双極の蛇
「ねぇ、蒼祐。薫ちゃん家にきたの?」
時尭が蒼祐の部屋をノックした。
――返事はない。
「開けるよ。」
言うと同時に蒼祐の部屋に侵入した時尭。
真っ暗なその部屋で蒼祐はピンクの蛇のぬいぐるみを抱きしめて、隅っこで布団を被って縮こまっていた。
「……久しぶりに見たけど、そろそろ……そのピンクの蛇は卒業しない?」
時尭は苦笑いしつつツッコんだ。
「……薫に似てるので手放せません。」
「何があったの?そんな落ち込んで……。」
小学生の時の蒼祐を見ているようだった。
久しぶりに見たその引き篭もり方は、高校生にもなった185cm越えの巨漢には似つかわしくない……。
絵面的に、ちょっとしたホラーだ。
「我慢出来なくて、」
「うん。」
「薫にキスしてしまいました……。」
「ぶふっ!」
時尭は思わず吹き出した。
そんな時尭を睨みながら蒼祐が拗ねた。
「……時くん、嫌いです。」
昔の呼び方でいじけている弟が可愛い。
「ふふ、くっ。ごめんだって、キスしちゃうと思ってなかったし、SOS出してたもんねぇ、……。」
時尭は少しばかり申し訳ない気持ちにはなったが、まぁ、一歩前進なのでは?と他人事だ。
「俺も、澄ちゃんに警戒されちゃった。可愛かったよ、毛が逆だった猫みたいで。」
思い出したのか、心底楽しそうな時尭を見て蒼祐は思った。
「澄さん、ご愁傷様です――。」
この蛇みたいな男に好かれたのだ、多分出口はない。
「ふふ、じわじわ食べるの楽しみだなー。蒼祐はもう薫ちゃん食べちゃったんだもんね?」
蒼祐は思い出して顔が赤くなったり、青くなったり、忙しそうだ。
ピンクの蛇はその度に締め付けられていて、
(――いつか破けそうだな。)
とか時尭は興味なさそうに考えていた。
「とにかく、『弟』枠からは抜け出せたんじゃない?まぁ、今は『SOU』が恋敵だけど……。」
そう言って笑った時尭は面白いおもちゃを見るように蒼祐をみた。
「……ちっとも面白くないですからね?」
時尭の考えている事が分かる。
双子だからだろうか?
理解は出来ない思考回路だが、言わなくてもなんとなく考えている事が分かるのだ。
そう言われて益々笑顔が深まった時尭だった。
「明日が憂鬱です……。」
ため息をつく蒼祐と、
「明日の澄ちゃん楽しみだなー。」
反応が待ち遠しい時尭。
恋愛の進め方が真逆な双子の恋の行方はどうなることやら――。




