「竜神教の総本殿への道のり ①」
「先ぶれのない方はお通しできません」
早速街の神殿へと向かえば、そう言われて驚く。対応した神官が人間だったからなのかもしれない。
カールティードさんの話を聞く限り、竜人であるならばすぐに気づくのだろうか?
私は竜人にも会ったことはないので、そのあたりは分からない。
カールティードさんは一瞬眉を顰める。
「そう言わずにチェスタスに俺の名を言いにいってくれる?」
カールティードさんはただそう告げる。
「あなたのような若造がチェスタス様のことを呼び捨てにするなど不敬です!」
……まさか竜がこんなところにいるとは思っていないのだろう。だからこそこんな態度がとれる。
「いいからすぐに話をしにいってくれる? 他の竜人でもいいよ。少なくとも俺達を追い返したら君がチェスタス達に怒られるよ?」
カールティードさんが何度もそう言ったらようやくその人間の神官は、渋々と言った様子で動き出した。
やはりこれだけ大きな神殿だと来訪者も多いのかもしれない。……ただこうして迷惑なものを見るような視線を向けられると落ち着かない。
カールティードさんは特に気にした様子もなく、自然体だ。彼にとってこうして周りから視線を向けられても本当にどうでもいいのだろう。
私も人間として生きてきたとはいえ、竜なんだよなぁ。周りのことをそこまで気にせずに私も生きられるようになりたいなと思った。
「少し待たせちゃうことになっちゃった。この場に竜人が居たら話が早かったのだけど」
「チェスタスさんって、カールティードさんの知り合いなの?」
「一度だけ会ったことがあるだけ。でも向こうは俺のことは分かるから」
そのチェスタスさんという竜人とカールティードさんは一度だけ会ったことがあるらしい。
カールティードさんは下界をぶらぶらしているとはいえ、こういった神殿にお世話になるような事態はなかったのかな。基本的に一人でなんでも出来るだろうから。
「そうなんですね」
「うん。ちゃんとエラのことも伝えておくからね? そしたら動きやすくなるから」
「ありがとう、カールティードさん」
私はカールティードさんの言葉にお礼を言った。
それからカールティードさんと話しているとバタバタと騒がしい足音が聞こえてきた。
「カ、カールティード様……。ほ、本当にご本人だ。こ、この度はどういった御用件でしょうか?」
息切れをしながらやってきたその人は、何処か高揚した様子でカールティードさんを見ていた。この人がチェスタスさんだろうか?
最初に私達の対応をした人間の神官は、その言葉を聞いて青ざめている。
「ちょっと移動に使わせてもらいたくて。いいでしょ?」
「は、はい。もちろんです。と、ところでそちらのお方は……」
カールティードさんの言葉を聞いて大きく頷き、そしてチェスタスさんは私のことを見る。
視線が痛い。
私のことをじっと見つめている目が、少し怖い。目が据わっているというか、なんというか……。
「ねぇ、その目止めてあげて? 嫌がっているから」
私とチェスタスさんの間にカールティードさんが割り込んでくれた。私が視線を怖がっているのにすぐに気づいてくれたみたい。
「ひっ、も、申し訳ございません。こちらから移動なされることは分かりましたが、折角なのでお話を……」
「急いでいるから却下ね。それと神官の教育はきちんとした方がいいとは思うかな。幾ら俺達が中々下界には居ないとはいえね」
「も、もちろんです! すぐにお通しできずに申し訳ありませんでした。こちらへどうぞ!」
チェスタスさんは緊張した様子でそう言った。
カールティードさんが不快な様子を見せたから、はらはらしているのかな。カールティードさんは私に対していつもにこにこと笑っている。でも他の人に対しては厳しい面も見せるのだな。
チェスタスさんに促されて、私たちは神殿の奥へと移動することになった。
私が初めて大きな神殿にやってきたので、きょろきょろとあたりを見渡してしまう。
竜の装飾の施された飾りなどが多々見受けられる。竜神教という名を冠しているのもあり、それだけ神殿内は竜に纏わるものが大量にある。
前を歩くチェスタスさんは、私とカールティードさんに沢山話しかけていた。私が最近覚醒したばかりの竜だと知って興奮した様子だった。
どうやら竜神教では竜のことを知ることも重要なことのようだ。竜の記録なども取っているのだろうか?
あまりにも熱が入った様子で私に話しかけるから、カールティードさんに注意をされていた。
私達が案内された場所は、神殿の奥深くだった。
その扉の前の左右には竜の像が置かれていた。精密な石で出来た像。
神殿にはこういった竜の像が沢山あるのかな? そんなことを考えながらじーっと竜の像を見つめてしまう。
「像が気になるの?」
そうしたらカールティードさんに問いかけられた。
「はい。こういった像を見ることも中々ないので」
「総本殿にはもっと大きな竜の像が並んでいるから、それも一緒に見ようか」
私の興味津々といった様子を見て、カールティードさんはそう言って笑ってくれた。総本殿の竜の像ってどんなものなんだろうか?
見るのが楽しみだ。
そんな会話をしながら、扉を開けるとその部屋の床には大きな魔法陣が描かれていた。




