エピローグ
「そういえば先輩」
「ん? なんだ」
「訊きたいこと、たくさんあったんです。この際だから色々訊いてもいいですか?」
「ああ」
「先輩と侑って中庭で何を話しあってたんですか? 静曰く険悪な雰囲気だったらしいですけど」
「うっ。ああ、まあ、その、晶が彼のことを好きだと思ってたから、こう、なんていうか、晶と仲良くな、みたいな話を少々。詳しいことは彼に訊いてくれ……」
「はぁ、わかりました。……ていうかそもそもなんでわたしが侑のことを好きだって思ったんですか? 誤解されるようなこと、しましたっけ?」
「……本屋に寄った帰りにたまたま二人を見つけて。すごく仲良さそうだったし、晶が俺の前じゃ絶対見せないような顔で笑ってたから。決定的だったのはそれだな。……なんか、嫉妬みたいで情けない」
「そうだったんですか。すみません……」
「謝らなくていい。直接尋ねないで、自己完結してた俺も悪い」
「井上先輩が言ってました。お前らにはコミュニケーションとやらが決定的に不足している気がするって。言われた通りだったのかもしれませんね」
「そうだな。今度からはちゃんと話し合うことにしよう。またこんな思いしたくないしな」
「ですね。そうしましょう。て、決定的だったのはって言いました? 他にも何かやらかしてました……? わたし」
「……前々から晶には一線引かれてるような、そんな気がしてたから」
「っ。すみません、そんなつもりじゃ……!」
「わかってる。俺が勝手に不安がってただけだから。……俺に迷惑かけちゃいけないって思ってた?」
「なんでわかるんですか……」
「修司が言ってた。あいつはまだ“あのとき”のこと引きずってるんだろうって。さっきさ、解決したって報告に言ったら教えてくれた。もっと早く言えよってちょっと思ったけどね。……大丈夫だよ。俺はもう、“あのとき”みたいにはならないから。だいぶ力の抜き方覚えたの、晶も知ってるだろ?」
「はい……っ……!」
「ん。だからもう遠慮はなし。わかった? ――そんなに首振らなくていいよ」
「今回は修司にだいぶ迷惑をかけた気がする……。だいぶ心配してくれてたみたいだし。修司だけじゃなくて、静とか、周りのやつらにもだけど。明日また色々言われるんだろうな……」
「遠い目をしないで下さい、心配になりますから。確かに色んなヒトに迷惑かけちゃいましたね。……井上先輩は、いつも通りだった気がしますけど。……井上先輩って誰かに似てるって思ってましたけど、静とか小夜ちゃんにちょっと似てません? いつも淡々と己のペースを守ってるところが」
「静が修司を苦手なのは同族嫌悪もあるんだろ。修司の方が進化系っぽいしな」
「! 先輩知ってたんですか。静が井上先輩に苦手意識持ってるの」
「? 見てればわかるさ。あの静が表情崩すのは、修司の前でだけだし。修司がそれに気付いてるかは知らないが。それより他に訊きたいことはないか? もうすぐ家に着くぞ?」
「そうですね。……あっ」
「なんだ? どうしたんだ?」
「一つ言い忘れてました。――――わたし、今すごく幸せです」
「――ああ、俺もだ」
最後までお付き合い頂きありがとうございました!
予想以上に多くの方々に読んでいただけたことを本当に嬉しく思います。
両片思いや、すれ違い、義兄弟ものにはまっていた時期にノリだけで書いた作品がここまで続くとは予想だにしませんでした(笑)
読者の皆様が、膨大な小説の海からこの作品を拾い上げて下さったことに本当に感謝しています。どうもありがとうございました!
それではまた!