異世界ダンジョンー21
重厚な扉がギギギ……と地響きを立てて開き、俺たちは身構えた。
「来るぞ、最深部の主が……!」
フォルムは銃口を向け、トランは『たわし』で磨き上げた盾を構える。
しかし、目に飛び込んできたのは紫色の禍々しいオーラ……ではなく、「まばゆいばかりのシャンデリア」と「真っ赤な絨毯」だった。
「……え?」
「なんですの、この……キラキラした空間は?」
そこはボスルームなどではなく、広大な『超高級カジノ&ショッピングモール』のような場所だった。
スロットマシンの電子音が鳴り響き、タキシードを着たガイコツの店員たちが忙しそうにトレイを運んでいる。
「いらっしゃいませ、勇者様御一行! お疲れ様でございます!」
一人のガイコツが丁寧にお辞儀をして近づいてきた。
「あの、ここ、最深部じゃ……?」
「はい! 正確には『最深部手前・全財産吐き出しエリア』でございます! ボス戦の前に、溜め込んだドロップアイテムをここで使い切っていただく、運営の優しさが詰まったフロアとなっております!」
「……優しさというか、悪意しか感じないんだが」
呆然とする俺たちの横で、フォルムの目が「キラキラ」と輝き始めた。
「ご主人様! 見て、あっちに『デコレーションシール』が売ってるよ! しかも期間限定のラメ入り!」
「主様、あちらには『最高級・黄金のたわし(シルク仕上げ)』が……! わたくしの盾には、あれこそが相応しいですわ!」
二人はすでに、戦いの緊張感などどこへやら。
ショップのショーウィンドウに張り付いて、物欲を全開にしている。
「おい、待て! 俺たちの目的は……」
「主様、軍資金ならありますわ! 先ほど主様が手に入れた『王の宝冠』……これを質に入れれば、相当な額に……」
「売るな! せっかく手に入れたMVP報酬を速攻で売ろうとするな!」
どうやらここは、ボスに挑む前に「プレイヤーの精神的・経済的余裕」を削ぎ落とす、ある意味で最強の罠エリアだったらしい。
「……わかった、わかったよ。少しだけだぞ?」
俺が折れると、二人は「やったー!」と歓声を上げて店内に飛び込んでいった。




