「総本殿にて、カールティードさんとウルノワさんと ①」
「え、えっと! は、はじめまして。エラです!」
ぎゅーっと抱きしめられながら、私はなんとかそう口にする。こんな風に抱きしめられるのは初めてかもしれない。
私よりも背が高い。見上げると、優しい表情で見つめられた。
藍色の髪に、金色の瞳。優し気なお姉さんって感じがする。
「改めての挨拶、ありがとう。想像以上に可愛らしいわ! 同族の子供なんてカールティードぶりね。この子が小さかった時のことを思い出すわ」
にこにこしながらウルノワさんはそう言った。慈しむような視線。カールティードさんもそうだけど、本当に心から私を大切にしてくれているというのが分かる。
「ウルノワさん、昔のことはいいでしょ。それよりエラを離してあげて。少し苦しそうだよ?」
カールティードさんは呆れた様子でそう言った。
「確かにそうね。ごめんね、エラ」
そう言ってウルノワさんは私のことを離してくれる。そしてカールティードさんの方を向いた。
「それにしてもカールティード、よくやったわ! 下界で迷子になった竜なんて見つけることが困難だもの。よくエラのことを見つけてくれたわね」
なんて言いながらウルノワさんは、カールティードさんの頭を撫で始める。
私にとってカールティードさんは頼りになるお兄さんなのだけれども、ウルノワさんからしてみると子供扱いなのだろうかと驚いた。竜神としては年下の同族に会うのは初めてだって言っていたからなぁ。
「ウルノワさん、俺、子供じゃないから」
「あらあら、いつまでたってもあなたは私達にとっては可愛い小さな竜よ?」
「はぁ、まぁ、いいけど」
それにしてもウルノワさんと話している時のカールティードさんは少しだけ子供っぽいというか、無邪気というか……私に接している時とは全然違う。こういったカールティードさんの新たな一面を知れることが私は嬉しかった。
「そうだ。ウルノワさん、エラがさ、竜の像とか見たいんだって。総本殿には竜に纏わるもの沢山あるでしょ。見せてあげてもいい?」
「もちろんよ! エラは竜としての自覚を得たばかりなのでしょう? なら、私達のことをもっと知って欲しいわ。この総本殿には私に纏わるものも沢山あるのよ」
カールティードさんの言葉を聞いて、ウルノワさんがにこにこしながらそう言った。
竜の像。
基本的に竜神は神の国から降りてこないらしいけれど、ここにある像は実際に竜を見て作られたものなのかな?
私達の話を黙って聞いている神官たちにちらりと視線を向ける。神官の中には竜人だけじゃなくて他の種族も居たりする。でも竜人が多いみたい。物凄く感激している様子だった。
私達の会話を邪魔しないようにしようと必死みたい。竜人の前では竜の姿を見せたりするのかな?
「カールティードさんのは?」
「カールティードのはないわねぇ。基本的にアーニーベガ様と、私達のような最初の竜のものしかないわ」
「……そうなんですね」
少しだけ残念に思う。だってカールティードさんの竜体も、凄く綺麗だったから。
カールティードさんに纏わるものとかあったら、楽しかったのにな。
「ふふっ、エラはカールティードのことが大好きなのね。良いことだわ。カールティード自身のものはないけれど、その両親に纏わるものは残っているはずよ」
優しい笑顔でウルノワさんにそう言われた。
カールティードさんに纏わるものがないことにはがっかりしたけれども、それでもカールティードさんの両親のことを知れると思うと嬉しかった。
……私の親が誰かはまだ分からないけれども、私の親についてもしれたりするのかな。
カールティードさんはしばらく神の国へと戻っていないと聞いているけれど、ウルノワさんはずっと神の国に居たはずで。
そうなると、私が誰の子供かとか知っているのかな。
そんなことも思った。
ただ一先ずこれから総本殿を見て回ることになったので、竜のことをもっと学ぼう。
真っ先に連れて行ってもらったのは、転移門のすぐ近くにあった大きな部屋。そこにあるのは、肖像画だった。
人の姿の時の竜の姿を描いているのかな。
ウルノワさんの絵もあった。
「金髪の人が多いですね」
「アーニーベガ様が金色の髪だから、竜は人の姿の時は金髪が多いのよ。私みたいに違う色の竜もいるけれどね」
肖像画は美しい金色の髪の人が多かった。それを疑問に思うとすぐに答えてくれた。
竜は金髪の人が多いみたい。
私もカールティードさんも、金色の髪だものね。
それにしても顔立ちが整った人が多い。肖像画は随分古いものもありそうだった。
数少ない下界に竜が下りた時に描かせてもらったものなのかもしれない。




