始伝~顔を喰らう者 ~その三
第三話です。
戦闘はまだありません(笑)
「退魔刀?」
「そうじゃ、お主も一端じゃからな。退魔刀の一振りや二振り持っていてもおかしくないじゃろう?」
帝の聞き返しにタマはそう答えた。
退魔刀自体はそう珍しいものじゃない。退魔師であるならば持っていてもおかしくはないのだが、帝は持っていなかった。
「我と対峙した者のなかでも一番強いというのに、持っていないとはこれまた驚きじゃ。」
「退魔刀使うより、あいつらが勝手に袋叩きにしてしまうからな。
それに俺は退魔刀に嫌われているらしい。」
「嫌われている? なんじゃそれは?」
「渡された退魔刀がことごとく折れるんだよ。 鍛冶師が言うには力が強すぎて、刀が耐えられないそうだ。」
「ふむ・・・・・・しょせんは人と思うていたが、そこまで力が強いとなると・・・・・・うむ、なら我が用意しようかの。」
タマはそう言って、数日姿を消し、帝の前に現れた時には一振りの退魔刀を持って戻った。
「抜いてみよ。」
帝は渡された刀を鞘から引き抜くと帝は不思議な感覚になった。
「ふむ、どうやらうまく馴染んだようじゃの・・・・・・さすが天津麻羅が打った一振りじゃの。」
「神様が打った退魔刀なんぞ使えるか!」
「今の時代ではお主に馴染む退魔刀なんぞ人に作れん。 故あって縁あって繋がった天津麻羅じゃからの。
宴を催したら、面倒臭がりながらもすぐに打ってくれたわ。」
カッカッカッと笑うタマに対し、本当に大丈夫なんだろうな・・・・・・と心配そうな顔をした帝がいた。
「そうじゃ、その退魔刀、まだ銘がない、お主がつけてやれ。」
「打ち終わったらすぐにつけるだろう・・・・・・どんだけめんどくさがったんだよ。」
深い溜息を吐くと同時に、帝は刀を鞘に納める。
「普通の刀剣はそうじゃが、退魔刀は違うのじゃ。退魔刀は銘をつける事で忠誠を誓い、その者に力を与える。ようは、犬や式神みたいなものじゃ。今までお主に合う退魔刀がなかったのは、文字通り、お主の力に応える事ができんと退魔刀自身が判断して自ら折れたのじゃ。それと、銘があれば便利じゃぞ。 手元から離れたとしても銘を呼べば手元に戻ってくる。 それにの、そいつにはヒイロカネが使われておるからの、そこらの業物どころか、聖剣と言われる刀ですら力を通せば豆腐の様に斬れてしまう。」
「どんだけチートなんだよ・・・・・・」
帝の呟きに、タマはお主の方は存在がチートじゃと言われ、へこんでしまう。
「チートその一、精霊だろうが神だろうが仲良くなれる。
その証拠に四神はおろか四霊ですら懐いておるどころか、熾天使セラフィムに大天使四人からデートの申し込みがあったとかないとか。 しかも全員が女性(獣系は雌)とは、お主はハーレム野郎か!
チートその二、お主がその気になれば、地獄の鬼どころか、ゼウスすらダッシュで逃げ出す程の力がある。 簡単に言えば、お主が本気を出せばどんな奴だろうがガンジーがダッシュで逃げるレベルと言う奴じゃ。
チートその三、育ての親が猫神を統べるモノであり、お主に憑いとる守護者の座敷童女とて、バステトの娘じゃからの。 お主、本当に人間か?
チートその四、家事全般得意。今も昔も家事が得意な奴なぞ、そうそういないしの。特にお主が作る肉じゃがやカレーやシチューは絶品じゃ。 さすがは我の嫁と言ったとこかの。
チートその五、人間の友人がおらん! お主、リアルでぼっちか? ぼっちなのか? 我ですらMMORPG系ネトゲ限定でも数百人は狩り友はおるぞ。」
「もうやめてっ! 俺の精神的ライフポイントはゼロよっ!」
タマの帝がチートだと思う部分を言うと彼の泣きが入る。
「とまぁ、チートその四以降の冗談は置いといてじゃ。 ヒイロカネでできておるから、お主の意思によって使いやすい形状に変わるのも刀の特徴じゃ。」
あぁ、全部が全部冗談ではないのか・・・・・・と思う帝。
だが彼も思い当たる節はある。
高校の沖縄の修学旅行ではシーサーを、横浜の中華街に遊びに行った時には偶々、遊びに来ていた四神の白虎、青龍、朱雀、玄武、そして四霊の麒麟、鳳凰、霊亀、応龍を、新宿に行った時は、モデルと思わしく女性五人に逆ナンされ、聞いてみれば、お忍びで下界を見に来たというセラフィム、ガブリエル、ラファエル、ミカエル、ウリエルに・・・・・・とここ数年で起こった事を振り返るも反論ができる余地がない。
「銘か・・・・・・無光と言うのはどうだろうか?
