第4話 優のダンスはプロ級
私の“音程迷子でも笑顔で突破”事件から数分後。
優ちゃんのダンス審査が始まった。
「白石優さん、準備お願いします」
「……はいっ」
優ちゃんは深呼吸をして、ステージ中央へ歩いていく。
その背中は――
さっきまで震えていた子と同じとは思えないほど、まっすぐだった。
(……優ちゃん、スイッチ入ったな)
私は胸の奥がじんわり熱くなるのを感じた。
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音楽が流れ始める。
軽快なビート。
アイドル曲の定番のような、明るくてテンポのいいリズム。
その瞬間――
**優ちゃんの表情が変わった。**
さっきまでの不安げな顔じゃない。
目がキラッと光って、口元がきゅっと引き締まる。
(……あ、これ知ってる)
優ちゃんが“本気モード”に入ったときの顔だ。
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そして――
優ちゃんが動いた。
最初の一歩で、空気が変わった。
軽い。
しなやか。
無駄がない。
まるで体が音楽と一体化しているみたいだった。
「……えっ」
思わず声が漏れた。
(なにこれ……プロじゃん……!?)
優ちゃんのダンスは、普段から上手いとは思っていた。
でも、ここまでとは知らなかった。
ステップのキレ。
ターンの滑らかさ。
手先の角度まで美しい。
審査員たちも、明らかに前のめりになっている。
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「ひよりさん……」
隣にいた付き添いのお姉さんが小声で言った。
「……あの子、すごくない……?」
「すごいどころじゃないです……!」
私は目を離せなかった。
(……優ちゃん、こんなに踊れたんだ)
普段は控えめで、声も小さくて、
自信なさげに見える子なのに。
ステージの上では――
まるで別人みたいに輝いていた。
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そのとき、視界の端で黒い影が動いた。
黒瀬瑠歌が、優ちゃんのダンスを見ていた。
無表情のまま、じっと。
でも、その瞳はわずかに揺れていた。
(……瑠歌ちゃんも、優ちゃんのこと見てる)
胸が熱くなる。
(……なんか嬉しい)
推しと親友が同じステージに立っている。
それだけで胸がいっぱいになる。
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曲が終わる。
優ちゃんは最後のポーズを決め、深く息を吐いた。
審査員の一人が、思わず手を叩いた。
「素晴らしい。動きが綺麗で、表現力もある。基礎がしっかりしているね」
「……っ……!」
優ちゃんの目に涙が溜まる。
「白石さん、二次審査――」
(……っ)
「通過です」
「……ありがとうございます……!」
優ちゃんは震える声で頭を下げた。
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ステージ裏に戻ってきた優ちゃんは、私を見るなり泣きそうな顔で笑った。
「ひよりさん……! 私……できた……!」
「できたどころじゃないよ! 優ちゃん、プロだったよ!!」
「そ、そんな……!」
「ほんとだよ! 審査員もびっくりしてた!」
優ちゃんは胸に手を当てて、ほっと息を吐いた。
「……よかった……」
その顔は、涙と笑顔が混ざった、最高に綺麗な顔だった。
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(……優ちゃん、すごい)
(……そして私も、負けてられない)
胸の奥がじんわり熱くなる。
推しの存在が背中を押してくれる。
親友の頑張りが心を震わせる。
(……私も、この世界で頑張りたい)
そんな気持ちが、静かに芽生えていた。




