「竜体を見せてもらったり、私たちの種族について聞いたり ③」
「竜については少し分かりました。逆に竜人ってどういう存在なんですか?」
私の実の両親に関しては、神の国へと向かえば分かるだろうと思ったので、気になっていたことを聞いてみる。
竜人がどういった存在なのかも私は知らない。
「同族ではないけれど、竜としての名残がある人族かな。竜人って竜のことを崇拝している存在が多いんだよ。アーニーベガ様が獣人やエルフや人間といった人族を作った際に一緒に作った存在だね」
「へぇ」
「竜と竜人で、同じく竜に纏わる種族ではあるから、親近感はあるかな。あとアーニーベガ様とエラミスア様の直系の竜人族も残っているよ。長男が竜人として産まれたから」
どうやら始まりの竜とエラミスア様の最初のお子さんは私と同じように成人するまでは人間として育ち、それから竜人として覚醒した人らしい。私と同じなんだなと思って会ってみたいなという気持ちも芽生えたけれど、言い方的にももう寿命を迎えているだろう。
エラミスア様が今もなお生きているのって、竜の番だからってことなんだな。
「竜人は俺達のように竜体は取れない。あくまであちらは人族だから。それに寿命も平均が五百年ぐらいかな。アーニーベガ様の長男の血筋だともう少し長生きだったかな。竜に纏わる存在ではあるけれど、人族だし、俺達とは別の存在ではあるね」
「竜人もそんなに長生きするんですね。……私たちはどのくらい長く生きるのですか?」
「俺は少なくとも竜が寿命を迎えた話は聞いたことないかなぁ。前にも言ったように精神に異常をきたした竜とかだともう居ないらしいけれど、それ以外だと自分から命を投げ出したりしない限りはずっと生きるはずだよ?」
言われた言葉に驚いた。ああ、でもそうか。“竜神”だものね。神の名を冠する血筋なのだから、それも当たり前と言えば当たり前なのかもしれない。
自分がそんな一族の一人だなんて全く実感がわかないけれど、カールティードさんの言葉通りなんだろう。
……だからこそ、数も少ないのだろうな。基本的には何かが起こらなければ数を減らすことない竜だから。
でも考えてみればこの世界が出来た頃――それこそ私が想像も出来ないぐらい遥か昔から竜は存在していて、それでいて数えられるだけしか数が居ないのだから子供もそんなにできやすいわけではないのだと思う。
「竜神教って、基本的に竜人の保護をしている形ですか?」
「うん。だって竜は本来なら大切に親元で育てられるから。エラのように下界で育つ竜って珍しいんだよ? あとは竜神教は他の種族の保護もしているはずだよ。ただ報告の義務はあくまで竜と竜人に関することだけだね」
竜神教のあがめる神って、要するに竜――私達ってことだよね。確かにその竜が迷子の状況にあるのに手を差し伸べないのは、信徒としては問題ってことなのだろう。
竜が創造した世界だからこそ、竜とそれに連なる人族である竜人を大切にする宗教が一番勢力を持っているって感じなのかな。
「聞けば聞くほどどうして私、下界で育ったのだろうって不思議です……」
「本当にそうだね。その辺の事情も天に戻ってからちゃんと確認しようね?」
「はい」
私は人間として育ったから“神の国”って竜の住まいを称すけれど、カールティードさんは“天”としか言わない。
それに自分達のことをただ竜と呼ぶ。
あくまで神の国も、竜神も、下界を生きる人たちが称しているだけなのだろうな。
「一番早く天に戻る手段は竜体の俺に乗っていくことだけど……、それだとエラが耐えられるか分からないし、下界が酷い騒ぎになりそうだから別手段で行こうか。エラは騒ぎは嫌でしょ?」
「確かにいきなり竜が現れて飛んで行ったら凄いことになりそうです……」
私が騒ぎになるのが嫌だと言っていた言葉をちゃんと覚えていてくれているからか、別手段で天に連れて行ってくれるらしい。
「そもそもどうやって行くのですか?」
「人族が天に向かう際の手段を使えばいいんだよ」
「そんなのあるんですか?」
「うん。天にいる竜以外の種族は、下界と行き来することもあるから。中々下界に降りない竜の代わりに面倒なことを色々やってくれているんだ。その人族用の移動手段を使ったら、エラの負担にもならないと思うから」
カールティードさんの話を聞きながらやっぱりこの世界は、私の知らない情報が溢れているなと思った。
竜の血が覚醒して、カールティードさんに会うまで神の国はずっと遠い場所だと思っていた。
血縁者が居るなら行きたいと思ったけれど、どうやって辿り着けばいいかも分からなかった。
神の国と下界を行き来している人達がいるとも知らなかった。そもそも神の国って、途方もなく遠いのだろうか? それとも何かしら短縮で移動できる手段がある? 竜だとそういった技術を持ち合わせているのかもしれない。
「そんなものがあるんですね……。えっと、それってすぐに使えるものなのですか?」
「竜なら問題ないね。俺も下界に降りるときに使ったよ。竜の姿のまま下界に降り立ったら面倒なことになるって助言されたから」
「それってどこにあるのですか?」
「竜神教の総本殿だね。まずは大きめの神殿にいって、移動しちゃおう」
「移動?」
神の国へと向かう手段が竜神教の総本殿にあることは分かったけれど、大きめの神殿にいって移動とは? とよく分からなかった。
「転移門があるからそれで一瞬で総本殿に行けるからね」
「転移門……」
私はこの世界でこれまで生きてきて一度も聞いたこともなければ見たこともなかったけれど、そんなザ・ファンタジーなものが存在しているらしい。
「初めて使うと酔うかもしれないけれど、一回試してみようね」
「はい」
その転移門も国家機密とかそういったレベルのものではないか? と頭をよぎった。でもきっと竜だからという理由で、使えるのだろうな。
神殿から総本殿に移動し、そこから神の国へ向かう。
私はそこに向かうまでかなりの時間を費やすと思っていた。でも……もしかしたら一瞬なのかな? なんてそんなことを思った。




