「竜体を見せてもらったり、私たちの種族について聞いたり ②」
私はカールティードさんの言葉に固まってしまった。
私は小説のちょっとした情報しか知らない。小説のエラだって、自身が竜神族だとは知らなかっただろう。そもそもそんな特別な存在がどうして下界に居るのか、そのあたりも意味が分からない。
「ちょっとお勉強しようか」
カールティードさんはそう言って、竜の姿から人の姿へと変化する。そして私の隣まできてにっこりと笑った。
「まず、大前提として竜は竜からしか産まれないんだ」
「竜からしか産まれない?」
「うん。両親のどちらかが竜じゃないと、竜にはなり得ない。だからエラの両親のどちらかは竜だね。竜は全員顔見知りだから、君の親のどちらかは俺も知っている人だとは思うよ。ただ俺、しばらく天に戻ってないから誰の子かまでは分からないんだ」
「へぇ……」
竜は、竜からしか産まれない。
カールティードさんの言う“竜”とは竜神族のことであるというのは説明を受けて理解した。
竜人のことを人族だと言っているから、色々と異なる点があるのだろうか。
それにしても神の国の竜は下界には中々降りてこないと言われているはずなのに、カールティードさんは下界をぶらついているんだなぁ。
「……あの竜人だと確か前世の記憶だと、子供のころから竜人だったと思うのですが。なんで私はこの年までは人間だったのです?」
「それはエラが人間との混血だからだろうね。竜は異種族と番った場合は、幼少期だとその力に耐えられないから配偶者の種族で成体になるまで育つんだよ。そのまま竜の力を受け継いだら、身体が耐えられないから。そして大人になる時に竜になるか、配偶者の種族になるか、それとも混血種として生きて行くか決まるはず。エラは竜と人間の最初の子供だから、人間として育ったんだと思う」
そう説明をされて、なるほどと納得する。どうやら竜……竜神族の生態は私が思っているよりもずっと複雑らしい。それだけこの世界にとって竜は強大な力を持つ存在で、子供だと耐えられないのだろう。
私は竜と人間の子。……身体が大人になったから、竜神として覚醒したってことかな?
「最初の子供だからっていうのは?」
「竜は番を大切にする生き物だから、番った相手は竜の魔力が馴染むと竜として覚醒していくんだ。寿命の差で別れが来ないように。そしてその覚醒は、子を産んでなされるものだよ。だから二番目の子供からは、竜として産まれるはず。だから、エラは竜と人間の番の間の最初の子供だと予想出来るよ」
「そうなんですね」
私はカールティードさんの話を聞いて頷く。
全く聞いたことない話を聞かされて、感心する。竜って、そういう生き物なんだ。
でもそんな話を聞くと余計に、神の国へ向かっても問題ないのだろうなとほっとした。
どうして私が下界で育つことになったのかは分からないけれど、同族を大切にする生き物だというのならば私のことも酷い扱いはしないと思った。
「逆に両親のどちらかが竜じゃなければ、子供は竜にはならないんだ。エラが言っていた竜人とかもそう。竜人と異種族が番って、隔世遺伝で子孫が竜人になることはあっても竜になることはあり得ない。竜は長命だからこそ子供もそこまでできやすいわけじゃない。それに異種族と番うと竜になるかならないかも分からない。だから、竜が増えるのは珍しいんだ」
両親のどちらかが竜ではないと、竜として産まれない。
その話を聞くと確かに竜は中々産まれないのだろうなというのが分かる。
「カールティードさんのお父さんとお母さんはどういった人ですか? 百歳になるかならないかで成体になったって話ですけれど、ご両親が竜なのですか?」
「うん。俺はね、白竜と青竜の三男だよ」
なんか聞いた覚えがあるような……だけど、聞きなれない単語が出てきた。前世でもしかしかたら聞いたことでもあっただろうか? それか今世で少しだけ聞いた?
「白竜と青竜?」
「最初の竜であるアーニーベガ様は、様々な生物を作ったとされているというのは知っている?」
「はい。そのくらいは」
「真っ先に手掛けられたのが、自然をつかさどる同族の竜だった。下界で言う魔法属性を思い浮かべたら分かりやすいかな? その数の竜が産まれたんだ。そのうちの二体が俺の親だね」
魔法をなんとなくしか習ったことがないので、ざっくりとしたイメージでしか分からないけれど属性分の竜が居るらしい。
……というか、創生の竜が真っ先に手がけた存在がご両親ってカールティードさんって凄い人なのでは?
いや、それを言うと私も同じ竜だから私の親も凄い人の可能性はあるかも……。
「えっと、白竜と青竜は何をつかさどっているんですか?」
「光と水だね。俺は母さんの血が強く出たから、竜体も母さんにそっくりなんだよ」
「そうなんだ。カールティードさんのご両親は始まりの竜のお子さんってこと?」
「いや? 厳密には違うよ。確かに同族を作ったのはそうだけど、子供ってわけじゃないよ。アーニーベガ様にはエラミスア様との間にれっきとしたお子さんが居るしね。自然をつかさどる竜たちに関しては親戚みたいな感じかな」
光をつかさどる白竜と水をつかさどる青竜が番う……なんかそれだけで神話的。いや、実際にこの世界にとっては神話なのか。
竜は竜からしか産まれないという話だから、要するに始まりの竜とその番となったエラミスア様とそのお子さん。そして始まりの竜の生み出した自然をつかさどる複数の竜たちとその血筋ぐらいしか竜と認識されないってことだろうか。
そう考えると私の親って……誰なのだろう?




