用語解説(二章まで)
■リーズカンド王国
四季の豊かな小国で、現国王はレオンハルト。主要産業は農業と手工業。先代国王の時代に大陸有数の医療大国になった。主要都市には国立病院や療養所が設置され、王都には騎士団敷地内に併設された入院施設もある。呪術関連の治療なら高度治療も可能な王都の病院が最適。国外からの患者受け入れや視察も多い。
北方には瘴気の濃い黒の森があり、六十年前の大規模遠征を機に定期的に掃討作戦を行っている。
■王国の騎士と呪われし魔女
約六十年前に刊行された子供向きの絵本でロングセラー作品。子供向きには珍しく、バッドエンドな悲恋物語であるが、物語構成や描写が妙に具体的でリアリティがあると評価が高く、内容を加筆修正して舞台化されるほど国内でも有名な作品。しかしながら、刊行当時に実際に起きた事件をベースに描かれた物語であるという事を知る者はあまり多くはない。
なお、この物語には、ヒロインと悪役の役割が反転された改悪バージョンも存在するが、こちらはある理由から政府によって書籍化、舞台化等の一切を全面禁止されており、口伝で伝えられるのみである。
一部の貴族家では、どちらのバージョンの物語が語り継がれているかによって、数十年前のとある事件でのその家の立ち位置が分かるようになっているという噂がまことしやかに囁かれている。
■王立騎士団
近衛騎士団、中央騎士団、四方騎士団(東方、西方、南方、北方)で構成。有事の際には王太子(王太子が擁立されていない場合は国王)が最高指揮官になる。このため、王家の男子は士官学校への入学が義務付けられている。
各騎士団の騎士は、その能力に応じて青騎士、赤騎士、白騎士に振り分けられ、騎士服の色もそれに対応した色になっている。なお、団長及び副団長は黒の騎士服を着用する。
騎士団入りした者は身分の貴賤や年齢性別を問わず全て平等に扱われ、昇進は実力や人間性などが重要視される。指揮系統の乱れを避ける為の配慮である。また、騎士団の慣習として互いの名は「~殿」と呼び合う。ごく親しい間柄の場合はこの限りではない。
役職は序列の高い順から、団長、副団長、分隊長、副分隊長、隊長、副隊長。
・近衛騎士団
王族の警護や王城の警備に当たる。親衛隊と王城警備隊で構成。花形部署だが情勢が穏やかな近年では、若い騎士達にとってはやや退屈な部署として敬遠される向きもあるようだ。他の騎士団で経験を積んだ者から、技量や人間性などを考慮された上で選抜されるため、十代のうちに近衛騎士になる者は稀。騎士服は白。
・中央騎士団
王都や王都周辺の治安維持、災害救助、魔獣討伐等を担う。エリート揃い。人口が多いエリアなので、治安維持で結構忙しい。
・四方騎士団
国内の東西南北に配置。各領都や領都周辺の治安維持、災害救助、魔獣討伐等を担う。隣国との国境がある西方騎士団や黒の森に近い北方騎士団には技量の高い騎士が多く配置される。また、この二方は魔獣討伐の比率が高い。東方の隣国とは友好国で長年良好な関係を築いているため、東方騎士団は他の三方と比べて小規模。南方騎士団は気候が良く情勢が穏やかな為、傷病兵の療養も兼ねて配属される事が多い。
・青騎士
剣技を主体とする騎士。魔法適正の無い者は青騎士団に配属される。身体能力の高い者が多く、基本は小剣または長剣使用だが、短剣や両手剣の他、槍や棹状武器等を愛用する騎士もいる。騎士服は群青色。
・赤騎士
剣技だけでなく、魔法にも長けた騎士。魔法適正のある者が配置。剣技は青騎士に、魔法は魔導士にそれぞれ劣るものの、両方を効率良く組み合わせて使いこなすことが出来る。近距離戦だけでなく、遠距離攻撃や戦闘補助、治癒が可能な万能型で状況に応じて使い分けも可能だが、悪く言えば器用貧乏なので、赤騎士として出世するには余程修練を積まないと難しい。騎士服は葡萄酒色。
・白騎士
剣技の他、光魔法や呪法に長けた騎士。戦場では主に治療を担当。治療騎士と呪法騎士で構成される。青騎士赤騎士とは異なり部隊を組まず、有事の際には各部隊に均等に配置される。医師免許取得者も多く在籍するエリート部隊。騎士服は象牙色。
治療騎士はその名の通り、特に治癒魔法に長けた者が配置される。
呪法騎士は特殊技能職とされ、呪術能力を用いて解呪を行う任務が主となる。残念ながら呪術による事件は後を絶たず、この職が無くなる事は今後も無さそうである。また、呪術能力は先天性である上に、悍ましい呪法を目の当たりにすることから精神を病む者も多く、それ故に人員の確保は困難となっている。なお、六十年程前のある事件を切欠に、白騎士の入団基準と定期査定が厳しくなっている。
■特命騎士
特別な任務を帯びた騎士で、主に王家から任命される。現在では特命騎士といえば主にある事件後に失踪した魔導士の捜索及び保護を命じられた騎士の事を指す。部隊ごとに指名されるわけではなく、所属や階級に関わらず、状況に応じた人員が選抜されている。
■医療棟
騎士団本部敷地内に併設されている医療機関。白騎士団の管轄で、医師、看護師も常駐している。元々は傷病兵専用の軍病院のような扱いだったが、先代国王の時代に規模を拡大し、一般、主に王侯貴族の入院施設としても利用されるようになった。特に呪術関連の高度治療を得意とし、国外の治療希望者も多い。
■魔導師団
魔法特性の特に強い者が在籍。王城の左翼塔に本部と宿舎がある。有事の際には魔導士として参戦するが、情勢が穏やかな近年では研究機関としての側面が強くなりつつある。先代国王の時代に王宮薬局を吸収し、魔法と薬学を合わせた研究も活発に行われるようになった。数十年前に失踪したある上級魔導士が残した研究資料が保管され、参考資料として重宝されている。
■フローデン塔
北方の海岸に近い地域に設置された犯罪者収容施設。主に国事犯や王侯貴族の重犯罪者を収監。冬期間は海風で冷え込みが酷く、過酷な環境になり、収監されれば数年で衰弱死することになるため、実質的には処刑場扱いだった。六十年程前の王家の姫君の収監を最後に利用されておらず、後にその刑の残酷さから倫理的な問題が指摘されて閉鎖。現在では取り壊されて跡地が残るのみとなっている。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
次回から第三章突入です。




