強制的チュルルアイス
蒼祐も薫もさっきから一言も喋らない。
蒼祐は無言で通常運行だけど、薫をチラチラ盗み見ている。
薫は蒼祐に貰ったパプコアイスをゆっくり食べることで何とか間を持たせていた。
いつもなら気が付けば食べ終わって、
蒼祐の美味しそうだなー。て顔で見てるのに……。
大変そうだなー。と思いつつも、時尭は目の前の猫様の方が気になる。
「澄ちゃん、自分でお弁当作ってるの?」
「そうだけど……?」
「へー、美味しそう。凄いね!」
「……ありがと。」
あまり嬉しくなさそうに返答する澄が可愛い。
「だし巻き卵?甘いの苦手だもんね。いつも卵焼き最後まで取ってあるよね。」
「……。」
「今度喫茶店行かない?コーヒー美味しいんだけど。」
「行かない。」
「そっか。」
目も合わせてくれなくなった。
それなのに、時尭は澄が意識してくれてるのが嬉しくて笑みが深くなる。
「今日は髪下ろしてるけど、サラサラしてて綺麗だね。いつもは猫の尻尾みたいで可愛いよ。」
「……ショートにするかな。」
「絶対ダメ!ショートにしたら綺麗な首ばかり見ちゃうけど、いい?」
「……嫌だわ。」
「尻尾が無くなったら何するか分からないかも……。」
澄は何とも奇妙な、ドン引きしたげんなり顔を見せたが、
時尭は、澄のその顔の反応を肯定と捉えた。
「じゃあ、明日からも尻尾でお願いね。」
ニコニコした悪魔は澄の午後分のエネルギーを吸収したかのようにイキイキしていた。
戦わずして負けた様な、敗北感に澄は歯軋りしながら時尭を睨んだ。
澄猫に威嚇されて、
嬉しそうに時尭の笑顔が深まったので、澄は白目を向いた。
(この男の、躱し方ガイドライン何処かに売ってないかしら……。)
今日も時尭は幸せそうだ。
白目の澄に時尭が
「部活後、猫ちゃんにも俺からチュルルを奢ろうか?」
とパウチ型のアイスで釣ろうとしてきた。
「要らないわよ……。」
力ない返答は却下された。
「じゃあ、部活後コンビニ寄ろうね!」
なんて酷いお昼休みだろう。
楽しく、リラックスできたのは時尭だけだった。




