「神の国で、私は穏やかに過ごす ④」
「どうしたの、ペルラティナ」
ランセナさんと話してから少し経ち、私はカールティードさんと対面している。
様子のおかしい私のことなんてカールティードさんにはお見通しだった。私が少しだけ挙動不審で、何かあったのかもしれないとそう思ったのだろう。
やっぱりカールティードさんは優しい人だ。
カールティードさんと対面するのは少しだけ久しぶりだった。彼はとても自由な人だ。自由であるが故に下界にも飛び出して、穏やかだけれどもつかめない性格で。
だけれどもそんなところも天では凄く愛されている。私が天に戻るまで、カールティードさんが竜の中でも一番年下だった。
私が帰ってきて、それこそ一番可愛がられる立場が奪われてしまったわけだけどそんなことは気にした様子もなく私に良くしてくれている。
年上の余裕があるというかなんというか……。
目が合うと優しい笑顔でにこにこと微笑んでいた。
私はカールティードさんの笑った顔が好きだと思う。カールティードさんだけじゃなくて他の同族たちの微笑む顔も好きだけれども……、カールティードさんの笑った顔を見ているとほっとする。
私が天にこれだけ早く馴染めているのは、紛れもなくカールティードさんが居てくれるからだ。
だってカールティードさんに会わなかったら、私は色んなことを不安なままだったと思う。
天に帰ることをきっと躊躇してしまっていただろう。
「カールティードさん、これから私がいうこと、嫌だったら嫌っていってください」
私は保険を掛けた。
カールティードさんから嫌われたり、疎まれたり、迷惑だと思われたら嫌だなと思ってしまったのだ。
それを恐れてしまったから、私は先にそう言ってしまった。
「なんでも言って。ペルラティナが何を恐れているのかは分からないけれど、怖がる必要なんてないから」
優しい笑みを浮かべたカールティードさんはそう言った。
私が怖がっていることなんて、カールティードさんにはバレバレだった。
私が何を言おうとしているのかももしかしたら察していたりするのだろうか。
「……カールティードさん、私は寂しいって思っていました」
「寂しい? どうして?」
カールティードさんには全てバレバレだと思っていたけれど、私の言葉はカールティードさんにとっては想定外だったのか不思議そうな顔をしている。
お父さんやお母さん、それに他の同族の竜たちとも沢山交流をしている。それなのにどうして私が寂しがっているのか分からないのかも。
カールティードさんは、自身のことを侮っているというかなんというか……。私がカールティードさんのことをこんなにも特別に思っていて、大切にしていることを自覚していない。
そのことに少しだけ何とも言えない気持ちになる。
カールティードさんは同族たちに大切にされている。大事に育てられて、天という帰る場所があるからこそ下界で自由に過ごしていたのだろうと思う。でもきっと本人が思っている以上に周りはカールティードさんのことを大切にしている。
そして、私だって。
カールティードさんが私にとって特別なのは当然なことで、それだけのことを彼はした。
それなのに本人の自覚はないのだ。
「カールティードさんが、天に来る前より会いにきてくれないから」
私がそう言ったらカールティードさんは驚いた顔をした。
「そんなに俺に会いたいなら言ってくれたらよかったのに」
カールティードさんはくすくすと笑ってそう言った。
「……迷惑かなって思ってしまいました。私、誰かに自分から会いに行くのは苦手です」
「そっかぁ。ごめんね、ペルラティナ。もっと君が遠慮をしてしまうことを理解すべきだったね」
「そうですよ。カールティードさんと、中々話せないなって思ったんですから」
「ははっ、ごめんね? ルネリッツさん達と再会できたし、俺が邪魔しない方がいいかなって思ったんだ」
私は凄く面倒なことを言ってしまっていると思う。それでも、保険をかけたから本音を口に出来ている気がする。
カールティードさんは不快になった様子はなくて、ただおかしそうに笑っている。
カールティードさんの笑っている様子を見ると、私はほっとした。もしかしたらこんな言葉を口にした段階で、不快にさせてしまうかもしれないとそう思っていたから。
「……気遣ってくれたことは分かりますけれど、私はカールティードさんともっと話したいんですから。私もカールティードさんに会いに行くようにします」
「うん。分かった」
にこにこしながらカールティードさんは頷いた。
「あの、その話に続いて言うのですが、私、カールティードさんと会えなくなるの嫌です。だから、その……天に留まって欲しいなってそう思っています」
そのままの勢いで私はそう言った。
こんなことを言いだしたら、流石にカールティードさんに嫌われてしまうだろうかと心配になって視線をそらしてしまった。




