普通科のいけず様
薫はおにぎりを食べながら蒼祐を観察していた。
小学生まではずっと、手を繋いでいたくらい仲が良かった二人。
いつも泣きそうな顔で薫にベッタリだった蒼祐は中学が離れてから、触れ合う距離も離れてしまった。
恥ずかしがり屋さんの可愛い反抗期なんだと思っていたが、
最近、(――違うのか?)とも思い始めた。
「ねぇー、澄ちゃーん。蒼祐と同じクラスになれたのにずっと避けるのなんだろー。」
「そりゃ、小学生の時の距離だったらおかしいでしょう?今何歳だと思ってるの。」
「でもさぁー、遊びに行って家でも冷たいのー。蒼祐の、いけずー。」
薫が口をとんがらせて抗議する。
「高校生でベッタリ甘えてたら、それはもうホラーよ。」
「そーかなー?蒼祐は可愛いんだよー?」
「そろそろその認識を改めるのが良いんじゃない?」
「えー?可愛いのに。」
澄からすると、
いや、学校中の女子からしても蒼祐を可愛いとは思わない。
180半ばの高身長で、そんな図体デカい男が猫背で無口で無愛想。
長い髪の毛は(切れよ!)と思うくらいには邪魔くさそうで、分厚い黒縁眼鏡と長い前髪が顔を隠している。
時尭と正反対過ぎて、これはこれで心配になるレベルだ。
薫はそんな蒼祐も可愛く見えているので、眼科を何度か勧められた。
「はぁ、可愛いから抱きしめたいのに、くっ付くと怒られるんだよね。」
「蒼祐不足で死んじゃいそう!」そう叫んだ薫の声が教室に響く。
蒼祐は隅の方で、一人で食べていたパンを落としたが、それに気がついたのは澄だけだった。
薫と蒼祐を見比べて、また哀れみの目で二人を見た。
薫は「蒼祐のいけずー、午後の栄養が足りない……。」とか言いながら、
六個目のおにぎりを頬張り始めた――。
そして、スマホ画面を見て急に元気になった。
「あぁ!更新されてる!SOUのIrustagram!!!」
また蒼祐がパンを落とした。
あんなに素っ気ないのに、
薫の声だけは拾ってるのが、なんとも……気の毒で前途多忙な恋だな、と澄は心の中で思った。
「澄ちゃん見てよ!」
「朝見たわよ。」
「それとは別のショット!」
「はいはい。」
「あぁ、栄養源がもう一つ出来たから生きていけそう……。」
スマホを抱きしめて空中にお花を飛ばしている薫を無視して、
澄はブラックコーヒーを飲み干した。
今日も平和な普通科のお昼休憩だった。




