「竜神教の総本殿への道のり ③」
ウルノワさんと会話を交わした後、私は早速転移門を使うことになった。とても緊張している。
だってこんなものを利用すると思ったことなかったもの!
一人で転移門を利用しなければならないなんてことがあったら、私はもっと不安でいっぱいになっていたと思う。
だけど、隣にカールティードさんが傍に居てくれるから全然心配はなかった。カールティードさんは私が困るようなことをしないのだろうなと、出会ったばかりなのにこんなに信頼しているのは危険なのかもしれない。それでも私はカールティードさんを不思議なぐらい信用してしまっていた。
カールティードさんは魔法陣に手をかざして、魔力を使って何かをしている。
移動するための手続きをしている感じなのかな? 魔法のこともさっぱり分からない状況だから、カールティードさんが何をしているかはさっぱり分からなかったりする。
チェスタスさんはその様子を食い入るように見ていて、少しだけ恐ろしいなと思ったりする。
竜神のやることをチェスタスさんは見落とさないようにしたいのだろうなというのは分かる。
私に対してそこまで視線を向けていないのは、カールティードさんに注意をされたからかな。あの注意がなければ私のこともじーっと見つめていたのだろう。
……竜神が下界に居るのってそれはもう珍しいことなんだなと改めて思ったりする。
小説のエラは、竜として覚醒することを拒み、人間として生きて行く道を選んだというのならば神の国へと足を踏み入れなかったのかな? その辺も詳しくは知らない。
竜は同族を大切にする生き物だというのならば、人間として生きることを選んだエラを竜たちはどんな目で見ていたのだろうか? ……奥様は“エラ”という名の別の少女を引き取り、傍に置いていたけれどその別のエラたちを人間のまま地に留めることを望んでいたのだろうか。
そのあたりもよく分からないけれど、少なくとも私は前世の記憶を思い出して、こうして神の国へ向かうことにとても前向きな気持ちだ。
それに何よりカールティードさんに出会えたことが私にとって嬉しいことだった。
「エラ、準備出来たよ」
カールティードさんがそう言って魔法陣に魔力を込めると、その場に巨大な門が出現する。
魔法陣で移動するならどうして転移門なんていう名前なのだろうかと疑問に思っていたけれども、魔力を込めると門が出現する仕組みらしい。竜の装飾の施された門はとても美しかった。
「この門を通れば移動できるんですか?」
「うん。そうだよ。ほら、行こう」
そう言って手を伸ばされて、手を重ねる。そして転移門をくぐった瞬間に視界が歪んだ。
そして次の瞬間には、別の場所へと移動していた。
移動した先で拝んでいる神官服を着た人たちが多くてびっくりした。事前に竜神である私たちが此処に来るというのをチェスタスさんが連絡をしていたからなのだろうけれども……。
こうして拝まれるとびっくりしてしまった。
「エラ、具合は悪くなっていない? 身体に違和感があったりしたらすぐにいってね?」
カールティードさんは拝まれていることなど気にしていない様子で私の身体を気遣う様子を見せる。
まずはお試しで近場に移動と言っていたから、此処は先ほどの神殿から少ししか離れていないのだろうな。
身体に違和感があるか考えてみる。
転移門を通る時に魔力が少し無くなる感覚はあった。
そもそもこういう移動する魔法って、簡単に実行できるものではないのだろうな。こうして魔力が使われた感覚があるなら、魔力を代償にして実行している魔法って感じなのかな?
「少し身体の魔力が減っている感覚はあるかも?」
「そっかぁ。じゃあちょっと休んでからまた移動しようね」
「私、大丈夫ですよ?」
カールティードさんから少し休んでから移動すると言われて、思わずそう言った。
このくらいの疲労なら何の問題もない。そう思っているのにやっぱりカールティードさんは過保護みたいだ。
「駄目だよ。無理してエラが倒れたりしたら俺は嫌だからね? だから此処でおもてなし受けよう」
にっこりと笑って、カールティードさんはこちらを拝んでいる人に声をかけていた。
「俺とエラのこと、もてなしてくれるよね?」
カールティードさんの言葉に彼等は勢いよく頷いていた。
そのまま私はその神殿内の一室でゆっくり過ごした。用意されていたお菓子をもぐもぐと食べていると、カールティードさんはずっとにこにこしていた。
「お菓子、美味しい?」
「はい。美味しいです」
正直こういった甘味もこれまで食べることはそんなになかったから、美味しいなと感激する。
「カールティードさんは食べないんですか?」
「そうだね、俺ももらおうかな」
「なんか、カールティードさんってあまり食べてないイメージですけれど大丈夫なんですか?」
「竜は食事を必要としてないからね。食べたい竜は食べているけれど。エラはまだ覚醒途中だからいっぱい食べた方がいいよ」
「そうなんですか?」
「うん。そうだよ。だから、いっぱいお食べ」
にこにこしながらそう言われる。最初に会った時にレストランに連れて行ってもらった時は食べていた気がするけれど、それは私に付き合ってくれていただけなのかもしれない。
あとはカールティードさん自身が食事を摂ることが結構好きなのかも。私と一緒に食べている時、いつも楽しそうだもん。




