火縄に撃ち抜かれた足軽①
教室に入ると、蒼祐の背中が目に入った。
猫背だが肩幅が広く、男らしい体。
薫は何度かその上半身を見た事がある……。
その時は何とも思わなかったのに、思い出すと、
……もうダメだった。
(腹筋、割れてた……。)
腰はしまってて、体のラインが綺麗だった。
きめ細かい綺麗な肌が触り心地が良さそうで、
ふざけつつ触ったら、
蒼祐に涙目で怒られて、その後部屋に篭ってしまったのを思い出した。
今なら何故部屋に篭ったのか、その理由を想像できる……。
過去の自分を思い出して、いたたまれない。
薫は机に突っ伏した。
(……痴女じゃん、私。)
あの時、時尭にも珍しくお叱りを受けた。
『薫ちゃん、アウトだよ。今のは……。』
苦笑いで、『メッ!』と言われた。
何故今まで平気だったのか、蒼祐の気持ちを考えられなかったのか……、悔やまれる。
けれど、
昨日までの薫は、どうしても蒼祐に触れていたかったのだ。
時尭にはそのように思った事は無い。
兄のように思っていた、撫でられるのは嬉しく思うが、
自分から手を繋ぎたいとか、
抱きつきたい、
構って欲しい、
笑いかけて欲しい、
そう思っていたのは蒼祐だけだった事に……今更ながら気がついた。
弟みたいに可愛がっているつもりだったのに、
(……違かったの?)
混乱は増すばかりだ……。
キャパオーバーの薫は、
一時休戦を脳内に申し出た。
そして、朝はプリン一個しか食べられなかったのを思い出しお腹が盛大に鳴った……。
(……栄養補給。そうだ栄養補給しよう。)
そして、第二の栄養源、
『SOU』のIrustagramを開いた。
「ぎゃう!何これヤバいよ!澄ちゃん!!!!今日も推しが、尊いくてエロいっ!」
やはりSOUは最高オブ最高だ。
薫は心臓を撃ち抜かれた気分だ。
斜め前の澄から冷たい視線が送られたが気にしない!
SOUが色んな犬と戯れたり、犬と並んでお揃いのハードな首輪をつけてる、
……反則級の色気のショットだった。
癒しと色気の栄養過多で天に召されそうだ――。
拝んでいる薫は側から見るとだいぶヤバいやつだが、クラスの皆はもう慣れっ子だ。
変な薫が通常運行なので気にも留めない。
薫の心が少し穏やかになったところで、視線に気がついた。
顔をスマホの画面から上げ、視線の先にいたのは――
後ろを向いて薫を見ていた蒼祐だった。
その視線に心臓を撃ち抜かれる。
蒼祐から薫を見てるなんて、いつぶりだろう。
昨日の熱い視線を、
――キスを思い出す。
薫はまたも机に突っ伏した。
瀕死だった。
戦の最中敵から目を離した愚か者は、
午前中、教科書で顔を隠して、蒼祐を見れなかった。
触れても無いのに、
蒼祐からのいつもと違う種類の栄養摂取で、
全くもって、分解が追いつかなかったのである……。
お昼休み前だと言うのに、薫は胸がいっぱいでご飯が入りそうに無かった……。




