始伝~顔を喰らう者 ~その四
第4話
まだ続きますよー!(笑)
修羅鬼となった秀仁を見つめる帝とアキノ。
修羅・・・・・・それは人間が極度の負の感情により妖怪化した姿だった。
「ぶっちゃけた話、成績優秀で将来を約束された品行方正な坊っちゃんが極度のいじめにあい、プッツンした姿だよ。」
帝はそう言って、アキノに不思議そうな顔に答えた。
「修羅鬼となったお前に救う余地はない・・・・・・だが不完全であるなら戻れるっ!
本能が理性を喰らいつくす前に終わらせるっ!」
帝はそう言って、退魔刀を抜いて構えた。
「アキノ・・・・・・守ル・・・・・・」
秀仁はそう言うと、一瞬で帝の前に迫った。
「!」
ズブッ!
鈍い音と共に、帝の腹部に異物が入り込んだ瞬間、帝の体は沢山の蛾となった。
「危ないな・・・・・・そんなもん無暗に振り回すなよ・・・・・・幻術は初めてだったか?」
茂みの中から出てきた帝はそう言って、無光を構えるかと思いきや、帝は無光を鞘に戻しアキノの手を取り、走り出した。
勝てないわけじゃない・・・・・・だが、人に戻す事は帝にもできる。秀仁を殺せばいいだけの事なのだ。
秀仁の息の根が止まる一瞬だけ彼は人間に戻る・・・・・・だがそれは救った事にはならない。
これが欲望に溺れた悪徳会社の重役や汚職政治家だったりするならば、問答無用で斬り捨てるのだが、帝には秀仁を斬り捨てる事はできかった。
自分と似ているのだ。
境遇は違えど、妖怪を愛した人として、同情しているのだ。
「逃げるが勝ちだ!」
「ちょ・・・・・・逃げるって、私はあなたに止めて欲しいと依頼したはず!」
アキノがそう言って、帝の手を振り払い、帝の跡を追う。
「悪いけど、その依頼はナシだ。」
「え?」
帝はアキノの不思議な顔に対して、言葉を投げた。
「あんたさ・・・・・・人間と妖怪・・・・・・うまく行きはしないって心のどこかで、そう思って、諦めてたんだろ?
だから、遊び半分で悪戯された硫酸の瓶を自分から被ったんだ。
顔が溶けてしまえば、大抵の男は離れて行く。 そう思ったはず。
だが、あいつは違った、あんたがそんな顔になろうとも、あんたを心の底から好きだと言ってくれた。
その想いに答える事があんたにはできなかった。
今だって、あんたが現れた時、あんたはあいつを殺そうとしたができなかったのはなぜだ?」
聞こえてくる帝の言葉に、アキノはただ聞くだけしかできなかった。
「殺せなかった答えは簡単だ。あんた、あいつが妖怪になればいいと考えた・・・・・・妖怪と妖怪なら、俺みたいな稼業の人間に見つからなければ、仲良くいつまでも過ごせると考えた・・・・・・あんた、それで本当に満足か?
鬼になったあいつを見てどう思った?
あんたにいつでも微笑んでくれた優しかったあいつがいなくなるんだぞ?
修羅鬼になったあいつは、殺戮衝動に駆られるただのバケモノだ。
妖怪だろうが人間だろうが喰らいつくす。それが修羅鬼と言う妖怪だ。」
帝の言葉は全部、アキノが思っていた本音だった。
「妖怪と人間にしろ、人間と人間にしろ、うまく行く時もあれば、行かない時だってある。
人同士が互いにうまく行くなら、言葉なんていう不便なコミュニケーションはとうの昔になくなってる。
妖怪だって同じ事だ。
飽きもせず、毎日、人の寝込み襲って既成事実作ろうとする妖狐がいたりするしな・・・・・・そんなバカ狐と過ごしてる俺は人生の半分を損してる気分にもなる時もある・・・・・・だけどな、俺はそれで楽しいんだよ・・・・・・いつまで一緒にいられるかわからんが、俺はどんな時でもあいつと一緒にいたいと思ってる。」
「あの・・・・・・途中からノンケになってますよ。」
帝の言葉にアキノが途中から割って入った。
「ノンケついでだ、俺達がどんな関係かも見て行けっ!」
帝はそう言って、近くにある、運動公園に入り、園内にある広い運動場で立ち止まった。
「ここは?」
「ここなら、人目に着かないだろ・・・・・・」
アキノの言葉に帝はそう言って、膝をついた。
「大丈夫ですか?」
「やられた・・・・・・少し血を流しすぎた・・・・・・避けたつもりが避け損ねたようだ。」
帝を支えようとするアキノが帝の脇腹に自分の手が触れた瞬間、生温かい感触を感じた彼女は、帝が押さえている、脇腹を触診し十五センチメートル程の切り傷がある事を感覚として悟った。深くはないがあの時、もう少し秀仁が踏み込んでいたら、傷は内臓に達していただろう。
「あなた・・・・・・」
幻術でナイフを避けたつもりが、かすかにその攻撃は帝にダメージを与えていた。
「ほら、あんたの望んだ姿になった婚約者が来たぜ。」
帝はそう言って、小さな暗がりからゆっくりと近づく、影を見た。
