04 仄かな熱
こちらの歩調に合わせてゆっくりと歩いてくれる王太子の後に続きながら、ほう、と小さく息を吐く。結界で守られた医療棟から出るということに不安を覚えてはいたのだけれど、今は驚くほどに落ち着いていられる。
隣に感じられる温もり。そっとその温もりの主を見上げると、亜麻色の髪に縁取られた端正で凛々しい横顔が目に入る。
初めて出逢った時から、とても親切で、優しくて、時々とても熱い人。不安な時はいつでも隣に居て支えてくれる。苦しい時は、力強く手を握ってくれて。
『俺がついてる』
自分は独りではないのだと、そう思わせてくれる温かくて力強い言葉。悲しい思い出に冷えた胸を少しずつ満たしてくれる、優しい騎士様。
(ねえ、エルド。貴方が居てくれるだけで、私がどれだけ救われているか知っている?)
視線に気付いたのか、瑠璃色の瞳がこちらに向けられる。
「……どうした?」
「ううん、なんでもない」
こんな些細な言葉を交わしただけで、胸に小さな明かりが灯る。その微かな温もりを噛み締めるように、そっと胸に手を当てた。途端に、
「大丈夫か?」
気遣うようなエルドリートの声が降って来る。
「ごめんね、大丈夫。少し、嬉しかっただけ」
そう言うと、一瞬驚いたような顔をしてから破顔した。
「そうか。まぁ、無理はすんなよ。疲れたらすぐに言え」
「うん。ありがとう、エルド。貴方が居てくれるから、平気」
素直に謝意を伝えると、エルドリートの顔に朱が差した。
――いったいいつからだっただろうか。
自分を見る瑠璃色の瞳に、熱が籠るようになったのは。
それをただ、仕事に熱心な人なのだと思い込んで、そして気付かないふりをして受け流して来た。
ああ、でも。
用意された瑠璃色のドレス。エスコートするように仕向けられた彼。着飾った自分を見つめる熱を帯びた視線。
もうそれで、誤魔化すことは出来ないのだと気付いてしまった。彼が向けてくれる気持ちにも、そして――自分が抱いた想いにも。あれだけの熱量を帯びた視線を向けられて、どうして気持ちを傾けずにいられようか。
――ねえ、ユリウス。私、もう、前を見てもいいのかな。
エルドリートの腕に添えた手が、縋るように騎士服の袖を握り締める。それに気付いた彼の腕が、そっとはずされて腰に回され、そのまま優しく抱き寄せられた。驚いて見上げると、照れ隠しのように目を背けられる。触れ合う身体の、服越しからでもわかる程に熱い体温。
遠慮がちに、そっと身体を寄せてみる。すると、腰に回された腕に、もう少しだけ強く引き寄せられた。包み込まれるような温もりの心地良さに目を細める。冷え固まった心の奥底がゆるゆると溶かされていくような気がする。
見下ろす彼の瞳はどこまでも柔らかく、温かい瑠璃色の光を湛えていた。
……それではこれからも二人の焦れったい恋をお楽しみください(キリッ




