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画面の奥の旦那さま  作者: 大関 里


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19/22

衝撃は胸焼けの後で

澄はコンビニにいた。


そう、時尭に捕まってしまい、また二人きりで下校する事になったのだ……。




チュルルアイスをニコニコ顔で差し出す時尭。


薫が受け取ったパプコアイスとは、えらい違いだ……。




「澄ちゃんは胸がいっぱいにはならないのかな。」


「どうやったら胸がいっぱいになるのよ。むしろ胸焼けで気分が悪いわ……。」


「そっか、残念。」






ブラックコーヒーとカカオ85%のビター味。

新作のチュルルアイスは美味しかった。




「美味しい?可愛いね。」


表情に出したつもりはなかったのに、この男……。

めざとい……。



「……………。」



澄は無言でチュルルを飲んだ。







そんな澄を甘いニコニコ顔で見つめる時尭に、やっぱり胸焼けしそうだった。






「そういえば、澄ちゃん保健委員なんだって?」


「そうね、それが?」


「俺が倒れたら運んでくれる?」






「ご自分の力で這って保健室にどうぞ……。」


「……介抱はしてくれ「しません。」」





「残念、澄ちゃんはつれないなぁ……。」



ちっとも残念そうな顔してない。

嬉しそうなのは何なんだろう……。







「澄ちゃん?」



――しまった、顔を見てしまっていた。





「見惚れた?」

心底嬉しそうに時尭が微笑んだ。


その顔は悔しいが、美しくて――。



澄は盛大に顔をしかめた……。



「……見惚れてないわよ。」


「ふふふ。そっかぁ。」





時尭の楽しそうな声が帰り道に響く。




澄は無理やり別の事を考えようと、

蒼祐の事を思い出していた……。




あの後、『心配だから……』と帰る準備をして、薫を抱き抱えて家まで送り届けたのだ。


流石に荷物までは持てなかったので、澄が持ち帰る約束をした。






双子でこんなにも性格が違うものなのだろうか。


優しく誠実な蒼祐。

優しさの皮を被って掴みどころのない時尭。




なんて男に気に入られてしまったのだろうか――。




そんな事を考えていたら、隣が静かな事に気がついた……。

――不気味だ。

澄はゆっくりと左を歩いている時尭を見た。






冷ややかな視線に射抜かれる。



ビクッと澄の体が硬直した。








「俺と話してる時に他の男のこと、考えてた?」


冷や汗が背中を伝う。



(――何で分かるのよ!)





時尭の手がゆっくり澄に伸びる。


澄は動けない。緊張で体は強張るばかりだ。






時尭は猫の尻尾に優しく触れた。

ひと撫でした指先を、自らの唇へと運ぶ。


スラリとした綺麗な指が時尭自身の唇を撫でる。







澄の顔がありえないくらい真っ赤に染まる。




「――俺だけ見ててね?」


そう言った時尭は、

およそ高校生が出してはいけないほどの色香を放っていた。







「……ぅ、……はぃ……。」






満足気な時尭に動けない澄は手を引かれ歩く。






澄はどうやってその後、家に帰り着いたのかよく覚えていなかった――。






自分の部屋で、先程の事を思い出して澄は盛大に頭を抱えた。



「『……ぅ、……はぃ……。」って何よぉーーーー!」


ベッドにクッションを叩きつけた。


脳内が勝手に、

時尭の冷ややかなのに熱い視線を思い出す。




髪に触れられた時の微かな衝撃と、

その指が時尭の唇を撫でた時の、全身の毛が逆立つような感覚が戻ってきた。




澄はそのままクッションに突っ伏した。




危険生物に片足呑まれている事にまだ澄は気が付かない。






今日も澄は眠れなさそうだ。

アーメン。







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