蛇に噛まれた駄犬
薫は久しぶりに蒼祐と二人で帰っていた!
澄は顧問に呼び出されて、時尭は用事があると言っていた。
一人で帰ろうとしたら校門を出で行く蒼祐の後ろ姿が見えた。
帰宅部の蒼祐がこんな時間まで学校にいるのが珍しいが、そんな事はどうでもいい!
二人で帰れるチャンス!
薫はダッシュで蒼祐に飛びついた!
ドンっ!
「!……っ痛いです。薫さん。」
背中の衝撃の正体は見なくても分かる。
「何で分かるの蒼祐?」
「……何で分からないと思ってるんですか?」
心底不思議そうな顔をしている薫に呆れる蒼祐。
「今日家行ってもいい?」
「ダメです……。」
「!なんでよ!」
「……来るなら、時尭がいる日にしてください。」
「せっかく久しぶりに蒼祐と二人きりなのに!」
「ダメです。」
「やだ、ついて行くもん!」
「離れてください。」
「やだぁー!」
「あぁ、もう!……分かりましたから、離れてください……。」
薫は蒼祐の腕にしがみ付いているだけなのだが。
蒼祐の腕は薫の谷間に挟まれているので、蒼祐は非常に困った。
降参するしかないのは明白だ。
顔を手で押さえて天を仰いでいる蒼祐に薫は満足したように手を離した。
「やったー!」
そんな薫に蒼祐が苦言を呈した。
「今のは他の人にしちゃ、ダメです……。」
「え?うん?」
分かってないけど、返事はする生物。
(この駄犬、上目遣いとか、ほんとやめてください……。)
蒼祐は今日一日中薫に振り回されて疲労の蓄積で眩暈がした。
電車に乗り帰路に着く。
高層階マンションのエレベーターで薫が蒼祐の袖を掴んだ。
エレベーターは昔から苦手なのだ。
静かに隣で悶えている蒼祐に気がつくこともないまま、
薫と蒼祐を乗せた箱は高層階へ登って行く。
蒼祐は時尭に『SOS』のメッセージを送ったが、帰ってきたのは、
『猫愛でてるから邪魔しないで、!』だった。
蒼祐は無自覚な可愛い駄犬と二人きりになる不安に押しつぶされそうだった。
無口だから、
下手すると『伝える前』にタガが外れて襲いそうだ。
頭の中で必死に素数を数える――。
ソレも虚しく、袖を掴んでいた薫の手が蒼祐の手に絡められた。
久しぶりに薫の指が指に絡んだだけで蒼祐の全身を快感の電気が走る。
「昔はいつも手、繋いでたねー!これなら怖くないや!」
嬉しそうに笑う薫の方を見れない。
それが薫には不満だ。
「ねぇ、蒼祐はなんでそんなに嫌がるのっ?」
薫は悲しくて手を、ギュッと握った。
蒼祐の中の何かがブツリと、切れた。
絡められた手を薫の頭の上で束ねた。
そして、薫が気がついた時には、
蒼祐の唇が薫の唇に重なっていた――。




