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白か黒か白と黒か  作者: 丑十八 higure
肆章 アクマカツニンゲン
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#11 とある一日〜ハプニングを少々〜

 今日の花林特製イカサンドは本当に美味しかったなぁ。

 花林が先にお店に降りて行って、一人でゆっくりご飯を食べていたら、いつの間にか時間が飛んでた。ちょっと目を瞑っただけなのに、不思議だなぁ。とにかく、早くボクもお店に行かないと。花林に笑われちゃう。あ、花林が笑ってくれるならそれでいいか。まあいいや。歯磨きをして、顔を洗って、準備完了!

 急いで下に来たけど、お店には誰もいなかった。電気を点けて、曲を掛けて、またまた準備完了! ちょっと開店は遅れちゃったけど、お客さんは来てないし、いいよね。

 開店からちょうど一時間経った。お店にはボク一人だけ。お客さん来ないなぁ。退屈だなぁ。海水浴シーズンは過ぎてしまって、更にはこの間の海水浴場に現れたおっきなクジラサンのニュースもあって、最近はお客さんが少ない気がする。何か暇つぶし、出来ないかなぁ。

 店内を見回す。棚に並んだ日焼け止めやゴーグル、水着たちに、壁際にずらっと並んだサーフボード。こないだやったばっかだけど、サーフィンしたいなぁ。ここで出来ないかな。サーフボードはあるし、波も自分で創れる。あ、でも、狭いから楽しくなさそう。や〜めた。

 気分だけでもサーフィンしてる感じになるかなぁ、と思って、店内でサーフボードに乗って目を瞑ってみる。涼しい風。リズミカルな音楽。サーフボードの感覚。

「いぇ〜〜〜い」

 海のニオイはしないけど、これはこれでちょっと楽しいなぁ。

 しばらく時間が経って、妄想サーフィン中のボクの耳に何か聞こえてくる。音楽の向こうに、バタバタって音。目を開けると、入口の扉を誰かが叩いてる。いつも来てくれるサーファーのオジサンだ。扉を開けに行く。どうして入ってこないんだろ。鍵を開けて押し開ける。

「いらっしゃ〜い! 自分で入ってくれば良かったのにぃ〜」

「いやいやソウ君! 扉、鍵閉まってたよ! 札も『CLOSE』だし!」

 あ、そういえばそうだった。鍵を開けるのも札を裏返すのも忘れてた。

「だから誰も来なかったんだぁ〜」

「全く……ビックリするよ、ホントに……」

「エヘヘ、ごめんねぇ〜? それでぇ、オジサン今日は何しに来たのぉ?」

「ああそうそう、ボードに塗り替えるワックス切らしちゃってさ。売ってるかい?」

「もちろん〜! 一箱余ってるよぉ〜」

「一個でいいカナ……」

 オジサンがワックスを買ってって、午前のお店は終了! ちゃんと札をクローズに戻して、電気を消して、店の外に出て鍵も閉めた。隣のお店を覗くと、ちょうど花林も店内をキレイにしているところ。

「花林〜、お昼ご飯食べよぉ?」

「あら、蒼。片付けが早いのね。ええ、そうしましょうか。少し待っていて頂戴、もう少し掃除をするから」

 花林のお店の中に入ると、すごいお花の匂いで鼻が幸せだ。脚の長い丸椅子に座って、掃除を続ける花林を眺める。たくさんのお花に囲まれて、俯き加減の花林。チョウチョの羽のような長い睫毛、チョウチョの口のようにクルクルした長い髪。モンシロチョウのように真っ白な肌。今日もキレイ。何かいつもより丁寧にお掃除してるなぁ。

「今日のお掃除はすごぉく丁寧だねぇ〜」

「ええ。私この後ご飯を食べたらマールムへ行くから、閉店作業よ」

「マールム行くのぉ⁉︎ 何でぇ〜?」

 花林はボクの大きな声にふと顔を上げる。澄ました顔も可愛い。

「あら、言わなかったかしら。先月の、海水浴場の怪物の詳細が判明したらしくてね、呼び出されたのよ」

「そうなんだぁ〜」

 そういえば朝、そんなことを言っていたっけ。あんまり覚えてないや。でも、何だか寂しいなぁ。仕事中、一緒に働いているわけでもないし、別に顔を合わせるわけじゃないけど、何となく、隣に花林がいないと寂しい気がする。

「ボクもマールム行っちゃダメぇ……?」

「ん〜、多分専門的な話をされるから、蒼には分からないと思うけれど。それに、急にお休みにしちゃ、お客さんに悪いわ。それとも、何かマールムに用事でもあったかしら?」

「ないけどぉ〜。花林と一緒にいないと寂しいなぁ〜ってさぁ」

 花林のホウキを持つ手が止まる。しばらく動かないままだったけど、また動き出す。

「……直ぐ、帰ってくるわ。え、えと、そろそろ掃除も終わるし、先に上に戻っていて頂戴」

「ヤッタァ〜‼︎‼︎ じゃ〜待ってるねぇ〜!」

 お昼ご飯も楽しみだ!


 鍵も開けて、札も裏返して、今度こそ完璧に準備完了! 午後のお店が始まった。言葉通り、花林はご飯を食べてから、マールムへ出掛けてしまった。花林がお昼ご飯に作ってくれたイカ焼きそば、とっても美味しかったなぁ。また作ってもらおう。花林がいないと、やっぱり寂しいなぁ。

 店内で妄想サーフィンしたり、ゴーグルを着けてみたり、フィンを履いてみたり、最終的にはいつもの、レジに置いてある高い回転椅子でグルグル回ったりして、たまにお客さんが来たり来なかったりしながら、時間は過ぎて行った。

 花林は中々帰ってこない。お客さんもあんまり来ないし、暇だなぁ、花林早く帰ってこないかなぁと思っていたとき、カランコロンリリリンと扉のベルが鳴った。回転を止める。

「━━ただいまぁ〜!」

「……言うとすればおかえりだし、ここは俺の家じゃないぞ」

 この声は。入り口に立っている人をちゃんと見る。黒髪に黒パーカー、背の高い真っ黒な男の人。

「無我夜(ながや)ぁ〜⁉︎ 何でぇ? 何でここにいるのぉ⁉︎」

「来ちゃ悪いか……? 買い物帰りにちょうど通り掛かったから入店しただけだ」

 椅子から降りて走っていく。いつ見てもおっきいなぁ。

「ボクも暇だよぉ〜!」

「お前勤務中だろう……」

「だってぇ、オ客サン、全然来ないんだもん〜」

 無我夜は「そうか……」と微妙な顔。その後、しばらく黙り込んで何か考えているみたい。

「どうしたのぉ〜?」

「蒼。久々に、どうだ? マールムで」

 拳を構えてファイティングポーズの無我夜。マールム! 花林!

「行くぅ〜‼︎‼︎」

「やけに元気だな……。まあいい、店が平気ならさっさと行くぞ」

 カランコロンリリリン。無我夜、足速いなぁ。

 無我夜、暇なのかなぁ。何してたんだろう。


 次回「潮ノ満チ引キ」

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