「優しい笑顔に見つめられ、気づいたら全部話していた ④」
「ところでエラの変化後の姿は見せてくれないの?」
「えっと、二人の時でいいですか? ここだと、レストランの従業員たちも来ますし。来た時と髪色が変わっていたら変に思われそうで……」
「そっか。なら、ご飯の後に見せてね? エラは何処で寝るか決めている?」
「はい。ご飯の後なら……。あとここにはついたばかりなので、まだ宿とかとっていなくて……。旅の資金はそんなにないので、安い宿に泊まろうかなって」
「じゃあ、俺と一緒のところで寝ようか? 野宿でもいいけれどエラは宿がいい?」
「野宿?」
「うん。俺はよく自然の中でぐっすり寝てたりしているんだよ。気持ちよすぎて十数年寝ちゃったこともあるし」
流石、長命種というべきか単位が凄い。でもそうか、竜であるならば確かに野宿の心配も何もないのだろう。
そもそも竜は生き物の生態系の中でも一番上ぐらいだろうし、それもあって魔物などが襲い掛かってくることも少ないのかもしれない。……よく考えれば侍女を辞職してから此処に来るまで魔物に襲われたりしなかったな。
深く考えてなかったけれど、それって私が竜として覚醒しつつあるから?
「出来れば宿がいいです。私まだ、人間としての感覚が強くて……。外だとちょっと怖いです」
襲われないだろう、危険はないだろうと言われても怖さは感じてしまう。なので、私はそう口にした。
「なら宿に泊まろうか? それか街の神殿に行くのもいいね。それとお金は気にしなくていいよ?」
「え、でも……」
「自分より年下の同族の子の面倒を見るのは当たり前だからね?」
遠慮しがちな私にカールティードさんは笑った。
レストランも宿も全部支払ってくれる気満々らしい。……本当にいいのかな? って思うけれど、カールティードさんは優しいけれど有無も言わさぬ笑顔なんだよなぁ。
私が断っても押し切られそうな感じがする。
竜って、あれなのかな、集落で産まれた種族を大人全員で育てるみたいな感じなのかも。前世でテレビでそう言った集落の話を見たことがある気がする。カールティードさんが何歳なのかは知らないけれど、私よりはずっと長生きをしているだろう。
だから余計に私によくしてくれているのかもしれない。
「ありがとうございます」
素直に甘えることにしてお礼を口にした。
そうやって話しているうちに頼んでいた料理が届いたので、食事を摂ることにする。料理を持ってきた女性の給仕は、カールティードさんを見てぽーっとした様子を見せていた。カールティードさん、凄く綺麗だからなぁ。
ただすぐにカールティードさんに下がるように言われていて、残念そうにしていた。
竜に関する話なども引き続きする予定だから、レストランの従業員に聞かせるのもあれだしね。
「やっぱりエラは色んなことを知らなさそうだね。不自然なぐらいに情報遮断をされているというか……」
「そんなに不自然ですか?」
「竜神教のことも、竜のことも一般的な知識がないまま育ったって感じに見えるかな。エラは前世の記憶のおかげで基本情報があるけれど、それがなかったらもっと大変だったと思うよ。そう考えると前世の記憶と、この世界に酷似した物語はやっぱり誰かが気を回して与えたものなのかもね。エラのこうなる未来をどこかで知ってしまった何かの思惑がありそう」
「なるほど……」
「逆に情報が入ってこない環境だったのは、やっぱりエラを下界に留めたい何かが動いていたのかもね。他にも不自然な出来事ってあったりした? あったなら、何か影響を受けていたのかもよ」
「不自然なこと……ちょっと考えてみます」
不自然なことと突然言われてもぴんと来なかった。ただ深く考えてみると不自然なことってそれなりにあったかもしれない。
私が竜神教の知識を今世で身に着けることがなかったこと。私の育った孤児院の周辺には神殿などの竜神教に関わる施設が不自然なほどになかったこと。旅の神官なども私の育った孤児院に訪れることってなかった。
そもそも竜の血を引く私が迷子で下界に居るのも不自然な点ではあるしなぁ。
あとはそうだ。私が公爵家に仕えるようになったことも、孤児院の中から一人だけ侍女として採用するとかだった気が。奥様に引き取られていた二人のエラは既に孤児院を出た身だったし、別枠だった。
そこでなぜだか凄く気合を入れて頑張った結果、私は公爵家の侍女になった。それも旦那様に仕える侍女だった。とはいえ、孤児出身の平民だし侍女とは名ばかりの微妙な立場ではあった。
……何かの思惑があってそうなったのだとすると、竜の血を引く私が人間である旦那様と接点を持って、恋をするように――そうなっていたのかも。
これまで一切疑問に感じていなかったけれど、なかなかおかしな状況だったのかも?
私の中の竜の血が覚醒しつつあるから、こうして疑問を持てるようになったとかだったりする?
「不自然なこと、幾つかあったと思います……」
「余程、エラを留めたかったのだろうね。まぁ、誰が何か目的を持ってそんなことをしていたとしても全部どうにかしてあげるよ。天に戻って落ち着いたらもっとちゃんと調べるね? 報復できそうならそれもするから安心して」
にこにこしながらカールティードさんはそう言ってくれた。
私を下界に留めるために何かしていた存在は居るのかもしれない。でもカールティードさんの言う通り、おそらく大丈夫なのだろうなとそう思った。
なので、安心して食事を摂った。今世で食べたことがないぐらい豪華なもので、とても美味しかった。




