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【40万PV感謝】罪人令嬢は、二度目の人生でも幸せになれない~誰にも愛されていないと信じたまま、私はまた笑う~  作者: 水無瀬 霧乃
幸せを壊す罪人

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第44話 私は、認められる

目覚めと共に感じたのは、奇妙な静寂だった。


熱は引き、体は羽毛のように軽いが、心の奥底には鉛のような重りが沈殿している。


「テストを放棄した」という事実は、夢の中でも私を苛み続けた。


完璧であることだけが、私がこの世に存在することを許される唯一の条件だというのに。


私はその契約を破棄してしまったのだ。


「……お嬢様。お目覚めですか」


ロキナの声がした。


いつもなら、彼女の声は穏やかな春の日差しのように私を包み込む。


だが今は、抑えきれない興奮と、微かな震えを帯びていた。


「……ええ。おはよう、ロキナ」


体を起こそうとして、ロキナが勢いよくベッドの傍らに跪くのを見て動きを止めた。


彼女の手には、一枚の羊皮紙が握りしめられている。


王家の紋章が押された、公式の通知書。


「お嬢様……!信じられません、いえ、信じておりましたが……!」


ロキナの瞳が潤んでいる。


悲しみではない。


これは――歓喜の涙だ。


「どうしたの?そんなに慌てて」


「ご覧くださいませ!先ほど、学院から成績の速報が届きました!」


ロキナは震える手で、羊皮紙を私に差し出した。


見るのが怖い。


自分の無様さが、数字として刻印されているのを確認することなど。


けれど、ロキナの熱量に押され、私は恐る恐る視線を落とした。


『第二位:リリス・タロシア』


呼吸が止まった。


文字が意味を持つ記号として脳に届くまで、数秒を要した。


「……二位?」


掠れた声が漏れる。


「はい!二位です!お嬢様は、途中退出されたにも関わらず、並み居る優秀な生徒たちを抑えて、堂々の二位を獲得されたのです!」


ロキナが私の手を握りしめ、上下に振る。


「一位はカシリア殿下……それは当然のことですわ。あの方は王族、受けてきた教育の質が違いますもの。ですが、リリス様はその殿下に次ぐ順位……!しかも、回答した箇所はすべて満点だったと、添え書きにございます!」


脳髄に電流が走ったような衝撃。


満点。


すべて正解。


途中までの回答だけで、他の生徒たちの総得点を上回ったというのか。


じわりと、胸の奥から熱いものがこみ上げてくる。


安堵。


歓喜。


そして、強烈な自負。


私は失敗していなかった。


あの極限状態の中で、私は「リリス」としての務めを果たしていたのだ。


「……そう、なのね」


震える指で羊皮紙をなぞる。


これなら。


これなら、父上も私を認めてくださるはずだ。


『よくやった』と、あの日と同じように、頭を撫でてくださるかもしれない。


「殿下が、わざわざ国王陛下主催の祝賀会を開かれた理由が分かりましたわ」


ロキナが目を輝かせて言う。


「これは、リリス様の快挙を称えるためでもあらせられるのです!病を押してこれほどの成績を残したリリス様を、殿下は公の場で労おうとしてくださっているのですよ!」


その言葉は、甘美な毒のように私の心に染み渡った。


カシリア殿下が、私のために?


あんなに冷淡だった殿下が、私の努力を認めてくださった?


……あり得ない話ではない。


殿下は公正な方だ。


私の実力を正当に評価し、その功績を称えようとしてくださっているのだとしたら。


あの冷たい態度は、私を試していただけだったのかもしれない。


そうだ、きっとそうだわ。


どん底から急浮上した希望は、私の理性を麻痺させ、都合の良い解釈へと導いていく。


「……急ぎましょう、ロキナ」


私はベッドから飛び降りた。


「パーティーはもう始まっているわ。……父上も、殿下も、私を待っていらっしゃるはずよ」


「はい、お嬢様!今すぐ最高のお支度を!」

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― 新着の感想 ―
[一言] ついにカシリアとリリスの異母姉が出会ってしまうのか……(絶望)
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