「優しい笑顔に見つめられ、気づいたら全部話していた ③」
カールティードさんの言う通りに竜のことは正しく伝えるべきだというのならば、ライトノベルの世界でも公爵領は問題を抱えていたということなのかな。
そもそも神の国の情報を最初から把握していたのならば、ライトノベルにおけるエラももっと違った行動を起こしていたのかもしれないなんて思ったりもする。
「それはあるかもしれないですね」
「それにしても俺はエラが主人公の小説は知らないけれど、どこの国のもの?」
「あー、異世界ですね。全く違う世界だったなって。その世界は竜は実在していなかったのもあって、余計にこの世界に対する戸惑いが強いっていうか」
もう前世のこととか話してしまっているので、異世界から来たことも話してしまった。
「ふぅん? エラはびっくり箱みたいだね」
「カールティードさん、反応が薄すぎません?」
「一つ一つは珍しいけれどたまに見かけるからね。でもエラは俺と同族で、前世の記憶を持っていて、異世界からやってきたなんてすごいね」
「……やっぱり小説の主人公って立場だから、設定詰め込んでいたのかなって思いますけれど。でも考えてみると異世界にこの世界の情報が流れているのってなんでなのか不思議です」
うん、考えてみれば凄く不思議かもしれない。地球では異世界の物語は沢山創作物であったけれど……それってよく分からない事象だなと思う。
「悪戯好きの精霊が異なる世界に情報を流してしまったか、それか竜に仇を成す存在が堕とそうとして何かしたか。まぁ、なんらかの要因があって異世界で小説になっていたんだろうね」
「え、竜に仇を成す存在って?」
竜は神様のようにあがめられているのにそう言う存在が居るのかと驚いた。でも考えてみれば前世で読んだ物語の中でも、人よりも高位の存在が闇落ちしたりとかそう言う話はあった気がする。あとは神々同士の争いが描かれる物語とか。
「うん。世の中には愚か者がいるからね? 竜の中でも精神が壊れてしまった存在が暴れたりとかも過去にはあったらしいよ? 俺はその頃産まれていないから知らないけれど。それに天に居る竜を人と同じ場所に堕としたいっていうよからぬことを企む人族ってたまにいるんだよ」
「竜を人と同じ場所に堕とす……」
「うん。その物語って、人間と恋する話?」
「はい」
「なら、そうだね。エラが異世界から竜として生まれ変わるのを予知してそれを広めて、エラを人族で囲ってしまおうという思惑の元の行動とかも可能性の一つかも。もしくは前向きに考えるのならばこの世界のことを産まれる前から知っていてもらおうという精霊の気遣いかもしれないけれど」
「……私が異世界で亡くなった時はまだその小説は完結していなかったのでどういう風になっているか分からないですけれど、小説も劇も見ていた友人の話を聞いていた限り、小説のエラって覚醒を抑える薬とか飲んでいた気がするのですよね。あと、未来を予知してって軽く言ってましたけど、そんなこと可能なんですか?」
なんだか色々と気になることを言われて、ついそう言った。
少なくとも私が軽く聞いた話では、メインヒーローは公爵家の旦那様で人間だった。でもそれって小説のエラが人として生きていくことを決めたっていうことなのだろうか?
そこに本人の意思がどれだけあったのかも、私は知らない。少なくとも竜のことをほとんど何も知らない状況で、自身が人間という感覚だけで生きていたら――竜に関わること自体を怯えるのではないかとは思う。それこそ、大切な人が傍にいて、それが人間だったのならば猶更だ。
というか、未来予知って簡単に出来るものなの? とそれもびっくりする。
「未来予知が出来る竜や道具は存在するよ。もちろん、常に使えるわけじゃないはずだよ。天に戻ったら、その辺の話を聞いてみるといいかもね」
もしかしたら何者かが、未来を見て、私がこうして生まれることを予知して何かしていたかもしれないってこと?
それはそれで恐ろしいかもしれない。あとそれなら奥様が前世の記憶を持っているのってなんでなんだろう? たまたま?
そのあたりのことを考えていると、怖いなと思ったりする。……気遣いからの行動かもしれないとカールティードさんは言っているけれど、実際のところはどうか分からないのよね。
「怖くなった? 怯える必要はないよ?」
「でも……竜を堕とそうとしている存在がいるかもって、怖いです」
「大丈夫だよ。エラは竜として覚醒することをもう止める気はないでしょ? それならそういう愚か者も何も出来ないよ? エラ自身でどうにでも出来るだろうし、何かあったら俺もなんとかするよ。それに他の同族だってエラに何かあるなら絶対に味方してくれるだろうから」
にこにこしながらそんなことを言われる。
……小説のエラって、色んな困難に見舞われてはいたはずだ。そういう様々なものを乗り越えていく様がとても素晴らしいのだと友人が語っていた気がする。
でもそれって、エラが人間として生きていこうとしたからだったりするのだろうか?
「……本当に?」
カールティードさんは一緒に居たら安心する魔力だし、実際に話していて私の味方なんだろうなとは思う。
でも他の人達はどうなんだろうとか、余計なことは考えてしまっている。
「うん。大丈夫だよ。もし嫌な思いをしても俺がなんとかしてあげる。同族と上手く付き合えないっていうなら、下界を二人でぶらついてもいいし、そんなに不安がらなくていいよ?」
何度も不安がって、私は面倒だろうなと思っている。
でもカールティードさんはやっぱり嫌な顔はしていないのだよなぁ。




