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画面の奥の旦那さま  作者: 大関 里


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11/22

自覚

薫の画面いっぱいに映ってボヤけた蒼祐。



静かに、柔らかい唇が離れた……。



薫は動かなかった。

クリアになった薫の目に映った蒼祐は、

怒っているような、でも泣き出しそうな顔だった。




「…………」


「…………」


何が起きたのか分からない。


ただ、唇が熱い。






「…………蒼祐?」


「はい……。」



「……今、なん、で?」


薫は混乱しながら熱い唇に触れた。

ブワッと、顔が熱を持つ――。




射るような蒼祐の視線。


「……まだ分からないんですか?」


「?????」


「嫌だったのなら、謝ります……。」


「嫌じゃ、ない、よ???」





「……いい加減にしてください。」


「え、!あっ!」





もう一度キスされた。

何度も角度を変えて、蒼祐の熱い舌が薫の唇を舐める。



「っあ!」


わずかに開いた隙間から舌が滑り込む。


「――っ、んぅっ!」

ビクリと、薫が震える。






蒼祐は薫を見つめたまま、ゆっくりと唇を離した。



二人を繋いだ銀の糸がプツリ。と切れた。




それが、とても恥ずかしい事に思えて、薫の声が震える。



「……キス、は、好きな人と、するもの、だよ?」


「……そうですね。」







「え、……蒼祐、私のこと……?」


「……今更ですか。」


そう言った蒼祐の目の奥の熱に身体の奥が切なく疼いた。




恥ずかしくて、

思わず蒼祐を突き飛ばした。


薫は丁度開いたエレベーターのドアの外へ駆け出した。




階段を使ってダッシュで降りる。




頭の中は大混乱だ。







薫は蒼祐を初めて『男の人』だと、認識した。



唇がジンジンする。

お腹の奥も切なくて、戸惑う。


薫は必死に走った。







どうやって家に帰ってきたか覚えてない。


頭の中では何度も、蒼祐の柔らかい唇と、薫を絡め取った舌の熱さを思い出す。


蒼祐の射るような視線が、目を閉じても薫の心を離さない。







暗い部屋で布団に丸まって何度も悶絶する。


その日薫は人生で初めて、ご飯が喉を通らなかった。





薫の母、和葉は、

槍でも降るのでは?と何度も外を確認した。


世紀末でも、我が子はカツ丼食べてそうだと本気で思っている。




まさか、

娘の異常事態が、恋煩いだと夢にも思わなかったのだった。



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