異世界ダンジョンー20
最深部へと続く巨大な扉の前。そこにはなぜか、不自然なほど豪華な「ふかふかのソファ」と「湯気の立つティーセット」が用意されていた。
「……罠か? いや、このダンジョンのノリなら『ボス前のセーブポイント』って感じか」
俺たちは警戒しつつも、これまでの激闘(と内輪揉め)の疲れを癒やすべく、腰を下ろした。
「はふぅ……生き返りますわ。主様、お茶をどうぞ。たわしで磨き上げたこのカップ、輝きが違いますでしょう?」
「いや、たわしで磨くなよ! さっき盾を磨いてたやつだろそれ!」
「あ、ずるい! トランばっかり! ご主人様、ボクが銃弾で細かく刻んだ特製おつまみも食べて!」
「すでに消し炭じゃねーか!」
……相変わらずの二人だが、トゲトゲした空気は消え、どこか楽しげだ。
俺は手に入れた『王の宝冠』をいじりながら、ふと二人に問いかけた。
「なぁ、二人とも。次は恐らく最深部だ。正直、ここまでの報酬やスキルで、お前らはもう十分すぎるくらい強い。……怖くはないか?」
フォルムが頷き、真剣な目で俺を見た。
「怖いっていうより、ワクワクするかな。ご主人様がボクたちを信じて、あの『金色の種』をくれた時から、負ける気がしないんだもん!」
トランも優雅にカップを置き、深く頷く。
「左様ですわ。主様の『強運』があれば、どんな邪悪な存在も、最後には転んで自滅する……そんな安心感すらありますもの」
「……褒めてるのか、それ?」
苦笑いする俺。だが、二人の信頼は本物だった。
人型神器である彼女たちにとって、俺からの「期待」こそが最大のエネルギー源なのかもしれない。
「よし、休憩はおしまいだ。準備はいいか?」
「「はい、主様(ご主人様)!」」
俺が重厚な扉に手をかけると、扉は地響きを立ててゆっくりと開き始めた。
その先から漏れ出してくるのは、これまでの階層とは比較にならない禍々しい紫色のプレッシャー。
「……行くぞ」
俺たちは、ついに運命の最深部・ボスルームへと足を踏み入れた。