光無き世界に光差して、それもって光明の道を開くと言う意味だ。」
刀の柄を持ちながら帝がそう言うと、退魔刀はきいぃんと全体を揺らし、共鳴した。
「気に入ったようじゃな。無光とやら、我が嫁の力となれよ。」
タマの言葉に無光は一層大きく共鳴音を出した
「あと、我も使うがな。」
ぼそっと呟いたその言葉に了承の共鳴音だした無光。
こうして退魔刀・無光が誕生した。
「マスター・・・・・・起きてください。マスターってば。」
座敷童女がそう言って、帝を揺さぶった。
「起きている・・・・・・」
帝はそう言って、目を開けた。
転寝をし、タマが自分に退魔刀をくれた時の事を夢に見た帝はそう思いつつ、眼下に見える、人通りが少ない道を見つめていた。
帝はアキノのマンションを出た後、駅のコインロッカーにしまってある、退魔刀を持ち、アキノが務めている病院の裏路地に生えている木の上に陣取りし、様子を窺っていた。
被害者の襲撃現場を調べたところ、被害者宅の近場の人気のない通りか、被害者が通りそうな暗い道で襲われている事を突き止めた帝は、次に狙われるであろう女性を待っていた。
「っくしゅ・・・・・・うぅ、寒い・・・・・・」
「いくら四月とはいえ、まだ夜は寒いのですから、厚着をしてくるべきです。」
青年のぼやきに座敷童女が答えた。
「心頭滅却すれば、火もまた涼し。と言うだろ・・・・・・それにこのぐらいの寒さなら、問題ない。裸一貫でエベレストを登頂して来いと言われた時の寒さに比べたらましだ・・・・・・来た・・・・・・」
裏口から見えた女性の影を見た帝はそう言って、木から音もなく静かに下りると、尾行を開始した。
カツカツと女性が履いてるヒールの音が地面を叩き、帝は静かに距離を置いて女性を尾行した。
暗い夜道でぼんやりとお化け電球になった街灯がチカチカと光っている。
今なら人気はない・・・・・・俺が犯人なら襲うときは今が絶好のチャンスだな・・・・・・と帝が考えていた瞬間だった。
「お前で最後だ・・・・・・あいつの苦しみ・・・・・・とくと味わえ・・・・・・」
男の声がした。
「まって・・・・・・あたしは関係ない・・・・・・アキノは自分で薬品を・・・・・・いえ、あれは事故よ!そう、事故なのよ!」
女性の声が恐怖で震えていた。
女性の目の前にいる男は顔に包帯を巻き、右手にコンバットナイフを持っていた。
「そこまでだ!連続切裂き魔!」
帝は襲われそうになった女性の前に出ると、退魔刀を覆い隠していた布を剥ぎ取り、刀を抜いて構えた。
「邪魔だ・・・・・・どけ!」
「ちぃ・・・・・・早い・・・・・・」
ナイフを持った男が帝の横を過ぎ去ろうとした瞬間だった。
「もうやめて!」
違う女性の声がした。
「アキノか!」
聞き覚えのある声に帝が口を開いた。
「ア・・・・・・キノ?」
切裂き魔が立ち止まって、アキノを見つめていた。
(チャンスだ!)
「座敷童女!あの女頼む!」
帝は心の中で想うのと同時に、座敷童女を召喚し、襲われた女性の誘導を頼んだ。
「死にたくなければ、私に着いて来て下さいね。」
召喚された座敷童女はそう言って、襲われた女性の手をひっぱり来た道を戻る。
「帝さん・・・・・・あれから私はずっと考えていました。ありがとうございます・・・・・・私の頼みを聞いて頂いて・・・・・・」
アキノが切裂き魔に近寄りながらそう言った。
「勘違いするなよ・・・・・・これ以上、痴話喧嘩に関係ない人間が巻き込まれないようにしたかっただけだ。」
帝はそう言うと、退魔刀を鞘にしまった。
「もういいんです・・・・・・秀仁さん・・・・・・あなたの気持ちちゃんと受け止めましたから・・・・・・」
アキノはそう言って、切裂き魔に抱きついた。
「アキノ・・・・・・あいつらを許すと言うのか…それでも俺は…許せない…俺の大事な女にこんな事をしたあいつらを・・・・・・俺は・・・・・・俺は!」
「!」
秀仁と呼ばれた男の異変に気がついた帝が咄嗟に動く。
「秀仁さん!」
「許せない・・・・・・許さない・・・・・・絶対に!」
男の体から妖気が溢れ出し、容姿が変化し始めた。額の両脇から角が生え、スマートな体型は筋肉が肥大化してき、大柄な男の体型になった。
「アキノッ!」
帝はすぐに男からアキノを引き離し、間合いを取った。
「あの野郎…修羅に堕ちやがった・・・・・・」
変わり果てた秀仁の姿を目にした帝がそう言って、背筋を凍らせた。
読んで頂きありがとうございます。
次回からネタ満載のバトルパートになります。
コメント、レビュー、評価など受け付けております。




