4 ブブたんの真価
翌朝。
僕とエイジは冒険者ギルドを訪れた。
「本当にあるんだな……」
「ゲームみたいだよね」
受付では兎獣人――ジニーさんが手続きをしてくれた。
申込書を書くとジニーさんに「レベルを鑑定しますね」と言われた。
「お二人は、まだレベル1ですね」
「はい、初心者です」
「ファミリーの一員ですか? ……あ、17才。未成年者ですね」
(──ファミリー? 家族の事だよね?)
「僕たちは友達です。パーティを組みたいのですが」
「はい、パーティ名はどうされますか?」
エイジが言った。
「『エイリアンズ』で、どう?」
「異邦人か、いいよ」
するとエイジは申込書にリーダーは僕、サブリーダーはエイジって書いちゃった!
手続きが終わるとカードを2枚受け取った。
1枚目の白いカードには【冒険者Lv1 ユイト】と文字が浮き出ている。
ギルドは銀行のような役割も果たしており、カードは身分証明の役割と、店での支払いカードとしても使える。
2枚目の黒いカードは【エイリアンズ F】とある。
これはPTカード。
リーダーとサブリーダーだけに使用権限がある。
「お金、ギルドに預けておきなよ。その方が安全だ」
エイジの提案に小銀貨3枚と大量の小銅貨を全額、鞄ごと渡した。
当然、ジニーさんの耳がぴくりと動く。
目も泳いでいる。
うん。分かるよ。
僕だって、この大量の小銭がどこから来るのか説明できない。
「カードチャージはあちらです」
付いて行くと、部屋の隅に大きな鉄の箱があった。
ジニーさんはそれにお金をザザザーーと入れて、黒のPTカードをかざすと残高は7389ガルと表記される。
「これからは自分でやって下さいね」
「分かりました。ありがとうございます」
どんどんお金をギルドに預けることにしよう。
なんせ歩けばお金は増えるんだから。
ギルドを出て、僕達は並んで歩き始めた。
10歩ほど進んだところで、エイジは小声で尋ねる。
「どう? 俺の分は増えた?」
30歩以上は歩いたと思う。
ブブたんを逆さまにして小銅貨を出した。
「おお、60ガル以上はある!」
「2倍だ。やったな!」
エイジが、高そうな腕時計で時間を測る。
二人で1分歩くと240ガル増えると分かった。
「これ、パーティ人数が増えたらもっと稼げそうだね」
お金を増やそうと、二人で歩いて街を探索することにした。
戦闘なんて怖いし。
歩いてお金を増やして生きていけたらいい。
「商売とか農業とか、別にしなくても暮らせそうだし」
「はあ……何しに異世界に来たんだか」
「ま、まあ、のんびり過ごそうよ」
「ああ、ミッション攻略は義彦たちに任そうぜ」
二人で笑った。
──楽しい。
でも、そんな平和な時間は長く続かなかった。
少し歩いたところで、行く手を三人の獣人が立ち塞がったのだ。
全員が2メートルを超える大柄で、危険人物なのは間違いない。
「兄貴。こいつら、小金持ってますぜ」
一人がニヤニヤ笑う。
ギルドで目を付けられたのか。
狼獣人が近づいてきて、乱暴に僕の肩を叩いた。
「よお。一杯奢ってくれねえか?」
体が震える。
めちゃくちゃ怖い。
隣でエイジも顔が引きつっている。
「唯人。鞄のお金、渡そう」
「う、うん……」
僕は震える手でブブたんを取り出して、鞄だけ差し出した。
「本当に小銭ばかりじゃねーか」
兄貴と呼ばれた男は鞄を子分に渡すと、次はブブたんに目を付けた。
「それもよこせ!!」
ギラリ、と剣が抜かれる。
喉がひゅっと鳴った。
やばい!
マジやばい!
生まれて初めて、命の危険を感じた。
(誰か助けて!)
心の中でそう念じた時だった──
ピッ!
ブブたんの鼻先から細い光線が飛び出し、狼獣人の足を貫いた。
「あがっ!?」
情けない悲鳴を上げて、狼獣人が尻もちをつく。
(……ええっ?)
獣人達より、僕の方が驚いた。
「ブ、ブブたん!? 攻撃できるの!?」
残りの二人が慌てて剣を構える。
だが――
ピッ!
ピッ!
ピッ!
ブブたんの光線が次々と、獣人達の腕や足を正確に撃ち抜いていく。
「ぐあっ!」
「やめろ!」
獣人達は悲鳴を上げながら地面を転げ回り「これは返す!」と、鞄を放り投げた。
「ブブたん、ストップ!」
光線はぴたりと止まった。
獣人たちは地面を這うように逃げていく。
──助かった!
「ありがとう、ブブたん! あの光線、どうやって出したの?」
返事はない。
「それ、武器にもなるなんて、すごいじゃん!」
「攻撃スイッチなんてあったっけ?」
僕はブブたんをくるくる回してみる。
すると、中で小銅貨がカラカラと鳴った。
「お金が減ってる!」
「ん? 3分くらい歩いたから700はあったはずだよな」
でも、出てきたのは小銅貨が17枚だけ。
「あの光線って、お金なのかな?」
「いや……ガルを消費して、レーザーを撃つんじゃないか? 1発100ガル程度か」
「すごいよ、ブブたん!」
ぎゅっと抱きしめると、ブブたんの顔は誇らしげに見えた。
異世界に来て初めての戦闘。
活躍したのは――
まさかの貯金箱だった。
読んでいただいて、ありがとうございました。




