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ラブコールは銀河から――僕が地球代表だそうです  作者: 羊宮 玲(旧 羊)


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偵察

「えっ」とサージが声を発した時には、追手が目の前に現れていた。


「攻撃来ます、照準、船尾、動力部」

「攻撃回避、仰角変更、振って」と叫んだ。


 艦が移動を始めて少し経った頃、強い衝撃が襲った。ガクガク押されるような圧が続いた後、急に弾け、ガンッと爆発音がした。

 酷い揺れが全身を襲う。


「シールド貫通して被弾、予備動力被損。遮断します。他ダメージ無し」

 サージがフロンを呼んだ。


「さっきのシールド性能アップ、どう起動するか教えて!」

「ゲージを最高の上に上げて。ぐっと押し込めば動くから」


 サージが制御室に向かって叫んだ。

「聞いていたでしょ。ゲージアップ。フルの上へ」

「了解。ゲージアップ。硬い。壊れませんか?」


 フロンが叫んだ。

「大丈夫だから、ガンっと押し込んで」

「了解。いきます」


 クンッと高い音が鳴り、見えなかったシールドが一瞬だけ白く光った。

「攻撃、来ます。大型ビーム。狙い、動力部」


 ドンッと衝撃が襲った。

 山田は、サシムと立花に壁際に押しつけられた。

 綾乃と小森はケリーがまとめて抱えている。日野とマナは一緒にその場に転がった。


「シールド被弾。ダメージ無し」

「反撃。大型ビーム用意。フロントを狙って。追尾爆弾二十発、発射後ワープ開始」

 一瞬サージが迷った。


「ワープ先、C―3ポイントに変更」

「逃げます。皆さんワープ終了まで、デッキにいてください」


 サージの言葉に、乗組員がジェイたちを椅子に誘導し、ベルトで固定していく。

 軽い振動と共に光の柱が吹き出し、前方の艦に当たった。その後ろを何かが追うように飛んでいく。


 前方に光が散った。たぶんシールドで跳ね返されているのだろう。相手の艦が少し揺れているが、大きなダメージがないのは、山田にもわかった。

 その瞬間、ワープの時の、体がひゅんとするような感覚が、再び襲った。


「フロン。このシールドはどのくらい持つの?」

「四回までは大丈夫。だけど電力を食うの。攻撃や移動に回す分との配分を考えてね」

「相手の艦の体力次第か。リスキーね。予備動力部がやられているから、ワープで逃げ回ったら、電力も皆の体力も持たないわね」

「私たちにはお構いなく。船長にお任せします」


 そう言ったのは、日野だった。多分メンバーの中で、一番身体にダメージが来るのは、五十代後半の日野だ。だから彼が答えたのだろう。

 真っ青な顔をしている。その状態でそれが言える強さに、山田は感心した。


「これ、追尾されているわね。フロン、なにか心当たりある?」

 フロンは嫌そうに言った。

「追尾装置の最新式は、対になる発信機を追えるの。精度は低いし、あくまで、対になる発信機を、こちらの艦が積んでいればだけどね」


 山田も覚悟を決めた。

「あの艦は僕が狙いだ。初めにマナさんが言っていたように、僕が小型艦で逃げれば、そっちについてくるでしょう」

「そんな危険はおかせません。本来、それはあなたを逃がすための手です。この艦は戦って足止めする役目なのに、それじゃ本末転倒です」


 引き留めようと言葉を重ねるサージをフロンが遮った。


「さっき傭兵隊を呼んだから、近くにいる数艦がこっちに向かっているの。それと合流するまでの時間稼ぎながら、悪くないわ」


 山田が、「さすが、傭兵の王」と笑いかけると、フロンが飛びつこうと身構えた。


「今は遊んでる余裕ないよね」

 ケリーがすかさず肩を押さえて止める。


「陽動作戦ね。誰が出る? ジェイが乗る艦と、護衛数機だよね」

 サシムがすぐに手を挙げた。


「操艦技術で俺に勝てる奴はいない。任せてくれ」

「そうね。小型艦での戦闘なら、ナインのサシムよね。任せた。私がリーダーやるよ。フロンは傭兵艦隊との連絡に務めて」

 ケリーが仕切り始めた。

 サシムは普段の大人しい様子からは想像できないが、有名人らしい。

 

