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画面の奥の旦那さま  作者: 大関 里


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6/22

尊死

薫は今日、寝坊した。

非常にマズイ――!


母は大っっっっ変、ご立腹だ。



昨晩『SOU』の過去の投稿やら電子雑誌やらを読み漁り、

気が付けば朝方だったのは覚えている。

そしてそこで「少しだけ……。」と寝たのが運の尽き。


薫は大急ぎでボサボサの髪をポニーテールにまとめた!


(さらばっ!サラサラハーフアップの私っ!)






大急ぎで食パンかじって、歯を磨き、忍者のような素早さで準備する。

さすが、北陵の守護神リベロ。


目からレーザーが出てる母の視線を掻い潜り、家を出た。




「行ってきまーす!」



先に出てもらった澄に追いつくべく猛ダッシュ。







澄は既に時尭や蒼祐と合流していた。

「おはよーーーー!」


三人に突っ込んで行く。

澄はスッと避けるので、今日も蒼祐と時尭の間に、

ボスっ!と、無事挟まった。



「毎朝、元気だねー。」

時尭は相変わらず優しい。


「……。」

蒼祐は無言で腰をさすっている。痛かっただろうか?





「和葉さん般若だったわね。」

澄はちょっと面白そうに思い出していた。

薫の不幸は好物だそうだ。……酷い。




「あ!栄養補給!」


「ん?薫ちゃん朝ごはん食べれなかったの?」

時尭が心配そうに薫を覗き込む。



「んーんー、違うよー。寝坊してもご飯は食べる。」

薫はスマホを見ながら答える。



「――でしょうね。」

澄は相変わらず酷い。




『SOU』の公式Irustagramは朝、更新されるのだ。

朝の栄養補給にもってこい!

だが、寝坊したので今日分をまだ確認出来ていなかった。





画面の奥に『SOU』が映る――!!!!



「っ!ひやぁあああーーーーーーーー!!!!?へそぉおおっ!」


通学中の道で薫が奇声を上げた。





「?!なにっ!!!」

澄がキレる。


時尭は咄嗟に薫の口を押さえた。


「っ!んーーーー!!!!!」






手からこぼれ落ちたスマホを蒼祐が無言で素早くキャッチした。


が、薫を見て固まった。


「……え?」









鼻血が出ている薫。

ワナワナして放心状態だ。



「薫ちゃんっ?!」


時尭が焦りつつ、心配そうに声をかける。



「嘘でしょ?!薫鼻血っ!!!!!」

流石の澄でも薫の鼻血には、ギョッとしている。





蒼祐が画面を見た。


その瞬間首がとれる勢いで画面から目を逸らした。





そして、時尭にスマホを押し付けるとハンカチで薫の鼻を潰した。

これでもかという程に……。



「わぷっ!――えぇー!痛い痛い痛いよ蒼祐!」


(鼻めっちゃ痛いけど、蒼祐なんか顔赤いの可愛いーし!鼻拭いてくれるの嬉しいなー!)


薫はそんな事考えながら鼻をゴシゴシ拭かれている。

蒼祐から触れてくれる貴重な機会は逃さない、されるがままだ。




時尭は蒼祐に押し付けられたスマホ画面を見てみた。




画面に映っていたのは――。












『SOU』の更新されたばかりのIrustagramだった。


腹筋が少し覗く服装のショットと、

少し髪を乱して、アップでカメラを覗き込むSOUだった――。



時尭は盛大に吹き出した――。


「ぶはっ!!!!!」


体をくの字に曲げ肩を揺らしながら笑っている。

「蒼祐、こりゃ、っくっ!!!ふっふ、ふはっ――!」



「……時尭くんは黙ってください。」

蒼祐は険しい顔で薫の顔を拭き続けている。




その隣で笑い続けている時尭。



「ねぇ、凄いんだよ、澄ちゃん見てよー!!!SOUが!おヘソみせてて!!」

ギュウウウウ!


「痛いー!壁ドンしてるの!!」

ギュムゥウウウ!


「痛っ!んで、壁ドンの顔がドアップでっ!!!反則級の色気っ!!!」

ギュギュゥウウウ!!



「……薫さんもう黙りましょうか。」

蒼祐は鼻血を止めるつもりなのか、薫の暴走を止めるつもりなのか、

ハンカチを全力で押し付けている。



「蒼祐ありがとーーーー!けどめっちゃ痛いー!!!」


嬉しそうな薫は、蒼祐からのスキンシップならなんでも嬉しいようだ。

羞恥はどこに置いてきたのだろう。





澄だけ、この場で唯一まともだった。




ずっと笑ってる時尭に、

鼻血まみれで騒いで、SOUと蒼祐で栄養補給している薫、

長身猫背の蒼祐が、ハンカチで鼻血を押さえつつ、暴走する薫まで必死に取り押さえている。






(た、他人のふりしたいわ……。)


澄は終わらない馬鹿すぎる状況に、三人を諦めて置いて行った。





(破廉恥なSOUを見て鼻血出した薫に巻き込まれて遅刻なんて、絶対嫌だもの――。)






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