「総本殿にて、カールティードさんとウルノワさんと ③」
自分が竜神だと言われた時に、親はどんな人だろうって思っていた。
カールティードさんからは、竜は同族を大切にするとそう聞いていたからそれならどうして私は下界に居たのだろうかとそうも思っていた。
ただはじまりの竜であるアーニーベガ様の血を直接継いでいるなんて考えたことがなかった。
「……私が、この世界を作った竜の孫?」
「だと思うわ」
「エラってルネリッツさんの子供なの? へぇ、あ、でも納得かも」
呆けた様子の私にウルノワさんは頷き、カールティードさんは驚きながらもにこにこしながらそう言った。
私だけが凄く驚いて、信じられない気持ちになっている。
ルネリッツという人が、私の父親なのだろうか。はじまりの竜の、次男。長男は竜ではなく、竜人して生きたとカールティードさんが言っていたもんね。その下の子供は、竜として生きているということなのだろう。
「ルネリッツは六十年ほど前に人間の女の子を伴侶としたの」
「それって俺が下界に行ってから?」
「そうよ。カールティードってば、下界に降りてから全然帰ってこないのだから」
ウルノワさんは呆れた様子だ。というか、カールティードさんって、そんなに長い間、神の国に帰っていなかったんだなぁ。
「そして待望の卵が産まれたのは、五十年ほど前かしら?」
「え? その五十年前の卵が私なんですか?」
ウルノワさんの言葉を聞いていると本当に私がその、ルネリッツという竜の子供なのだろうかと疑問を持つ。
だって私は十五歳。五十年前なんて、知らない。
「竜の卵は孵化するまで時間がかかるのよ。それこそ数十年や百年かかる場合もあるの。あなたは今、何歳かしら?」
「私は十五歳です」
「なら丁度、十五年前に卵から孵化したのね。正直、卵の状態で天から行方不明になったあなたが無事であるかこちらからは分からなかったの。無事に卵が産まれた後、孵化せずにそのまま亡くなってしまう例もあるから」
……ようするに流産みたいなもの? 卵が産まれただけでは安心出来ず、そこから無事に産まれるかは分からないってことよね。
そもそも小さな子供だと、どういった種族だったとしても簡単に命を落としてしまったりもするものだとは思う。
それだけか弱いから。
卵が行方不明になった後、私が無事かどうかわからなかったというのもそれはそうだと思う。
卵から産まれた時、私は人間として産まれたはずで……そうなると余計に命を落とす可能性が高かったはず。
「五十年ほど前、産まれた卵は厳重に守られていたはずだったのに気づいたら無くなっていたの。天に住まう人々の中でも一部しか、入ることが出来なかった場所なのに。実行犯は既に処罰されているけれど……」
黒幕というか、誰が背後に居るかなどはもしかしたら分かっていないか、黒幕を捕まえることが出来ていないのかもしれない。
産まれてすぐの卵が、誰かのせいで行方不明になった。
なんて、酷い話だ。
「あなたに卵の頃の記憶があれば、話が早いのだけど……。その点に関しても誰かが意図的に消しているのかもしれないのよね」
「……なるほど。それはあるかもしれないですね」
卵の中で、当時の私は何か考えていたのだろうか。その当時の記憶はないけれど、要するに三十五年近くはずっと卵の中に居たわけだよね?
正直想像がつかない。
今の私の倍以上の時間。それに前世の私よりも年上だ。その期間、ずっと卵の中にいて、それでいて行方不明状態だなんて。
でも意識がある状態だったら、卵のうちから両親のことを認識していたりしたのだろうか。
そうなると卵が持ち出される中、反抗したのではないか。……もしかしたら反抗させないためにも、竜としての自覚を無くすためにも記憶を消したのだろうか。そんな気はする。
「なんにしてもルネリッツもその奥さんであるローレジレもあなたのことをずっと探していたの。もしかしたらもう亡くなっているのではないかとずっと言われていたわ。だから、あなたが無事に生きてくれて、そうしてここまできてくれて私はほっとしているの。カールティードが見つけなかったら……と思うとぞっとしたわ」
ウルノワさんはそう言って、安堵したように私の方を見る。
両親が私をずっと探してくれていたこと、それに竜神たちがこうして私の無事をほっとしていてくれていること。
それが嬉しかった。
「エラがルネリッツさんの娘かぁ。となると、アルバストさんも喜んでいたんじゃない?」
「アルバストさんって?」
カールティードさんの言葉に私は問いかける。アルバストという名前をはじめて聞いた。
「クラウィロさん……ルネリッツさんの弟の息子さんだよ。俺よりは千歳ぐらい年上だね。ずっと妹欲しがっていたから、従姉妹が産まれたことは喜んでいたんじゃないかな」
カールティードさんはそう言って説明してくれた。
どうやらアルバストさんというのは、私の従兄弟らしい。