 ケリーとフロンが先頭を切って、小回りの利く攻撃機で飛び出していく。

 少しおいてサシムの艦が出た。


 その後ろを三機が続く。全部同型機で、どれに乗っているかは分からないはずだ。

 ワープから抜けた敵艦は、すぐに小型機を追って来た。

 ところが敵艦は、サシムの艦に定めて牽引ビームを出してくる。


 サシムが見事な操監で、それをくぐり抜けているが、どう考えてもおかしかった。

「ちょっと。その艦何か積んでない? 狙い撃ちじゃない」

 ケリーから通信が入った。

「サシム。どういうことですか? 説明してください」

 立花が静かに聞いた。


 サシムは答えない。操艦に神経を集中させているが、ためらいが見てとれる。

「やりたくないことをする状況、かな。脅されていますか?」


 生真面目そうな横顔が、ビクッとした。この男に密偵役は人選ミスだろう。丸わかりだ。

 山田がそう考えた瞬間に、急にガクンッと機体に不自然な衝撃が走った。


「牽引ビームに捕まった」

 サシムが小声で言って、下を向いている。


「申し訳ない」

「これ、逃げられないのか?」

 山田が聞くと、あきらめたような表情でサシムが言う。


「相手側が牽引ビームを解かないと無理だ。もう引かれていくしかない」

 立花が動こうとしたので、それを押しとどめた。 


 多分、離脱して相手艦に乗り込んでみようと思っている。だが、立花が離脱できるのは秘密だし、この宙域で大丈夫なのかもわからない。

 行くなら自分しかないと山田には分かっていた。


「僕が、相手の艦の様子を偵察してくる。何が出来るかわからないけど、何もしないよりいい。その前に聞かせてくれ。なぜこんなことをしたか」

「大切な人を、誘拐されている。引き換えに、彼女を返すと……」

「それ、信じられるの?」


 思いっきり疑い深い声が出てしまった。今の状況で、ジェイを捕まえられたとして、反故にされる可能性が高い気がする。

「わからない。だから、何度も何度も迷った。でも、彼女を取りもどすためなら、俺は何でもする」

 揺れていた、サシムの瞳が止まった。

「でも、帰って来る可能性は……」

 立花に止められた。頭をフルフルと振っている。言ってやるなということだろう。


 山田は怒った。人生で初めて本気で怒ったのかもしれない。

「立花さん、後をよろしくお願いします」


 慌てた様子で引き留めようとする立花に構わず、あの艦に向けて意識を集中した。サシムまでが、引き攣った表情で、「無茶だ」と叫んだ。

 その残像が消えないうちに、目の前に艦が見えた。


 一気に目標物の前まで到達する飛び方は、山田の元々の飛び方だ。そこからは水野から学んだ、漂うような飛び方を意識して真似た。

 ぎくしゃくした動きだが、何とか艦のメインデッキ前方に到着出来た。


 そこで艦がシールドを張ったのが分かった。こちらのエネルギーを感知したのだろう。

 だが、それは精神エネルギーには効かないようだ。山田はシールドを通り抜け、艦内に飛び込んだ。


 艦内にいるクルーたちは、天の川銀河の人々と余り変わらない姿をしている。翻訳機は対応していないようで、言葉は全く分からない。

 だが、彼らの気が見えた。


 非常に焦って混乱している。そして怯えているようだ。

 計器が乱れていて、それの復旧で駆けまわり、怒鳴り合っている。どうも山田の精神エネルギーが、精密機器に影響を与えたらしい。これなら牽引ビームも解けたかもしれない。

 非常警報らしき音が鳴り響いている。


 艦内では、小森のように足で歩くイメージで移動した。


 そして艦長らしき人物に近寄り、彼の気を、怒りのままに握りつぶした。その途端に、彼は声も発さず、その場に倒れた。


 山田は驚いた。まさか、この状態で攻撃が効くとは思っていなかったのだ。

 倒れた艦長は……倒れたままピクリとも動かない。


(なんだ、これ)


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