「神の国へ到着 ③」
宮殿に辿り着き、お母さんと一緒にお父さんの上から降りた。お父さんは翼を閉じて、それから人の姿へと変化する。
竜の姿のままだと建物の中は動きにくいんだろうな。とはいえ、この宮殿、竜体でも入れるようにか何もかも大きいけれど。
それにしてもこんな西洋の宮殿のような場所を訪れるのは前世も含めて初めてだな。日本産まれ日本育ちで、海外には行ったことなかったしね。
だから余計に目新しくてついついあたりを見渡してしまう。
ウルノワさんは私が宮殿で産まれたと言っていたけれど、竜神族は此処で産まれ育つのかな?
なんてそんなことを考えながらも私は目の前の光景に夢中である。
「ペルラティナは宮殿が好きなの?」
「こんなところ初めて来たからびっくりしちゃって」
「そうなのね。私も初めてここに来た時は驚いたわ。故郷の宮殿よりも華美で壮大で、神秘的なのだもの」
お母さんがそう言って笑っている。
故郷の宮殿なんて言い方をしているのを見るに、お母さんはそう言う場所になじみがある人だったりするのかな。
今はお父さんと夫婦になって、竜。でも元々は私と同じ人間。
だけど育ってきた状況は全く違うのだろうな。そもそも竜神族であるお父さんとどういうきっかけで出会ったのだろう? なんてそんな疑問も芽生える。
だって神の国に住んでいる人間ならともかく、下界ですんでいる人間と出会うことって何かきっかけがないとないだろうし。
「時間がある時に幾らでも散歩したらいい。どこでも案内する。ただ今はゆっくり話そう」
お父さんにそう言われて私は頷く。
ちなみにウルノワさんとカールティードさんは穏やかな笑みを浮かべて私達のことを見ている。
家族の会話を邪魔しないようにしてくれているのだというのは分かるけれど、カールティードさんたちとお喋りが出来ないのは寂しい。
特にカールティードさんとは出会ってからずっと沢山話してきたから。
中を歩いている最中も凄かった。煌びやかな装飾品が沢山飾られていたりする。竜はキラキラしたものに惹かれる習性もあるらしい。前世で読んだ物語でもドラゴンが巣穴に持ち帰ったりする話、多かった気がする。そう言う感じなのかな。
大切な宝物は、自分の傍でしまっておくみたいな感じみたい。
だから伴侶に関してもそうで、離れて暮らしたりはほとんどしないらしい。でもその気持ちは私も分かるかも。だってそう言う特別な相手が出来たら私も離れたくないなって思うだろう。
宮殿内を歩いていると此処で働いているらしい様々な種族の人がすぐに足を止めて深く頭を下げる。
私達が去るまでずっとその体勢のままでびっくりした。
私は下界で平民として生きていて、それも孤児院出身で、だからこうして誰かに頭を下げられたりすることも全然なかった。
余計に不思議で、こんな態度をされていいのかなって気にはなってしまう。
神殿でもそうだったけれど……。
私は自分が竜神族だって理解したし、こうして神の国まで来たのだから分かっている。ただ私の感覚はまだまだ人間なんだなって実感した。
「ペルラティナ、ついたよ」
そう言うお父さんは相変わらず私を見るとずっと泣きそうな顔をしている。お父さんの視線の先にある黒い扉を開く。取っ手部分は竜のデザインになっている。この宮殿って竜のことを慕う人たちの手によって建てられたのかな?
神の国、私が想像しているよりずっと文明が築かれていてどういう歴史があったのだろうとか気になった。
扉を開けた先には何人もの人影がある。
五人の美しい顔立ちの人達――おそらく私達と同じ竜神族。
その後ろには侍女服や執事服を着た人たちがいたりする。やっぱり宮殿となると侍女や執事なんかもこれだけ多いんだなと思った。
その部屋の中へと入った瞬間、驚くぐらいの既視感を感じた。
不思議な感覚。
どくんっと心臓が鼓動する。
「エラ……ペルラティナ、どうしたの?」
カールティードさんは私の様子にすぐに気づいてくれた。しばらく一緒に居たから、私のことをよく見てくれているのだろうな。
カールティードさんの言葉を聞いて、他の人たちも私の様子に気が付いたみたい。
「……なんだか、既視感があって。私、卵の時にこの部屋に来たことがありますか?」
卵の状態で神の国から行方不明になったのだから、産まれてからは此処に来たことはないはずだ。
それに私は卵の頃の記憶はない。そもそも幼い頃の記憶もあいまいだ。正直なんとなくしか覚えていない。
それでも……私は、この部屋を知っているようなそんな感覚になった。
「あなたは此処にいたことはあるわ。卵のあなたを時折移動させて話しかけていたから」
「この場所に既視感があるのならば、普段ペルラティナが居た部屋に行けば何か思いだすかもしれないな」
お母さんとお父さんがそう言って、中に居た人たちとの挨拶の前にそちらに移動することになった。
皆、それでいいみたい。
そして隣の部屋に向かった。そこに入った瞬間、私の頭に幾つかの記憶がなだれ込んできた。




