「竜神教の総本殿への道のり ④」
お菓子を食べて、ひとしきり休憩した後にまた移動をすることになった。
今世では食べたことのないものを沢山食べれて嬉しかった。前世でも私は甘い物が好きだったなと思い出したりした。
前世の記憶は、ぼんやりとしている部分もある。自分がどうやって生きてきたか、友人とどんなふうに過ごしていたか、「ただの侍女だったのに」の記憶とか……その辺は分かるけれど、自分の名前は思い出せなかったりする。あと友人の名前とかも。
私がカールティードさんと休憩している間、神官の人達は基本的に黙っていた。私達のことを見つめる人が多くて落ち着かなかった。それに皆、崇拝するような目で見てくるのだ。
……竜神だもんね。私は自分がそんな存在だって実感はまだない。この世界で人間として生きてきたから。
それにカールティードさんは私に対して凄く優しくて、にこにこしているお兄さんって印象しかない。竜体の姿を見てもそう。
でも神殿の人達からしてみれば、信仰する神様そのものなのだからこういう態度も考えてみれば当然なのかもしれない。
そう考えると竜神として覚醒する予定だった私を、堕とそうとしている人たちがいたかもしれないって大変なことだよね……。
神様を自分達と同じところに堕とすなんて、普通の人ならまず考えもつかないと思う。恐れ多いと思うだろうし。
小説の世界でエラがそういった人たちの思惑通りに堕とされて人間として生きていったとして、その先はどうなったのだろう?
……カールティードさんのように同族を大切にする竜からしてみれば、そういった行動を起こした人を許せなかったりしたのではないかと思ったり。小説のエラはあくまで自分の意思でその未来を選んだと口にしたかもしれないけれど。
そんなことを悶々と考えた。
カールティードさんは神の国に戻ってから改めて確認すると言っていたけれど、誰かが悪意を持ってそういうことをしていたのならば怖いな。いや、悪意とは違うのかな? 本人達的には、それが正しいことと思っている場合もあるよね? 寧ろ崇拝しているからこその暴走とか? その可能性もあるかも。
なんにしても神の国へ向かってからだわ。
それから私はカールティードさんに連れられて、転移門をくぐる。少しずつ距離を伸ばす。私の身体に負担がないように、くぐった後は休む。
それを繰り返して、日付をまたいだ。
不思議と眠くもなかった。私が覚醒に伴う変化を受け入れて、人間から竜になりつつあるからかも?
だから夜通しで時折休憩しながら移動になった。
もう少ししたら神の国へ行けるんだと思うと興奮していた。侍女をやめた時は、神の国へ向かうことに不安も大きかったのにな。
カールティードさんと出会って竜への理解が深まったから、楽しみになっている。
……私の親、誰だろう? どんな人だろう?
あとはエラという名前は孤児院でつけられた名前だから……、もしかしたら本当の名前があったりするのだろうか。
両親が私を思ってつけようとしていた名前があるなら、知りたいし、場合によってはその名前に改名しても構わないと思った。
総本殿についたら、ウルノワさんとも会える。
どんな人なのだろうか。新しい出会いに私はずっとワクワクしている。
「エラ、本当に休憩、これだけでいいの? 休まなくて大丈夫?」
だからカールティードさんからそう言われるものの、「大丈夫だよ」と口にしてどんどん移動していった。
めまぐるしく変わる光景。
転移門のある部屋も神殿によって装飾が異なったりもした。私はこれまで竜神教と関わらずに生きてきたから、こんなに短期間で竜神教の神殿に沢山行くことになると思わなかった。
今回は移動だけだから細かい部分までは見れていない。
神の国へ行って、落ち着いたら下界の神殿巡りをしても楽しいのかもしれない。正直観光とかもしたい。
前世では海外旅行に行ったこともなかった。
色んなものを見て回ったら楽しいだろうな。……カールティードさんに頼んだら、一緒に付き合ってくれるかな。
流石に一人で観光をするのは不安だなと思ったり。
先の未来のことを考えて、私はワクワクしてきた。
竜を堕とそうとしているかもしれない存在については不安だけど、それよりもやっぱり楽しみだ。
どんどん移動していって、総本殿の転移門に移動した。
総本殿には既に通達がいっていたからなのか、物凄い人が居て驚いた。総本殿と呼ばれるぐらいだから、そこに所属している神官も多いのだろうなとは思っていたけれど。
こんなに集まって大丈夫なのだろうか、と心配になるぐらいの人が居た。それに転移門のある部屋も、他の神殿よりも広くて大きかった。
「あなたがエラね!! 会えて嬉しいわ。なんて、可愛らしいの!!」
そして周りにいる人の多さに驚いているとそんな声が聞こえてきて、思いっきり抱きしめられた。




