5 魔石はドッグフード?
異世界転移3日目。
僕たちは初心者向けダンジョンへやって来た。
王都を出て、北へ1キロの場所。
ヘッドギアや胸当てなど、最低限の装備はしてある。
ギルドの依頼だけで稼ぐなら、
Fランクの報酬は1回で100~500ガル。
薬草採取や下水道掃除などが中心だ。
でも昨日、僕たちは4万歩以上歩いた。
──どっちが効率がいいかなんて、考えるまでもない。
けど、エイジにせがまれたんだ。
「せっかく異世界に来たんだから、ダンジョンに行ってみたい」ってね。
だから来たってわけ。
「行こう」
冒険開始だ!
僕はブブたんを抱え、エイジは小ぶりの盾とナイフを構えた。
中は広い鍾乳洞みたいな感じで、他の冒険者もチラホラいる。
このダンジョンに出るのはスライム、大ネズミ、ジャイアントバットなど。
レベルは低いけど噛まれたら嫌だ。病原菌とか持ってそうだし。
でも大丈夫。僕たちにはブブたんがいる。
開始早々、鼻から光線を乱射。
魔物は次々と倒れ、消えていく。
ブブ光線を飛ばすごとにお金を100ガル消費する。
「俺達やること、なんにも無いな」
エイジが苦笑した。
「うん。ただ歩いてるだけだね」
ドロップ品の価値は二束三文と聞いている。
蝙蝠の羽やネズミのしっぽとか、気持ち悪くて僕たちは触れない。
落ちた極小ⓢ魔石だけを拾いながら進む。
そして、あっという間にラスボス部屋へ。
中央には灰色狼が三匹。
「グワァァァアアッ!」
牙をむき出しにして吠えた!
ピッ。
ピッ。
ピッ。
終了。
秒で終わった。
「まあ、怪我がなくてよかったな」
「うん」
ごめんね、ブブたん。
こいつら弱すぎて、君の相手じゃなかったよ。
戦利品を回収する。
極小魔石Ⓛが3個。
それと、チョーカーだ。
見つめていると、僕の目の前に、金色の文字が浮かび上がる。
「【黒いチョーカー】攻撃力10%アップだ。エイジが装備してよ」
僕はエイジに渡した。
「唯斗、アイテムの効力が分かるのか?」
「金色の文字が見えるよ?」
「俺は見えない」
どうやら僕は【鑑定】能力があるようだ。
「もう少し上位のダンジョンに行けそうだな」
「うん。そのうち、行こうね」
それから僕たちは引き返す。
「そう言えば、俺達は高難易度ダンジョンを封印するために召喚されたんだよな」
「そうだね。封印なんてどうやるんだろ」
「想像もつかない。城には二度と戻りたくないし」
「義彦たちがやってくれるよ。今頃どうしてるかな」
「頑張ってるさ……それなりに」
そんな話をしながら、ダンジョンを出た。
戦利品は極小魔石が数十個。
「換金すれば1個50~300ガルだ」
「ちょっと待って」
エイジが止めた。
「なんか……これ、美味そうなんだよな」
「魔石が?」
エイジは子犬に変身した。
「ワン!」
「これって、ドッグフード?」
僕は魔石を差し出す。
すると魔石はスーッと子犬の口へ吸い込まれていった。
「大丈夫なの!?」
「ワン!」
尻尾をぶんぶん振っている。
結局、手に入れた魔石は全部吸収してしまった。
「平気? お腹、壊さない?」
「ワン!」
元気いっぱいだ。
しかも最後には僕の手にすり寄って、甘えて来る。
「うっ……」
可愛い。
思わず抱き上げて頬ずりした。
(落ち着け、唯斗。これはエイジだ)
(エイジなんだ!)
そう言い聞かせても、子犬の可愛さに理性は勝てなかった。
さらに子犬は僕の頬をぺろぺろ舐めてくる。
どうやら、エイジは変身すると性格まで犬になるらしい。
僕は子犬を抱っこして歩き出した。
すると鞄の中で「ブーブブブ」とスマホの振動音みたいなのが聞こえた。
驚いて中を覗いたら……ブブたんが振動している。
(壊れた?!)
そっと手で押さえると振動は直ぐに止まった。
よく分からないけど、止まったからいいや。
◇
街へ到着すると、エイジも元の姿に戻った。
「ごめん、魔石全部使ってしまったな」
「気にしないで。これからも全部使っていいよ」
「魔石を吸収すると、犬スキルが成長する気がするんだ」
「そのうち大型犬になるのかな? セント・バーナードとか」
「俺はジャーマン・シェパードがいい。賢そうだし」
「へぇ」
僕は笑って頷く。
子犬のままがいいけどな。
──それは黙っておいた。
宿で貯金を数えようとした……まあ、4万以上はありそうだ。
「これ、数えるの面倒なんだよな」
エイジが呟いた。
「中銀貨で出てくるといいのに」
僕がそう言ってブブたんを逆さまにすると──
チャリン! チャリン!
中銀貨が4枚飛び出してきた。
「うわ、マジか!」
「お願いしたら、好きな硬貨で出してくれるの? 早く教えてよ~」
「唯斗、ブブたんを鑑定したことある?」
「ないよ」
ブブたんを鑑定してみる。
【ユイトの貯金箱】それだけだ。
いろいろやって分かった。
ブブたんの中身は、あくまでも小銅貨なのだ。
お願いすれば好きな硬貨に変換して出してくれる。
う~ん。
ブブたんの取扱説明書が欲しい……。
読んでいただいて、ありがとうございました。