「よう・・・・・・人間やめた気分はどうだよ?・・・・・・と言っても、もう人の言葉は喋れないな・・・・・・」
修羅鬼になった秀仁の姿が月の明かりで照らし出されていく。
「お前の相手は駄狐がしてくれるさ・・・・・・なぁ、タマ。」
そう言って、帝は街灯の上を見る。
「フンッ・・・・・・勝手に言っておれ・・・・・・この件が終わったら、主に問い詰めたい事が沢山あるからの・・・・・・」
街灯の上には座敷童女を右肩に乗せ、大きな狐の耳をピクピクと動かし、きめ細やかな金髪を夜風になびかせ、ふさふさの九本の尻尾を生やした美女が器用に立っていた。
「お待たせしました、マスター。」
座敷童女が帝のそばに寄ってきた。
「グッドタイミングだ。」
帝はそう言って、座敷童女の頭を指先でなでると自分の中にしまい視線をタマに戻した。
「グルル・・・・・・邪魔・・・・・・アキノ・・・・・・俺ノモノ。」
強力な妖気に気がついた秀仁がそう言って、美女が立っている街灯の上までジャンプして斬りかかるが、美女は一瞬にして、帝の前に移動していた。
「だいぶ、やられたな・・・・・・帝。」
「かすり傷さ・・・・・・タマ、悪いが今回はタダ働きになるぞ。」
美女の名を呼んだ帝はそう言って、退魔刀『無光』をタマに渡した。
「主よ・・・・・・それを言うなら、今回もじゃろ。」
手渡された無光を手にし、秀仁を睨みつけるタマ。
「俺じゃ無理なんだ・・・・・・だから、頼む。」
「良い、後は我に任せておくのじゃ。」
彼の有様を見て、タマはキッと修羅鬼となった秀仁を睨みつけて、無光を左腰に差す。
「修羅鬼か・・・・・・懐かしいの・・・・・・平安の時代には、うようよといたが、今じゃ珍しい・・・・・・我が嫁に手を出した事・・・・・・その身に染み込ませてやるわ!」
タマの妖気が増大し、秀仁は一瞬、怖気づいた時、彼の目の前に右手に妖気を込めたタマがいた。
彼女は怒っていた。 怒りに燃えていたのだ。 自分の愛しき人が負傷しても修羅鬼になった人間を救おうとしている。 自分がどんなに傷つこうが、関係ない。救えるなら救う。それが虚空帝と言う人間であり、彼女・・・・・・天幻院蒼空と言う空狐が惚れた男の姿であった。
「とくと見よ! 衝撃のファースト・ブリットォッー!」
バキという音と共に、秀仁の体が吹っ飛んだ。
「まだまだっ!」
タマが立ち上がろうとする秀仁に対して次の攻撃だす。
「撃滅のセカンド・ブリットォッー!」
先ほどよりも大きな妖気を溜め込んだ右ストレートが秀仁の顔面を襲う。
「すごい・・・・・・昨夜の時と妖力が全然違う・・・・・・彼女は一体・・・・・・」
「タマは玉藻御前・・・・・・平安時代以前から生きてる年増女狐さ・・・・・・」
帝の応急処置をするアキノが漏らした言葉に帝が答えた。
「これは、帝をキズモノにしてアッー!にした分じゃ。
抹殺のラスト・ブリットォッー!」
「誰がアッー!にされたんだだっ!」
2撃目よりもさらに大きく凝縮された妖気を込めたタマの右ストレートは秀仁に向かって走っていく。
「!」
秀仁はタマの攻撃を片手で受け止めた。
「こやつ・・・・・・カズマの技が効かんのか!」
すぐに間合いを取り、その場から離れるタマ。
「あの・・・・・・一つ質問していいですか?」
「・・・・・・技名に関して以外なら。」
「・・・・・・やめときます。」
応急処置をしつつ、アキノはなぜ、タマは攻撃する度にアニメの必殺技を叫ぶのか聞きたかったが、帝の返しで触れる事は出来なかった。
「ならば・・・・・・これでどうじゃ!
風は空に、星は天に、輝く光はこの腕に、不屈の心はこの胸に、レイジングハート! セェーットアップ!」
「Stand By Lady Set Up.」
無光を振りかざした、タマが光に包まれてた。
「いやいや・・・・・・それ無光だから! 退魔刀だから! 勝手に某アニメのインテリジェンドデバイスにすんなー!」
帝が叫ぶ。
「むしろ、声が水樹奈々っぽいですから、フェイトのほうが・・・・・・って、じっとして下さい!」
タマの行動に驚く帝を処置ができないと言って、アキノが叫ぶ。
タマが包んでいた光が収まると、そこには某アニメの管理局の白い悪魔が立っていた。
劇場版1stの衣装だ。
ちゃんとツインテールにしている。
無光も変化し、アニメのデバイスの形になっていた。
「行くよ!レイジングハート!」
「Shooting mode.」
タマの言葉に呼応するかのように杖状デバイスになった無光が喋り、杖の先には大きな妖気が収束されていく。
「我の全力全開・・・・・・受けてみよ・・・・・・ディバイーン・・・・・・」
「Bastard!」
「グガァー!」
妖気の波にのまれる秀仁。
お読みいただきありがとうございました
感想、レビュー、評価、なんでも受け付けております。




