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第29・5話 閑話 【第一王子 ✕ 私 ✕ 恋心】



   【今より十数年前】


「えいっ!!」


カーーーンッ!!


「ノエル!踏み込みが甘い!」


「やぁぁぁぁぁぁっ!!」


カキーーンッ!!


「セグナ!もっと相手をよく見て、フェイントに惑わされるな!」


高く澄んだ空の下、激しく剣を打ち合う音と声が響き渡る。


そこには、泥にまみれた幼き日のセグナとノエル。


そして―――、


二人を圧倒する存在感を放つ、第一王子ホークの姿があった。


「どうした?ふたりとも!もう、息が上がってきてるぞ。!無駄に力を入れ過ぎている証拠だ。それじゃ半時も持たない!」

「「はい!!」」


「ほら、ほら、手数が減っている!相手に余裕を与えるな!」

「「はい!!」」


三人は、いつものように剣術の鍛錬をおこなっていた。


乾いた金属音は、休むことなく鳴り続く。



「そこまで!!」


ホークの声に剣を止め、さやに納める三人。


「「はぁ、はぁ、はぁ、ありがとうございました!」」


肩で息をしながら、ノエルとセグナは声をそろえて頭を下げた。


ホークに促され、二人は日差しを避けるように、木漏れ日の揺れる柔らかな木陰へと向かった。



「あぁぁぁ~っ、キツかった~っ」

「……。また、一本もとれなかった」


ノエルは、その場で大の字で寝ころび、セグナは、悔しそうに三角座りをしている。


「ほら、ふたりとも水分はしっかり摂れ」


ホークは、二人の間に腰を下ろし、水袋を手渡した。


横目で落ち込むセグナを見ていたノエルが、茶化すように口を開く。


「バーカ、兄上から一本なんて、百年早いんだよ!」

「うっさいわね!そんなのわかってる!!……わかってるけど」


また、いつもの口喧嘩が始まった。


「ふたりとも!喧嘩じゃなく、息の合った連携攻撃をもっとしないと。たとえ格上相手でも、連携の取れた攻撃は、それだけで相手を翻弄(ほんろう)させ、隙を生み出すチャンスになるんだぞ」


「ふん!弱いくせに、セグナが生意気なこと言うから!」

「はぁ?!私は―――、私は、強くなった実感が欲しいだけ!!」


ホークは、汗を拭いつつ、ふたりにも布を渡した。


「いや、そんなことはないぞ。今でも十分強くなっている!毎日の鍛錬を怠らなければ、きっとお前達なら、あと数年で立派な魔剣士になれるさ」

「本当?!兄上!!」


ノエルは、目を輝かせて聞き返した。


「あぁ、本当だ」


ホークは、ノエルの頭を撫でた。


「そんなの遅いよ!!それじゃ、ダメなの!」


セグナが、言い放つ。


「ん?」

「―――それじゃ、遅いの!!」


強く握ったセグナの拳は、悔しさがにじみ出ていた。


「私は、早くあなたを守れるくらい強くならなくちゃいけないのに、それが条件なのに……」

「そうか、セグナは、()()()の約束をちゃんと憶えてくれているんだ」


優しく微笑むホークだったが、セグナには届いていない様子だった。


「もちろんよ!それが、私をここにいさせてもらう条件なのだから……」

「気持ちは嬉しいが、セグナ、焦らなくてもいい。オレは条件は付けたが期日は言ってないぞ」


「そうだけど……」


セグナは、納得のいかない表情で、またうつむいてしまった。


「何?条件って?」

「うっさいわね!あんたには、関係ないでしょ!!」


「何だと!!!」

「フンッ!!!」


「こらこら、ふたりとも!そんなんじゃ、いい連携なんてとれやしないぞ!」


ホークが仲裁したが、ノエルは腕組みをしてプイっとし、セグナは肩を落としシュンとなった。


「セグナ。お前は剣の筋もいいし、魔法の才能もある。剣術と魔術、日々の鍛錬。その努力が、お前をきっと強くする!だから焦らなくてもいい。私を信じ、自分も信じてやれ」


そう言ってホークはセグナの頭を撫でた。


セグナは、黙ったまま頷いた。


「!!、ん?そう言えば、お前のこの『第三の目』は、いったい、いつ開くんだ?」


そう言ったホークはセグナの前髪をクシャリとかき上げ、顔を近づけると閉じたままの第三の目を親指でそっと撫で上げた。


「はぁ?し、知らないわよ!そんなの!!」


セグナは、ビックリして立ち上がり、顔をあかくして、おでこを両手で隠した。


「あん?案外兄上が、おでこにキスでもしてやれば、ビックリして開くんじゃね?」


ノエルは、ニタリと意地悪く笑う。


「はぁぁぁぁぁぁぁっ?!」

「あぁ、なるほど、そうかもしれない!セグナ、一度試してみるか?」


「は、はぁ?な、な、な、な、何を?バ、バ、バ、バカじゃないの?!!!!」


セグナは、耳まで真っ赤になって後ずさりをし始めた。


「ノエルよ。セグナを捕縛せよ!!」

「ラジャー!!」


ノエルがすっくと立ち上がり、獲物を狙うようにセグナへ向かっていく。


「ちょっ……来ないでよ! ああっ、もう~っ、バカーーーーーッ!!」


セグナは涙目で庭園を激走し、ノエルがそれを追う。


「フフッ!ほら、セグナ、真剣に逃げないと摑まるぞ〜っ!!」


ホークのクスクス笑う声が、夕暮れの風に乗ってどこまでも響いていた。




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