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第23話  歓迎式




丁度、お腹が空いていたこともあり、私達3人は食事に手をつけた。


この世界の食べ物は、元いた世界のに比べれば遠く及ぶものはない。


味も淡白で薄味だから素材の味はすごくよくわかるし美味しいとも感じる。けど、物足りない感は否めない。


少し香りのキツイ料理もあるけど、わりとどれも食べやすいかもしれないかな。もう少しハーブやスパイスを使えば、もっと美味しくなるだけに少し残念な気もする。


(この世界にはあまり香辛料がないのだろうか?)


そうそう!実は、これでも私、仕事柄『香辛料の嗅ぎ分け資格』の認定試験に合格しているの!それで、つい癖で料理に合う調味料を考えちゃうのよね~。


そう言えば私と一緒に、もてなしを受けているナタリーとアイラといえば―――、


ナタリーは私と同じで慣れないもてなしに戸惑い気味。


だけどアイラは、……。予想通り、がっついているわね!(うん!あなたはそうでなくっちゃ)


お腹も満たされ周りの雰囲気にも慣れた頃合いに、こっちの生活でお世話になる人達が、次々と私の元へと挨拶に来てくれた。


直接的に日常のお世話になる、執事長やメイド長といった屋敷の要職から、ダンスの先生や学問、歴史などを教えてくれる先生。


それから、文化的な事から日常の所作を教えてくれる先生なんかも顔を見せてくれた。


講師を務めてくれる人の中には、『他国の王室の方』やその道の権威など、マンツーマンの授業をするには、惜しいと思われる人もいたのだ。


みんな、それぞれ個別に挨拶をしてくれたが、『ある人』には、あのヘボ加護のせいで赤っ恥をかくはめに。


―――忘れたい過去(黒歴史)が、またひとつ増えてしまった。


でも、最初に顔合わせをしてもらえたのはとてもありがたい。


これからの生活に多少なりとも不安があったので、こんな場を設けてもらえたことがとても嬉しい。これも全部、ノエルの采配なのかな?


(くう~っ、イケメンなうえに気配り上手で優しいとか、ある意味反則じゃない?!)


そうそう、挨拶に来てくれた人達の中でも一番印象深かったのは、今、目の前にいるこの大きな体で豪快によく笑う、師団長のバルカンさんかな。



   少し前の事―――。


「こ、困ります。師団長様。リストに名前のない方は本日、シャロン様への面会をご遠慮頂いております」


私は、甲冑を身に着けた大きな男が、入り口で何やら言っているのに気が付いた。


「ナーッ、ハッハッハーッ!固いことを言うな。べつに取って食おうってわけじゃない。顔を見に来ただけだ。それに、護衛対象の顔も知らんでどうやって護衛する?」

「そ、そうはおっしゃいましても、私には許可を出す権限が……」


あんな巨漢に詰め寄られているのだから、この場の出入を管理している執事があたふたしているのは遠目でもわかる。


「ちょっと、いいかしら」

「はい、何でしょうか?シャロン様」


私は、給仕をしてくれているメイドを呼び止めた。


「あの入り口におられる方は、どなた?」

「あぁ、師団長のバルカン様にございます」


「師団長―――。と、いうことは、セグナやヒースの上司なんだ。とても大柄だからてっきり魔王様かと思ってしまったわ。どうかされたの?」

「はい。実は今日、殿下はシャロン様に会える方を厳しく制限されておりまして。許可のない方はお通しできないのですが、師団長様が無理を仰っているようで……」


「へぇ〜。師団長さんって気難しい人なの?」

「いえ、そんなことは全く。気さくでおおらかで、とてもお優しい方ですよ。ただ、―――」


「ただ?」

メイドは周囲を伺ってから、そっと声を潜めて身を乗り出してきた。


「その、悪く言えば『雑』というか、かなり『粗暴』というか……」

「あはは!なるほど、ありがとう。わかったわ!」


ヒースが『苦手だ』って言ってたのが、なんとなくわかった気がする。


ノエルが、気を使ってくれたのね。

(ノエルの過保護も相当だけど……ここは私が「現場判断」を下すべきね)


「私が、許可すれば大事にはならないかしら?」

「それはそうですが、よろしいので?」


「えぇ、かまわないわ。お通ししてちょうだい」

「はい、(かしこ)まりました」


メイドは、言われた通りに伝えるため、押し問答している執事とバルカンの所へと向かった。


メイドが執事の元へ駆け寄り、私の意志を伝えた。


ほどなくして、悠然と中に入ってきたバルカンは、岩のように(たくま)しい足取りで、真っ直ぐに私の元へと歩み寄ってきた。


(それにしても……大きい!!)


彼が歩くたびに地面が揺れているように感じるくらいに。ゴリラというよりか、ヒグマもしくはグリズリーって感じかな。


「ナーッ、ハッハッハーッ!そなたが若の許嫁のシャロン様ですな?!」

「ふふふ、『若』、『許嫁』、ってその言い方」


私は、横を向き小さな声で呟くように言った。


「ん~っ。ちっちゃいな」

「『ち、ちっちゃくありません!!あなたが大き過ぎるのです!!』」


しまった!思わず発動しちゃった!!


「ん?ナーッ、ハッハッハーッ!女でわれを前に、物おじしないとは大した度胸だ!セグナ以来かもしれんな。一瞥(いちべつ)で気にいったぞ!!ナーッ、ハッハッハーッ!」


バルカンは、手を腰に当て天を仰ぎ見るように豪快笑った。何がそこまで可笑(おか)しいのかは、わからないけど。


「いや、失礼した!先ずは挨拶を―――。われの名はバルカン。近衛師団の師団長を務めております。どうぞお見知り置きを!」


「あっ、丁寧にありがとうございます。私は、シャロン。本日よりここでお世話になります。どうぞよろしくお願いします」


バルカンは、私に敬意を表すように、その巨躯(きょく)を折り、深々と頭を下げた。


「まぁ~堅苦しい挨拶はこのくらいにして、少し話をさせてもらっても良いかな?」


バルカンは、下げた頭はそのままに片目を開け、ニッと笑い、そう言った。


「はい、もちろんです!バルカンさん。私も堅苦しいのは苦手なので、どうか公の場でなければ普通に接して下さい」


「ありがたい!そう言ってもらえると助かる!いや~、どうもわれは、ガサツだと周りに言われるもんでな。失礼をして機嫌を損ねないか内心ビクビクしていたところなんだ」


「えっ?『その巨漢でビクビク?微塵も感じないけど』……。あっ!ごめんなさい!つい」

「ん?ナーッ、ハッハッハーッ!!」


バルカンは再び高笑いすると、ドカリとその場に胡坐(あぐら)をかいて座った。私が椅子に座っていても、まだ少し見上げるほどの大きさだ。


(もしかして、私が見上げないように、わざと座って同じくらいの目線に合わせてくれたのかしら。ガサツだなんて言ってたけど、意外と紳士なのね)


彼は自分の武勇伝を語るのかと思いきや、語られたのは意外にもノエルの話だった。


―――彼との会話はしばらく続いた。


気が付けばいつの間にか辺りはすっかり暗くなり、空には星が競い合うようにまたたき始めている。


今はまだ、ほんの僅かな瞬き。


―――けれど、私にはそれが、なぜだか神秘的なものに感じられた。







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