈夫なのかよ。んなわけねぇわな!
なにがどうなったらそうなるんだ!?
「秘宝はあげるよ…アイシャちゃん、ちょっとあっち行って二人で話さない??…」
「二人きりなんてそんな!いいんですか!?」
「あはは……これは…」
二人が小さくなっていく。
……え?オレらは?
「……カイ、事情が笑えないんだけど…大したことねぇよ気にすんな!って一言でもかけようと思ってたのに……」
「ああ……家族がいない…のは……」
カイも思う部分はあるらしい。
てかどうしよ。
男二人がぽつんと立ってるこの状況。
あの二人しばらく終わんなそうだしな…
「……なあカイ、さっきの続きだけどさ…外出て勝負でもしねぇか?」
「はあ?面倒だな。」
とか言ってついてきてんじゃん。
ほんとツンデレだな。
よしここなら…問題ないだろ。
「そう言うと思ったよ。だからこっちから仕掛けんだよ!!」
クレイドとの闘いで増した魔力、
全ツッパだ!!!
殺すつもりじゃねぇとカイは倒せねぇからな!!
「オラ!食らえぇぇ!!」
オレの最大最高の爆炎だあぁぁぁ!!!
オレの周りは炎で包まれた。
これは流石にカイもぶっ倒れてるくらいしてねぇとおかしいだろ。
……煙が晴れる。
「……おい、草原が焼け野原じゃねぇか。あの人はこの場所を気に入ってるって言ってなかったか?」
その言葉にハッとなって、後ろを見る。
……やっちまった。
ミラ姉の花壇が、半焼している……
「マジかよ………」
いやほんと、二重の意味で、マジかよ……
「謝んねぇと……そんでカイ、おまえも何で無傷なんだよ!仮にも全魔力使ったんだけどなあ…?」
「オマエが強くなるたびに、僕も強くなるんだよ。」
「なんだその理屈は!!」
反則だろちくしょーーーー!!!!!!
「なあカイ、やっぱり降さ───」
ボガンッ!!!!!
あ…なんか白髪の少女が手ぇ振ってる………
――――――――――――
「ジオくん……また怪我したの?飽きないねぇ。それで?何か言うことは?」」
「うっ…すみませんでした…」
「しばらく正座。」
「…はい…」
カイが面白がってみてやがる。
くっそ、あの表情腹立つ~!!
「カイくんも。」
「…え。」
二人そろって正座かよ。
しくった。
「あの…アイシャは……?」
そういえば見当たらないから、聞いてみた。
「換金しに行ったよ。あれ相当貴重だったらしくてさ。三か月は安泰らしいよ。」
三か月といわれても、二百万年ペースなのか一年ペースなのかとかで
大分変わってくるよな。
「二百万年返済にかかる金額の三か月分…?」
カイも疑問が漏れてるし。
「懸命に生きてるよね。アイシャちゃんは。」
だよな。オレなら無理だと思う。
「ほんとにそうだな。家族がいないだなんて想像つかないよ。なあ、カイ。」
「そうだな。」
いつも通りの塩対応だなおまえは!
「さてと、前々から話そうと思っていたことがあるんだけど……いよいよ免許皆伝と行こうかと思って。」
「えええ!?早すぎません!?もっと大帝の足元見えるようになってからとか…」
「勿論、実力では皆伝なんて言えないよ。二人にはもっと旅をしてほしいんだ。」
「「旅?」」
うわハモったよ。
…いや、気にしたら負けだ。
……これもカイが考えてると思うとムカつくな!!
うわ、これもおんなじこと考えてたら!!
「なんか圧が出てるよ。今は私の話に集中してね。ふ た り と も ?」
「はいぃ!!」
恐いよ!
ミラ姉が一番圧出てるよ!
「どこまで言ったか忘れちゃったよ。……あ、思い出した。二人には旅に行ってほしい。私の他にもどんどん師匠を作ってほしい。そして色んなことを学んでほしい。だから一旦免許皆伝ってことにしておくよ。」
なるほどね。
でも正直一番最初に取った師匠が前々大帝だからな……
そこの不安はある。
「じゃあ最終試験と行こうか。」
「最終試験……?」
ちょまって。
やべえ、また嫌な予感がする。
「私の攻撃に耐えてみよ~~!」
クレイドオォォォォォ!!!!!
またかよオォォ!!!!




