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画面の奥の旦那さま  作者: 大関 里


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4/22

嘘つきな王子様

今日のお昼休憩には時尭は普通科に顔を出さなかった。


澄は少しだけ胸を撫で下ろした。





薫には悪いが、澄は少しだけ……時尭の事が苦手だ。


薫だけしか興味がないのが、見ていてよく分かる。




他の女の子達が時尭は『優しい』『王子様みたい』と言うが澄からすれば薫以外に興味が無い優しさを被っただけの『嘘つきな男』という印象だ。



彼なりの処世術なのは分かっている。

けれど、あの誰にでもニコニコ優しくて毒など吐かない対応が澄は少し苦手だった。


澄は物事をハッキリ白黒つけるタイプだ。



そのせいで、中学時代は最初友達ができなかった。

けれど、そんな澄に全力で絡んできたのが薫だった。



学年で一番権力を持っていた女子達から陰湿な虐めをされていて、他の子が遠巻きに見ている中。

バレー部で一緒だった薫は普通に話しかけてきて、


なんなら権力争いに無自覚に勝利していた。





本人、完膚なきまでに相手をコテンパにしたのに気が付いてないのが、もはや事件で。

澄は嬉しかったのと、可笑しすぎて、お腹が捩れるほど笑った。



そして仲良くなった薫から紹介された幼馴染が、

時尭と蒼祐だった。




時尭はもう、初めから胡散臭くて、最低限の挨拶しかしなかったにも関わらず、


何故かニコニコが増していて、それが澄を更にドン引かせた。


薫を静かに見守っていて、世話を焼いている澄も時尭も役割的には似ていて、

お互い薫に関しては笑いのツボも一緒なので、少し話すのは嫌じゃ無い。



ただ、たまに最近二人きりとかになる時、何だか逃げたくなる。


『澄ちゃん』とあの顔で呼ばれると、

ゾクリ、として落ち着かない――。






蒼祐に関しては、特に何か思う事はない。

薫のこと、好きなんだろうな……。と生暖かい目で見守っている。






中学の時は薫と遊ぶ時、たまに顔を合わせる事があっただけなので、そんなに時尭を気にしてこなかったが、


高校は四人一緒になってしまった。


『帝都大学附属 北陵高等学校』――ここは、日本一頭の良い大学の中高附属のある学校だ。


『特進科』でなければ普通に『普通科』は、一般の県立高校と同じくらいの頭で入れる。



澄はバレーボールが強い北陵のバレー部に入部するため受験した。

薫もバレー部目当てだが、

時尭は中学から北陵だったので、そのまま特進科に進むのは分かっていたと思う。

蒼祐は地元の公立の中学だったが、高校は時尭と同じにしたかったのか?

北陵の普通科に入学した。

なので、四人で一緒の学生生活は高校が初めてだ。




北陵の特進科はちょっとやそっとじゃ入れない。

そこに、特待生ですんなり入っている時尭はちょっとした化け物だと澄は思っている。




全国模試で、英語は常に一位。その他も挙げればキリがない。


時尭が弓道部で二年に上がった時、部活動紹介でその姿を見た一年生が二人ほど保健室に運ばれる事件はいまだに伝説だ。





綺麗な顔に、グレーの瞳が、その甘いマスクを更に甘くしていて、

澄からすると糖分過多でずっと見ていると胸焼けしそうになるので、


他の女子の黄色い歓声は理解できなかった。




ただ、

(――綺麗だな。)

とは普通に思う。


それでも、それだけだ。






そんな時尭は、

誕生日までバレンタインで「どこまで甘いんだ?」と、やっぱり胸焼けする澄だった。




そんな果糖ブドウ糖液糖みたいな時尭が今日は薫に会いに、

お昼休みにわざわざ普通科まで来なかったので平和なランチタイムだった。


あの人工的な嘘を貼り付けた笑顔を見なくて済む。

澄を薫と同じくらい暖かい目で見られているのに最近気がついた。

その、落ち着かない視線を躱さなくていい。





少し機嫌のいい澄を、薫が不思議そうに見ながら、

本日……五個目のおにぎりを頬張っていた。






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